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消えた患者




隠し通路を抜けて,元の大広間へと戻った二人は,そこにあった光景に目を疑った。

患者が何処にもいない。

多数のベッドに並べて寝かされていた何十人の人々が,一斉に姿を消している。

あれだけ進むことが躊躇われた室内は,もぬけの殻と化していた。


「誰も……いない……」


呆然としながらエレシスは辺りを見渡す。

患者たちは突如消えたのではない。

乱れたシーツを見る限り,自分で起き上がり,自分の足で何処かへと向かったらしい。

恐らく発端は先程のアナウンス。

問診をしに,別の場所へと移動したに違いない。

しかし,何とも異様な光景だった。

クレイヴも気味の悪さを覚えながら,周りに誰も潜んでいないことを確認する。


「あの連中,普通に動けたのか……」

「確か,中央集会室に行けと言っていたけれど……」

「行くのか?」

「行っても見つかるだけよ。このまま上の階段を探すわ」


消えた患者たちを追っても,脱獄は出来ないだろう。

不用意に首を突っ込んで,危険な状況に陥っては目も当たられない。

エレシスはこのまま探索を続行することにした。

院内の通路をゆっくりと移動し,気配を探られないようにする。

遠くではまだ足音が響いていたため,念には念を重ねて他の部屋を渡り歩きながら進む。


そうして辿り着いたのは,他とは一風変わった部屋だった。

様々なコンピュータが並んでおり,画面には意味の分からない文字列が,せり上がっては消えていく。

奥の壁にはブラウン管のようなモニターがあり,ここが監視を専門とする部屋であることは一目で理解できた。

一応誰もいないことを確認したエレシスは,警戒しながら部屋の中を進む。


「ここは,監視室かしら」

「みたいだな。あそこのモニター,この階層を映像にしているみたいだ」


クレイヴが指差した方を見ると,モニターには様々な場所からの院内の光景が映し出されていた。

色彩も再現され,細部までリアルタイムで監視しているようだ。

もしかすると,既に自分達はこの映像に映っていたのではないか。

一抹の不安を抱くエレシスだったが,今の所見つかっているような雰囲気はない。

とにかく,何か手掛かりになるようなものはないか。

このまま迷路のような院内を探し回っていては,何れ見つかってしまう。

彼女はクレイヴと共に監視室内の机を漁ることにする。


そして数分が経って,クレイヴがダイヤルロックのある小さな箱を見つけた。

重さ自体は軽いが,明らかに重要そうなものが入っている。

譲り受けたエレシスは,今までと同じようにそれを開錠することにした。

光りに包まれたダイヤルが勝手に動き出し,正しい数字を指し示す。

これも彼女の力の一つである。

ダイヤルが外れた小箱を開けると,折りたたまれた一枚の紙が入っていた。

思わず彼女がバサリと広げると,それは病院内の見取り図だった。


「これ,院内の地図よ!」

「やったな! これで中層に行ける!」


少し見辛いが,階段のある場所も見つけることが出来た。

これなら,看守に遭遇することもなく上の階層を目指せる。

そう思って勢い付く二人だったが,直後に監視カメラの一つが動きを見せる。

映像の中で蠢く影を見て,クレイヴが警戒するような声を出す。


「あのカメラ,患者たちが沢山映ってるぞ」


つられてエレシスも,彼が示す画面を眺める。

そこはアナウンスで指示された中央集会室が映っていた。

首輪を嵌められた患者達が何人も整列し,先頭にいる一人の男を真っすぐに見つめている。

その男は白衣を着ており,眼鏡も掛けた知的な人物だった。


「皆さん,こんにちは。調子はどうだろうか?」


男は全ての患者に向けてにっこりと笑った。




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