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先送り不可⑤

 結局、9人目以降は外に出し、たまには顔を見に行くという約束を取り付けるだけで話は終わる。


 言葉は悪いが、やってみなければ分からないのは誰もが同じ。

 ならばすでに存在する規定の枠を試し、何か問題があればその都度対応するのが合理的である。


 よって、話し合いは「何かがあった時、何を問題とするか」へとシフトしていく。





 皇太子はリュカの思考が極端に走らないように、注意して話を進める。


 リュカの制御は、今の帝国にとっては最優先事項だ。

 そしてリュカの子供をどう扱うかは、リュカの制御において非常に重要な位置を占める。


 リュカ一人であれば、ハーレムを中心に見ているだけだったのでまだ気は楽だったが、子供達が外に出た場合、彼らの保安をどうするのか、それが非常に難しい問題だったのだ。

 もしも子供達に何か不幸があり、それに帝国が関わってしまえば、誰も幸せにならない事はよく分かっている。

 だから帝国はリュカの子供達に気を遣うし、何事も無いように全力を尽くす。

 ただ、それでも下の者に利益を配分しない事には国家運営は成り立たないし、その為にはリュカに忍従を強いかねないのが恐ろしい事であったが。



「結局の所、子供を外に出さない事にはしょうがないのは分かるな?

 私もお前も親とは言え、一人の人間なのだ。時間は常に有限であり、子供の数が増えれば手が回らなくなる事は誰だって分かる事である。

 ……お前に子供を増やすようにといっている私がいっていい言葉では無いかもしれないが、な」


 人というのは、数が増えれば制御しきれなくなるのが当たり前だ。

 どんな組織も100人を超えれば間違いなく組織にとって不利益をもたらすような者が混じるし、家族全員の仲が良く人格においても問題ないというのは少人数であるからこそ成立する話なのだ。


 特に子供の人格については、親だけに責任がある者でも無い。

 魂が持つ形質とでもいうべき何かが作用し、人格者の親が愛情を持って育てた子供が殺人鬼になるといったケースも希少ながら存在する。ただの興味本位で普通の子供が仲の良い友人を殺すといった話まである。

 リュカの子供だろうと、そこまで極端な事にならずとも、捻くれて育つ可能性はゼロでは無い。


「私自身、皇室に不要な子を何人も捨てている。

 皇室から、私という親の庇護下から外す事が最善という子供がどうしても出たのだ。

 リュカ。お前の子供のうち何人かは、間違いなくそうなるであろう」


 子供を育てる事は、難しい。

 親の背を見る事無く育つ子供であればなおさらだ。

 それを理解してなお、リュカの子供を求めねばならない皇太子という立場に悩みつつも、すでに何人もの子供を授かった男は付け加える。


「何が問題か、という話をする時、多くの親は自分に非は無い、教育した者が悪いと言い出す。あいつが悪い、こいつが悪いとな。

 自分の非を認めない、自分の子供の非を認めたがらないのだ。

 もちろん、親ならば子供の事を信じてやるのも務めだが、道を誤ったこを正してやる事も大事なのだ。

 私にお前の理性を信じさせてくれ。感情による暴走だけは、しないで欲しい」



 リュカは基本的に善良であり、帝国に対し忠実である。

 ならばその善性を信じてみるのも上に立つ者の器だ。


 皇太子はリュカが理性で行動する限り、帝国に不利益が無い事を知っている。

 だからこそ、子供の事で問題が起きることは諦めるとして、問題が起きた時の保険を積み重ねる。感情で暴走せず、理性で問題を受け止められるようにと。

 その方が被害が出る可能性が小さくなるのだ。


 逆に、リュカに暴走されては帝国ではどうしようもない。下手をすればそれだけで滅ぶ。

 それだけは避けなければいけない。



 リュカが暴走しないように抑えるのも、皇太子の仕事である。

 安易に他の誰かに任せることはできない。胃がキリキリと痛むのを表情に出すこと無く、皇太子はリュカとの話し合いを乗り切るのだった。

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