表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/372

コレットの娘③

 コレットの娘、クロエもジェラール同様、乳母が中心になって育てる。

 コレット本人は育児そのものにはあまり手を出さず、乳母のいう事を聞き、一緒に居る事とお乳を上げること。それぐらいしかしない。

 ただ、娘の方はコレットが母親だときちんと理解しているらしく、コレットが近くにいないと泣きだす様であった。


 リュカはその反応を見ると、しばらく仕事を入れないようにして、できるだけ屋敷に残るようにしていた。



 事件が起きたのは、クロエが生後十日になったばかりの、朝の事だった。


「あらあら。クロエ様、おしめですか?」


 ジェラールとクロエは別室に預けられており、それぞれ乳母が二名、常に傍に付いている。

 その時コレットは隣の部屋で寝ており、その部屋には居なかった。


 クロエは夜中に乳を飲んで満腹になってから眠っていたのだが、朝になり目を覚ますと突然泣き出した。

 赤子であるクロエの食事の周期は短いが、まだお腹が空いているとは言えない時間帯。

 乳母は、泣き出した理由を「おしめ」か「コレット」であると判断し、まずおしめの確認をしようとした。


 ここまで、乳母の行動に問題はない。



 乳母はクロエが不安がらないように、基本笑顔だ。

 この時も笑顔でクロエに話しかけ、おしめを脱がそうとしたのだが。乳母が笑顔でいられたのは、そこまでである。


 突然、乳母に向かって「何か」が飛んできた。


「へ? え?」


 キン、と甲高い音を立て、乳母の目の前に金属の破片が現れた。

 現れた、と言うのは正確ではなく、飛んできた金属片がリュカの魔法により停止させられたのだ。リュカの魔法は壁を作るように乳母を守っていたので、金属片がぶつかった時に音を立てたという訳だ。


 周囲を見れば、壁に飾ってあった飾りの一つが破損しており、その一部が飛んできた事が分かる。

 乳母は何が起きたのか理解して脱力し、思わずその場にへたり込んでしまった。



「クロエ。落ち着きなさい」


 ほどなくして、リュカが現れる。

 クロエはまだ生まれたばかりで言葉を理解できるわけなどないが、それでもリュカは普通に語りかけ、クロエを泣き止ませようとする。


 リュカがクロエの頭を優しくなでると、泣いていたクロエは徐々に落ち着きを取り戻し、リュカの指をくわえようとした。

 リュカはされるがままになっていているが、クロエが落ち着いたので自身も気を抜き、ほっとした表情になる。



「すまないな。驚かせた」

「リュカ様。まさか、これは……」


 クロエに手を貸しつつ、リュカは座り込んでしまった乳母に向けて謝意を示した。

 乳母はリュカが来てくれたことで落ち着きを取り戻し、それでも早鐘を打つ胸に手を当てながら、何が起きたのかを考える。


 考えられることは一つだ。

 クロエだ。

 先ほどのは、クロエが本能的に魔法を使い、乳母を攻撃した。

 リュカの謝罪からも、そう考えるのが自然である。


「ああ。この子は、もう魔法が使えるみたいだね」


 苦り切った顔で、リュカは我が娘の才能を認めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ