シャルロットの末路②
リュカと武力でぶつかる。
それはシャルロットにでも分かる、破滅への一歩だ。
実際に顔を合わせ、リュカにとっては軽くではあったが威圧をされたことで、それがどれだけ絶望的な事かは体感している。
祖父である国王にその可能性を指摘され、シャルロットの顔から血の気が引く。
「そ、そんな事になる理由が無いわ」
「あるから言っているんだろうが。そんな事も想像できないのか、お前は」
アヴァロン国の国王は苦々しい口調で説明をする。
「今回の結婚話は、帝国の皇帝直々に進めた話だ。お前が結婚を断ったことで、皇帝陛下の顔に泥を塗ったのは間違いない。
その後、もしも小競り合いでも起きてみろ。仲裁に帝国が出てきた場合、どちらを優遇すると思う? もしも武力衝突にまで事態が大きくなった時、どちらに兵を送ると思う?
アヴァロン王国は、そうなってしまえば終わりだろうよ」
「うそ、そんな……。私、そんなつもりじゃ…………」
「お前がどんなつもりだったのかは関係ない。結果として、そうなっているのだ」
国王の説明で、シャルロットはようやく状況を正しく理解した。
やってはいけない事をやってしまった、それを知ったのだ。
そして、状況がもう手遅れである事も。
もしも、国に戻る前に他の姫に顔を合わせ、繋ぎを作っておけばまだ話が変わってくる。
リュカに頭を下げるため、執り成してもらえる可能性があったのだ。
しかし現実は顔を合わせる事すら拒否されている。何かを頼める状況ではない。
あのとき門前払いされたのは、「お前と関わるつもりがない」という意思表示だったのだ。
無理をして、頭を下げに下げてでも会わねばならない場面だったのだ。
どれだけ失態を悔いても、もう遅い。
「これからワシは帝国と周辺諸国に頭を下げて回らねばならん。多少の行き違いでもあれば帝国でこの首が落ちるやもしれん。
お前に状況を分からせた意味は理解できるな? お前もまた、覚悟を決める事だ」
国王はすでに覚悟完了。自分の命を捨ててでも、国を守ろうとしている。
そして、それを元凶たる孫娘にも求めた。
シャルロットは、もう何も言えなかった。
話し合いの場から国王がいなくなり部屋に一人取り残されても、侍女たちが迎えに来るまで一歩も動けない。
八つ当たりの対価は、彼女一人の中に納まらなかったのであった。




