初めての子供③
次はコレットの番。
とはいえ、産まれたばかりの赤子にみんなの視線が集まるのは仕方が無い事である。
コレットは放置こそされないものの、妊婦であるのにそこそこ大事にされている程度の扱いであった。
本人もその程度の扱いの方が気が楽らしく、妊婦であるのに、相も変わらず周囲の騒動を他人事のような目で見ていた。
ジェラールは産まれたばかりという事で、それはもう、大切にされている。
男の子だとか魔力がどうたらというのはこの場合関係なく、世話をする為に大幅な人員増加が行われた。
リュカには説明されていなかったが、産まれてきた子がそこそこ程度の魔法量であったらなら、ハーレムから連れ出し、両親とは引き離した状態で育てるつもりであったのだ。
説明が無かった理由は、貴族はそれが当たり前だから。
親子が別居するぐらい、いちいち説明するような事ではないのだ。
子育てには子育ての専門家が必要で、親が必要という考え方をしないのが貴族的な子育てだったりする。
男爵や子爵程度であれば自分で面倒を見るかもしれないが、皇族・王族などではそれが当たり前。むしろ子育ての素人である親が関わる方が子供に悪いという考え方をする。
子育てとは簡単ではないのだ。王侯貴族が仕事の片手間にするような事ではない。
それが予定を変えて親と一緒に子育てなどとなったものだから、ジェラールの世話役たちは気が気でない。
立場が強く、何か言われれば従わねばならないような両親が近くにいるというのは、非常に危険な事だと思っていた。
そしてその心配は、半分正解である。
「リュカ様、子供を抱けたんですね」
「平民だからな。近所の子供の世話なんかは大概やらされたよ。おしめの交換だってできるし、あやすのもよくやったな。
ミルク以外は一通り、って事さ」
リュカの方は問題ない。
生まれの関係で、赤ちゃんの世話を経験しているからだ。
首が据わっていない赤ちゃんでも、危なげなく抱くことが出来た。
「ディアーヌ様が直接母乳を上げるのはおやめください」
「何故です? 母親とは子に乳を与えるものでしょう?」
「……まだ首が据わらないのです。下手な抱き上げ方をすると、御子の命にかかわります」
そしてディアーヌは、まだ子供の抱き方が危うい。
人形で練習させているが、自分だけで上手く抱くことが出来ない。
首が据わるまでおおよそ三ヶ月と言うが、それまでに上手くいくかどうか微妙なところ。意外とディアーヌはこういう事が苦手な様子だ。
ディアーヌは不満そうであったが、我が子の命にかかわると言われれば大人しく引く。
諫言をした世話役は不興を買うのではないかと思っていたが、さすがにディアーヌはこの程度で処罰などしない。
ここまでは、平和な世界の話である。




