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エピローグ

 あれから十日以上が経つ。

 カイルさんとアメリさんが亡くなったので私が帰還報告をすると、ギルドの人はやはりなという表情でそれを受理した。

 私が帰ってきたことも一緒に帰還報告をしたお二人の存在のせいか驚いてもいなかった。

 それ以上の出来事は何も無く、カイルさんとアメリさんについても悔やむ言葉も無い。

 シーカーの最後とはそういうものだ。

 全てが自業自得。

 昨日喋った誰が亡くなってもそういうものだと。彼が望んだものの為に命を散らしたのだと理解して終わるのだ。

 薄情なのではなく、シーカーにとって探し求めるものというのはそれだけの価値があったのだと、死んだ者は探索に行ったことを後悔していないというのが共通の認識だからだ。


「相変わらず活気が凄い……」


 そして私は再びギルドのロビーに来ている。

 ギルドのロビーは相変わらずシーカーで賑わっていた。

 情報を求めて掲示板をチェックしたり、依頼書を見たり、ギルドの人と話していたり、探索終わりかお酒を飲んでいる人達と様々だ。

 決して落ち着いた場所ではなく、騒がしい場所だが、私はこの場所が好きである。

 そしてそんな場所の一角に座りながら私は人を待っていた。


「ソフィ、何してーんの!」

「あ、ミミ……おはよう」

「おはよ! こんなとこでどしたの? 名簿に名前も無かったよ?」


 話しかけてきたのは友人のシーカーであるミミだ。

 何回か私を雇ってくれていて、気さくに話しかけてくれたのをきっかけに仲良くなったのを覚えている。

 友人であっても雇うセンスを仲の良さで選んだりはしない。探索は常に魔獣やトラップで命を危険に晒す。

 能力に合った場所と使える魔術で合理的にそして探索場所によってセンスを変えるので、彼女は毎日雇センスの名簿をチェックしている。


「あ、もしかして呼んでくれる気だった?」

「うん、でもいないからどうしたのかなって」


 いつもは雇ってもらう為に朝にギルドの受付で空いているセンスとして名前を登録するのだが、今日の私はその登録もせずにここにいた。

 待ち合わせをしているからだ。

 当然、待ち合わせの相手はミミではない。

 そして丁度、ギルドの扉が開いてその二人が入ってくる。

 金髪でトンガリ帽子を被った金髪の女性と黒髪で素朴な印象の男性の二人組だ。


「げ、変人コンビ」

「知ってるの?」

「そりゃね。変な格好してるし、探索行っても何も無いパターンのが多いし、かと思えば探索する所は規則性が無い上に帰還の日程は滅茶苦茶で何度も死んだと思われてるのにふらっと帰ってくるしね」


 私が知らなかっただけで結構有名なのだろうか。ギルドにあのお二人が現れた一瞬、入り口に視線が集まった。

 お二人はそんな視線に気付いているのかいないのか。

 女性はあくびをし、男性はきょろきょろとギルドを見渡している。


「あー、ごめん。そんでどうしたの?」

「うん、待ち合わせ」

「あ、もう雇われてたんだ?」

「ううん、チームに誘われたから私は今日からそこの専属ってこと」

「え!? そうなの!? やったじゃん! ソフィは感知凄いからいつかはと思ってだけどついにかぁ……ちなみにどこ?」

「あ、いたいた! ソフィちゃん!」


 ミミとの会話で私の声に気付いたのか、トンガリ帽子を被った女性がこちらに駆け寄ってくる。


「おはようございます、リヴさん」

「おはよ!」

「え? え?」


 ミミは訳も分からず、私とリヴさんの顔を交互に見る。

 わざと説明しなかったけど、この二人を変人と言ったので少し意地悪をしてみたのだが悪く思わないでほしい。

 黒髪の男性も駆け寄ってきたリヴさんを追うようにこちらに歩いてきた。


「おい、友達と話してるんだから少し遠慮しろよ……」

「だって」

「すまないな、話してたのに」

「あ、いや、だ、大丈夫よ。うん」


 変人コンビと呼んでいた片方に素直に謝罪されて気まずいのか、ミミはユウトさんから目をわざとらしく逸らす。


「じゃあ行こ!」

「はい、行きましょう」

「悪かったな」


 我慢できないといわんばかりにリヴさんは飛び跳ねてギルドのカウンターに向かう。

 出立報告をしに行くのだろう。

 ……私はまだ何処に行くのかも知らされていないけど。

 適当な帰還日程を報告されてはいけないので私も急いでそれを追う。

 そんな私の背中にミミは声をかけてきた。


「ソフィ、あんたまさか……」

「うん、これからは変人トリオだね」


 信じられないと言いたげなミミに手を振り、私もカウンターに向かう。

 不名誉なあだ名すらも今の私には大事な拠り所になる気がして、いつもは言わないような似合わない冗談を残してみた。


 私は私の見た"空飛ぶ火"をこれからも探していく。

 それは子供の私が見た夢か、病気が見せた幻か、本当に"魔法"かもしれない。

 けれど、例えどれだったとしても私が後悔することはないだろう。

 私が夢を見たことで、私はきっとまた新しい何かを手に入れるのだから。

〇〇やってみてえなぁ、くらいの曖昧なものでも私は夢だと思います。

そう思えること自体に意味があって、目指しても目指さなくても何処かに価値はあるんだな、という私の個人的な考えでした。

芽が出る種と芽が出ない種に同じ価値は無いけれど、別々の価値はあると思うのです。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

次の作品でもまたよろしくお願いします。

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