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情報流出③

 セレストが妊娠した。

 これで三人目の妊娠であり、ハーレム内は大いに色めき立った。

 最後になった年長者、マリアンヌは平静を保とうとしてそれに失敗するなどいったトラブルがあったものの、セレストの妊娠は慶事であるとして周囲を騒がせたのだった。



 妊娠の話が出た後、話が向かう先は、産まれた子の処遇である。

 すでにリュカの子供は魔力持ちである事が約束されたようなもので、セレストの子供もきっとそうだろうと周囲は認識する。

 未来の皇帝(ジェラール)王配候補(クロエ)と続いたので、そろそろ他の大貴族にもリュカの血統が回されるだろうというのが周囲の認識である。

 そして、その考えはそこまで大きく間違っていない。

 その為のハーレムなので、「次の子は誰が手に入れるのか」と騒ぎが大きくなる。



 そんな中で、帝国のとある貴族がこんな事を言い出した。


「リュカ様は子供の意思を無視したような采配は望まないだろう。

 産まれた御子様、本人の意思に任せてはどうか?」


 言い出した貴族は子爵位と、そこまで身分の高くない貴族であった。

 ただ、言っている事はもっともであり、リュカに配慮することも多少は必要だろうと、一考の余地ありと意見は採用される。



 これは身分の低い貴族にとっては逆転の目がある「美味しい」話だからと言うのが一つ。

 身分の高い貴族はそうでないものよりも優先的に機会を得るだろうから、結局自分たちの優位は覆らないと判断されたことが一つ。

 そしてリュカへの配慮という言葉を持ち出されると反論し難いと言う理由であった。「リュカを蔑ろにするのか」と言われると、非常に反論しにくいのである。



 この意見を言い出したのはただの子爵、あまり身分が高くない貴族である。

 当然、周囲からは「子爵である彼にもチャンスが巡ってくるように動いた」と思われるし、「子爵ごときがリュカの名を使い意見を通した」とも反感を買う。


 この子爵は周囲の貴族ににらまれ、最後にはお家が断絶してしまう。

 そしてこの子爵の行方は途絶えてしまうのであった。





 セレストの子供は、婚約者を選ぶ立場になった。


 ある程度育つのを待ち、パーティでお披露目をするとともに婚約者候補を本人に選ばせるのだ。

 もちろんそれで決定と言う話ではなく、あくまで候補どまり。その後の展開は流れに任せようとなった。

 本来であれば家同士の関係なども考慮しなければいけないのだが、一人二人ぐらいはそれでいいだろうと、周囲も納得している。


 これは、一種の保険である。

 産まれてきた子供がどれぐらいの魔力を持っているかを調べる時間を作るだけでなく、その子供の性格などを把握し、リスクを含めた婚約の是非を問うための猶予期間(モラトリアム)だ。

 魔力があってもそこまで大きくなければ無理を通す必要が無く、性格が最悪であったり能力(・・)が足りない子供であったりすれば、相応の扱いを考えねばならない。

 婚約者にするだけのリターンの保証が無いうちに手を付ける先物取引も時には必要だが、さらに次の世代に望みを託すという方法が無いわけでもないから、この場は引いても問題ないと見ることもできる。


 リュカに対しても「一度や二度は配慮したよ、でも今回はこちらの意向を優先させてね」と言えるようになるのは大きい。

 リュカ自身が人を言いなりにしようとしていない事もあり、互いの妥協点を探す手段として、貸し借りを持ち出すのは変な事ではなかった。

 子供の数が増えて一人一人への認識が薄まってから動けばいいという打算もある。



 貴族たちの行動は、リュカが一言で言い表すなら「考え過ぎで面倒くさい」となる。

 様々な思惑が絡み、リュカでもあまり細かく認識しきれない。


 新しく作った仕組みの中。紛れ込んだ作為に気が付くことは、今はまだ出来ないでいた。

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