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詰め人生・マリアンヌ②

 マリアンヌがリュカと結婚した理由。

 それは「自分が成り上がる為」だ。



 マリアンヌは元々、婚約者がいた。

 だが、それが5年前の反乱の時に出撃した婚約者が死亡するという悲劇に見舞われ、婚約者不在という立場になってしまった。


 婚約者が死んだのは4年前で、当時のマリアンヌは16歳。

 そろそろ挙式の準備を。そんな時期であり、そこで婚約者を失ったマリアンヌは喪女となるしかなかった。


 なぜなら、当時のめぼしい男性はすでに婚約者がおり、今更マリアンヌが割って入れる状態ではなかったからだ。マリアンヌ以外の若い男性がそこそこ死んでいたというのも相手がいない理由の一つである。

 マリアンヌは王族であり、下手なところに輿入れできない。また、割って入ればだいたいマリアンヌの方が上の立場にならざるを得ないので、元の婚約者とその実家のひんしゅくを買ってしまう。王女が老人の後妻などとんでもないし、本当に相手がいなかったのだ。

 マリアンヌは喪女以外の選択肢がなかったのだ。


 その2年後、リュカの活躍が音に聞こえてくればその婚約者にマリアンヌが立候補したのは当然の流れだ。

 ようやく見付けた結婚相手を逃す訳にはいかなかったのである。



 マリアンヌの喪女時代だが、それは彼女にとって耐えがたい屈辱の時代であった。

 王宮の侍女達が、マリアンヌを“婚約者に不幸を呼ぶ女”と噂していたからだ。


 マリアンヌの結婚は、当然政略結婚である。

 マリアンヌには王家にとって後ろ盾になって欲しい名家との繋ぎ役という仕事が求められている。彼女はそれを受け入れていたし、婚約者とも良好な関係を持ち上手くやっていた。

 だが婚約者死亡という不幸が、それを全て白紙にした。


 マリアンヌの婚約者がいなくなったので、他の子供が結婚することで家同士のつながりを作ることになった。

 ただ、それが上手く行ったということは、マリアンヌが役立たずになったということで、彼女自身の後ろ盾であった母の実家も彼女を見限った。


 婚約者のいない女性の扱いは、かなり悪い。

 別の派閥の侍女達からは悪い噂の対象にされ、実家の派閥の侍女達からすら軽んじられる。

 「見返してやりたい、成り上がってみせる」とマリアンヌが誓ったのは、それが理由だ。





 今のマリアンヌは英雄騎士であるリュカの妻だ。

 いずれは子供の一人を故国の王太子か王太孫と結婚させるだろう事は、想像に難くない。

 その時に備え、夫であるリュカといずれ産む予定の子供との仲を良くする為、努力を惜しまず多くを学ばねばならない。


 味方も多く必要で、他の妻との関係も良くすることで他国へのコネを作ることも重要だ。

 そして可能なら、他の妻達からも頼られる立場になれば、なお良い。



 幸か不幸か、妻達の中でマリアンヌは最年長だ。

 リュカと仲違いするなどの、下手を打たねばディアーヌ以外なら上の立場を目指せるはず。


 マリアンヌは己の誓いの為、家庭内における最善を目指すのだった。

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