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広間の惨状

 遺跡の中に入り、入り口からずっと石造りの通路が続いていた。入り口にあっレリーフのような装飾は一切無い。

 そして感知しても結果は変わらず、森よりも魔力が薄くなっていることしかわからなかった。

 森と同じで生き物がいる気配もない。

 いくら照らしても変わらない石の壁を抜けた先には階段があり、地下に続いていた。

 階段を下りた先には広間があり、目に入るのは来た道から見て正面に一つ、そして左側にもう一つある通路だった。


「うわ……」

「すごいわね」


 そしてもう一つ目に入るのはこの広間の惨状だ。

 広間には茶色に乾いた骨がそこここに散乱している。

 骨のほとんどが持ち主がわからないほど散乱しているが、人や魔獣だとわかる形のまま骨になっているのもあった

 散乱している骨の大きさは様々で、ここに様々な魔獣がいたことがわかる。

 その一つをカイルさんは手に取った。


「森に居ないと思ったら魔獣はここにいたのか……」

「数がすごいね」

「水……?」

 

 人工的に切り出された石材を積み上げて作られた通路とは違って、この広間の壁は岩肌だった。

 リヴさんとユウトさんに出会った湖から流れてきてるのか、それとも上の地面から染み出しているのか、広場の片隅の天井から水がぽたぽたと垂れている。

 その垂れた水が時折人の頭蓋に当たってたまに違う音を奏でていた。

 この人も雨受け皿になる為にここに来たんじゃないだろうに。

 私が神官であれば祈ってあげたいところだが、出来るのは憐れむことだけだ。

 カイルさんとアメリさんは遺品を調べ、リヴさんとユウトさんはまず骨を見て回るようだった。


「人間はシーカーか……? ここに住んでた人間にしては新しいような気がする」

「もしかしたらギルドが出来る前のシーカーかも?」

「ああ、ギルドが出来たのは結構最近なんだったか」

「結構な組のシーカーがここに入ってきたっぽいね。近くの村で不帰の森って言われてたのも納得。これだけここで死んでればそりゃ不帰って言われるわね」


 ばらばらになっていたり人の形を保っていたりと状態はばらばらだが、人の頭蓋だけでも二十はある。

 今のシーカーのルールはギルドが出来てから定められたものだ。ギルドが出来たのは最近で百年くらい前だと聞く。

 ここに転がっている人達はまだシーカーが個人で動いている頃にここで力尽きたのだろう。

 探索の情報も手に入りにくい上に探索後の報酬も無い時代は今よりも過酷だったに違いない。

 ここの状態がそれを物語っていた。


「魔獣は何故ここに……?」

「ここで戦ったのかな? そんで共倒れ?」

「それにしては人の骨が綺麗じゃないか? 噛み砕かれた後や歯形すら無い」

「確かに、これなんて牙でっかいもんね」

「どれ……うお!?」

「へへ、びっくりした?」

「そりゃびっくりする……」


 真面目な話をしていると思ったら、リヴさんがユウトさんに魔獣の頭蓋骨を突きつけてからかい始める。

 こんな骨だらけの恐ろしい場所でもお二人の空気は相変わらずだった。


「ここで何が起こったかなんてどうでもいいだろうに……」


 そんなお二人の様子をつまらなそうに横目で見ながらカイルさんは遺品を次々手に取っている。

 

「それにしても武器やら魔具やら結構あるな」

「もう使い物になりそうもないけどね……刃物は錆びてるし、弓は朽ちてるし」

「お、指輪」


 遺骨の指にあったサイズの合わなくなった指輪をカイルさんが手に取る。

 よくよく見れば他の遺骨も生きてる頃は各々装飾品を所持していたようで近くに色々転がっていた。


「ちょっと、変な魔具とかだったら嫌だから身に着けないでよ?」

「わかってるわかってる」


 少しでも収穫があって上機嫌なのか、カイルさんは鼻歌を歌いながら指輪をポーチにしまう。

 その様子を、魔獣の骨を見ていたユウトさんがじっと見ていた。

 視線に機嫌を損ねたのか、カイルさんは上機嫌な様子から一変して眉間にしわを寄せる。


「なんだよ、文句あるのか? まさか亡くなった人に悪いから戻せーなんて馬鹿なことを言うつもりじゃねえだろうな?」

「……」


 カイルさんの苛立ちに応えることなく、ユウトさんは広間を見渡す。

 先程、魔獣の骨を見ていた時とは違って今度は人の骨だけを順に見ているようだった。

 そして、ぽつりと一言。


「……妙だ」

「は?」


 ユウトさんは首を忙しなく動かして何かを確認するように辺りを見渡す。


「装飾品がばらばらだ」

「は? どういう意味だ?」


 カイルさんが聞き返すとユウトさんは一番近くにある人の骨を指差した。


「こっちはペンダント……」


 そして、順に人の骨を指差し始める。


「こっちは指輪……。あれはアンクレット。そっちにも指輪があったんだろ?」

「それがなんだよ!?」


 中々核心を言わないユウトさんに苛ついたのか、カイルさんが怒鳴る。

 確かに何が言いたいのかはわからない。


「ユウト、何が妙なの?」

「何故これだけのシーカーがいるのに、金目のものがばらばらなんだ? ここに何度もシーカーが来たのなら最後の一人の荷物に纏まっていないとおかしくないか?」

「!!」

「あ……!」


 言う通りだ。

 この広間に散らばっている人の骨がシーカーならば誰かがお金になる装備を亡骸から奪っているはずだ。さっきのカイルさんのように。

 これだけの数の遺骨があるのに全員がお金になる装飾品に興味が無かったとは考えにくい。

 だというのに、この広間にはお金になる装飾品が散らばっている。

 まるで、何者かがここで遺品を漁るのを仕向けたかのように。

 ――考えられる可能性は一つ。


「"スケルトン"だ!」

「ふん!」


 カイルさんの声と同時に、リヴさんがユウトさんの近くにあった頭蓋を砕く。

 それを合図にしたかのように周りの骨が一斉に動き出した。

 今まで憐れみを向けていたはずのただの骨が一気に醜悪な存在に変貌して立ち上がる。

 近くにある朽ちた武器やスケルトンになっていない骨を手に取る姿が明確な敵対を示す。

 カチカチとわざとらしく骨を鳴らす姿は久しぶりの来訪者を愚かだと笑っているようだった。


「くそ!」

「カイル!」


 ランタンを腰に掛けてカイルさんは剣を、アメリさんは杖を抜く。そして私も杖を。

 森で草刈りに使っていたからか、カイルさんの剣から葉が落ちる。

 生気を失ったまま立ち上がるスケルトンの一体ににその青々とした一枚の葉は踏み潰された。

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