子供と未来のために②
リュカの子供を、今後どうするのか?
この問題は、リュカが結婚する前、リュカの存在が知られた割と初期から話し合われていたが、いまだに結論が出ない話であった。
最初の方は、リュカの魔力がどの程度遺伝するかが問題だった。
魔力の遺伝が行われる可能性については古くから経験則で分かっており、子供が優秀な魔法使いになるだろうという予測はほぼ確定事項であった。
だが、その遺伝する魔力の量はまちまちで、たまに遺伝しないということもあった。
だからディアーヌたちが嫁として選ばれた。
彼女たちはそれぞれの国の姫であるが、リュカほどではなくともそこそこ優秀な魔法使いでもある。母親も魔力持ちの方が遺伝的に有利になるのだ。
そしてうち二人が結果を出しているので、この考えは間違っていないことが証明された。
そうやって生まれた子供を、どこの国が確保し、どのように扱うかについてはさらに揉めた。
生まれた子供については母親基準と言ってしまうと、母親になりうる人間を送り込むために大混乱に陥る。そして大量に嫁を押し付けられればリュカが特定の誰か一人を選びかねず、リュカに複数の女性を抱かせるためにも人数を絞った今の形で落ち着いた。
さすがに五人どころか無制限に孕ませろなどという命令であれば、リュカは確実に拒否しただろう。逃げ出すかもしれない。そうなれば帝国は大損害だ。
今の人数は、リュカが受け入れられる嫁の数、その上限をぎりぎりまで攻めた人数だったのだ。
……いきなり一人脱落したが、その事はすでに関係者の頭から消えている。思い出したところで利益が無いので、元凶となった国が苦労するだけであった。
リュカが自分で子供を育てたいと言い出すことは、分かっていたのだ。
リュカ自身がそうやって育てられたので、親子は揃って生活するのが常識だったのだから。家族仲の良かったリュカがそれに倣うのは当たり前である。
ただ、母親である嫁の方は最初からそういうものだと思っていたので、あまり気にしていなかったりする。
親に育ててもらったという姫など……小さな国ではそういう事もあるが、ディアーヌたちは普通に乳母や侍女らに世話をされて育った高貴なる出自を持っている。親の顔など、月に一度見れば多い方という事すらあり得た。
彼女らの常識に合わせるなら、子供をそれぞれの国が預かったとしてもそこまで問題にしなかった。
だから問題はリュカだけであるが、そのリュカの方が重要なので問題がややこしくなる。
本人すらどの程度の問題か把握できていないというのは救いがない。
最後に、子供が多数産まれた時、リュカはちゃんと子供の面倒を見られるのかという話になった。
リュカは彼自身が出向かねばならない仕事を多く抱えているわけではない。
だから子供の面倒を見る時間を確保できるように思える。
しかし、嫁に妾に、何十人と子供が生まれれば面倒を見られなくなるだろうと、誰もが思っている。
普通に考えれば当たり前のことで、魔法で解決できる問題ではない。
魔法の力で子育てを手伝わせたとして、それは本当にリュカが父親としての責任を果たしているのか、そばで育てる意味があるのかという話になる。
乳母などで対応するにしても、ハーレムの屋敷の広さという問題がある。部屋は絶対に足りなくなる。
迂闊な事などできはしない。
だから8人までハーレムの屋敷で育て、それ以外を外で引き取るという話になった。
これは屋敷の広さ、部屋の数から割り出した限界値だ。感情的な話を抜きにすれば、非常に合理的な提案である。
理性が感情を上回るかどうかは、これから試される。




