初めての子供⑤
ハーレムの問題は、ジェラールだけではない。
リュカのハーレムも、人数を増やして欲しいと言う要望が各国から届いた。
これは、今までは様子見をしていた国が多かったということだ。
リュカは若く、十年先でも子供を作れる。
ならば、リュカの魔力が遺伝するかどうかを見極めてからで構わないと判断した国もあったわけだ。
中には「五年後、十年後にはハーレムの女も入れ替えが必要だろう。その時にウチの娘など、どうか?」と言い出す者もいる。
一般的な女性であれば、医療技術が未熟な部分もあるため、どうしても三十歳を超えると出産に死の危険が付きまとう。その手前でも危険なことは多いのだが、おおよそそれぐらいから母体の健康が危ぶまれるのだ。
そのため、彼らは若い娘と入れ替えるべきだという論調を繰り出している。
ただ、リュカは「ハーレムの補充はしない。入れ替えも考えない。最初から、その約束だ」と皇帝との約定を盾に、断固拒否の構えを見せる。
最初にハーレム要員を用意できなかったのが悪いと、何を言われようと切って捨てている。
リュカは帝国内の貴族に、まだ味方が少ない。
普通であれば勢力の弱さが足を引っ張るが、逆に言えば配慮しなければいけない相手も少ないのだ。
それに、数少ない後ろ盾は皇帝陛下である。
だから強気の発言で己の主張を押し通す。
それで完全に敵対関係になるなら、それで良し。
むしろそこで素直に聞き分け、裏で何か画策される方が面倒という状態だった。
手間がかかるハーレムの拡大の話とは別に、乳母と子守役の増加の方が地味に問題である。
今後、産まれる子供の世話をどうするかという話だ。
今はジェラール一人だが、すぐにコレットが出産するため、その子供の世話を誰に任せるのかという問題が出ている。
そちらの方はコレットの母国であるアーヴェルニュ王国の国王の差配するところなのだが、募集の数がすさまじいことになっている。
ハーレム要員の増加を直接狙うのではなく、まずはリュカの側に控えさせたい貴族が多数。
そこまでいかずとも、単純にリュカと繋がりを持ちたい貴族も多数。
他にも情報収集を命じられた女密偵や工作員を送り込みたい勢力などもあり、国王の他の仕事は止まってしまっていた。
一応、送り込む人員はアーヴェルニュ王国貴族の女のみという制約を付けている。
そうやって何か制限を付けないと、いつまで経っても人の選別が終わらない。
しかし、それなら王国貴族の伝手を使い、出身地を偽り貴族の養子にするなど、表と裏で厄介な駆け引きをしていた。
身元確認、その真偽を確かめるだけで人手と金が奪われてしまう。
リュカも一応は手を貸して、事態の鎮圧に臨んでいる。
だが、これで他の嫁が妊娠した時を考えると、今から打てる手は打つべきだと多くの関係者が戦慄していた。
アーヴェルニュ王国の行政が止まり国が混乱に陥る様は、それほど酷かったのである。




