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騎士の軌跡

 『帝国』と言うのは、複数の国の集合体だ。

 いくつかの国や民族を武力で支配する王朝でもある。



 『パルティア帝国』は200年ほど前に発生したごく一般的な小国であったが、170年前に強大な魔力を持った『マルセル』王が即位してから周辺国家を征服しはじめ、100年の間に20の国を平らげ、版図を広げた。

 その後の50年は国内統治に力を入れ、内政手腕を以って国内安定を図ろうとする。


 しかし、50年以上が経とうとも、征服された国家のもつ独立への気風を防げるものではなく、たびたび内乱が発生するようになる。

 もともと武力によって押さえつけていたのだ。帝国の武に衰えが見えれば即座に反旗を翻す国もある。

 帝国が武力で弱みを見せれば国が荒れる。そう考えた帝国は、内政による国内安定を忘れはしないが、武に対しても傾倒していくことになった。


 しかし、個人の力よりも軍としての力を求めたからか、帝国軍では武勇に優れた武人の名が聞こえなくなる。





 5年前の事である。

 パルティア帝国でも比較的大きい『シザリス王国』が独立を求め、帝国に対し反乱を起こした。

 帝国軍はこれを鎮圧しようとするが、王国軍の苛烈な攻撃により、窮地に立たされることとなる。



 このままいけば反乱の火が帝国全土に広がりかねない。

 そんな時に現れたのが、帝国歴史上でも最強の騎士と言われる騎士『リュカ』である。


 リュカは平民の一兵卒であったが圧倒的な魔力を持っており、征服王と呼ばれた「マルセルの再来」と呼ばれるほどに強かった。

 一般的な魔法使いの数千倍とまで言われる膨大な魔力とそれに見合った強力な魔法により、シザリス王国軍を一人で(・・・)半壊させ、反乱を鎮圧してみせた。


 この功績でリュカは貴族に任ぜられ、『リュカ=ファロ』となる。

 爵位の類は与えられなかったが、リュカの為だけに騎士としての最高位“天上騎士”の称号が作られるなど、帝国は彼を相応の待遇で迎える。


 天上騎士は、皇帝以外であればあらゆる命令を聞かなくてもいい立場であり、ただ皇帝の命にだけ従う存在。

 命令権を持ってはいないが、天上騎士の扱いとしては公爵並み、皇族に次ぐ存在であると定義された。

 元平民相手でなくとも、これは破格の扱いである。

 帝国の貴族であってもここまで優遇されることはまずありえない。



 なお、領地が与えられないのは、彼に統治能力が無いからである。

 平民出であることを抜きにしても、代官を使い領地を治める事すら難しく、本人にもそういったやる気が無いので、戦闘専門の騎士として扱われているわけだ。





 リュカは圧倒的な戦闘能力を持つが、元はただの平民である。

 そういった出自だったからか、当たり前のように皇帝に対し忠誠を誓い、皇帝の命令で剣を振るう事に異を唱えない。


 よって結婚もただの仕事の一環であり、ハーレムというものへの知識の無さから「なんとかなるだろう」程度の感想しか抱かない。

 「互いに仕事と割り切るのだから問題も起きないだろう」そんな甘い推測さえしてしまう。



 その考えが甘い事を彼は初日に知るのだった。

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