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シャルロットの末路③

「ふむ。アヴァロン王よ。そなたの言い分は理解した。

 この件で帝国がアヴァロン王国を害することは無く、これを理由に不公平な裁きを下さぬことを約束しよう」

「ありがとう、ございます!」


 アヴァロン王は国王自らが使者となり、急ぎ帝国の首都へと向かった。

 国王が使者となるなど、たとえ皇帝が相手であってもあり得ない話なのだが、これはそれだけ本気であると伝えるためには必要な措置であった。


 そしてアヴァロン王はその必死な行動により皇帝への面会を早々に許され、見事、無罪を勝ち取る。



 この話し合いは公でするほどの扱いを受けていない。あまり広くない会議室で行われている。

 今回は国王が頭を下げる姿を見世物にする意味がなく、他の誰かにアヴァロン王が誠意を見せる姿を晒す事をしなかった。


 通常、そういった姿を晒すのは罰を受けたことを明確にする意味があり、罰を許すための通過儀礼であるのだが。

 アヴァロン王国自体が別の意味で晒し者になってしまったため、問題を小さく抑えるためにこのような形をとったのだ。

 “帝国はこの件を大きく扱う事を望んでいない”という意思表示である。



「それにしても、なかなか良い決断だったな」


 話がまとまった後。

 皇帝はアヴァロン王に向けて、そう言って笑って見せた。


「リュカの奴から『アヴァロン王国がこの件に対しきちんと筋を通すのであれば、騒がないで欲しい』と言われていてな。

 滅多な事では頭を下げられぬ国王自ら謝罪に来たとなれば、十分に筋を通したと言えるだろう。

 良かったな。誠意を見せて」

「は……。はい」


 リュカは、この件でアヴァロン王国の国民が不利益を受けるのは理不尽であると判断した。

 ただ、あれが国の方針であれば、瑣事と見逃すようであれば、相応の罰を与える気でいた。使者を送り謝って御終い、などと言った舐めた(・・・)態度をとってもだ。


 が、結果はアヴァロン王が頭を下げるために動いたため、国への罰は与えない事となった。

 それを皇帝は詳らかにして笑うのだ。


 上手く難を逃れたな、と。



 なお、今回の話し合いにシャルロットに関するものは無かった。

 それはつまり。





 この話し合いのすぐ後、アヴァロン王国の姫の一人が病死するという噂が流れた。

 帝国最強と名高い天上騎士リュカに嫁ぐはずだったその姫がいなくなったため、王国はリュカとの関係を結ぶ機会を逃してしまう。


 ただ、その姫の名前などは公表されておらず、“リュカに嫁ぐはずの姫がいなくなった”とだけ、事実(・・)が公布されたのだ。



 後の歴史書にシャルロットの名前は記されなかったため、この時死んだという姫の名前はどこにも見つからず、歴史学者を悩ませることになる。

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