やっと
宿で、買ってきた弁当を食べた。
「風呂。どうする?」
「入るわよ?」
「じゃ、先に行ってこいよ。 俺はその後入りに行ってくる。」
昨日と同じ順番で部屋番をする。
ラナが風呂へ向かった少し後
『デビット。何か変わったことはないか?』
『はい。特には。』
『わかった。何かあったら連絡してくれ。』
ラナがいなけりゃ明日にでも帰りたかったなぁ。
「まぁ、愚痴ったところでしゃーないか。」
ラナが戻ってきた。 入れ替わりで俺も入浴した。
「明日は少し遠くまで足を延ばすぞ。 今日はもう寝ておけ。俺も寝る。」
当然寝たふりしている俺。
少しして
俺のベットにラナが入ってきた。
「タニサ。 私のことどう思ってる?」
俺はまだ寝たふりを続行中。
「もう・・・。」
「そんなに私、魅力がないのかなぁ・・」
俺の反応がないので諦めたようだ。 ラナは自分のベットに戻ったようだ。
「・・うん・・・あ・・はぅ・・・はぁ・・」
静かなはずの部屋に艶っぽい水音が聞こえてくる。
「タニサ・・・あっ・・」
どうやらそのままラナは寝入ったようだ
傷つけずに帰宅させる約束だ。 俺は意思が固いのだ。約束も守る。
断じてヘタレなんかではない・・・。
夜が過ぎれば朝が来る。
ギルドで依頼確認。特にこれと言ったものは無い。
なので常時依頼のモンスター討伐を今日もやる。
今日は昨日より、少し離れたところで狩りをする。
インベントリが死体で埋まるとギルドに行き、買取を依頼する。これを数回こなす。
「今日はこんな所かな。」
宿に戻りラナにこう伝えた。
「明日帰るぞ。」
「え?まだもう一日居られるじゃない! なんで?」
「理由か? 周辺のモンスターの種類もわかったし、王都で売ってるものも大体わかった。目的は達したからだよ。」
「それに今回は、「無事」に返すって約束もある事だし、ギリギリの時間で動きたくない。約束は守りたいんだ。」
「でも・・・・」
「じゃあ、ラナは一人で残るのか? 俺は帰るぞ。 ライラさんには謝罪する必要があるな。 そして、俺たちは二度と会うことはないだろうな。 そういう約束だからな。」
「・・・・・・。 わかったわよ。 出発はいつ?」
「明日の朝、朝食を摂ったらチェックアウトするよ。」
「宿代。一日分損しちゃうわね。」
「そうだな。けどこの程度の額。モンスターの買取をギルドに出せば、すぐに補填できる。問題ない。」
「また王都に来たいのなら、今度はライラさんと二人でゆっくり来るといいさ。」
「タニサが一緒じゃないなら意味な・・」
「ラナ!」
言葉を遮る
「それ以上は今は言っちゃいけない。 お母さんと良く話し合って来い。」
「でも私は!」
「俺はライラさんに恨まれたくはないからな。 前にも言ったけどな。」
「・・・・。 わかったわよ。 でも、これだけは許してね?」
おもむろにラナは俺の横に腰掛け、こちらを見た。 そして・・唇を重ねられてしまった。
うかつだった。 決して油断してたわけではないのだが、あまりに自然な流れでの行動に、俺は何も出来ないでいたのだった。
「さ! 夕食を食べに行きましょ!」
何事も無かったかのような振る舞いのラナを呆然と見た。
「早く行こ!」
腕を掴まれ。というか腕を絡ませ引っ張られていった。
夕食、風呂を済まして眠りにつく。 俺が寝たのを確認したラナは、
「好きよ・・」
小さな声で呟いた
そしてまた今日も、静かな部屋に水音とラナの息を殺したような呻きが聞こえたのだった。
翌朝、食後にチェックアウトした。
「あらあら、もう一日分、お代残ってるけど本当にいいの?」
「ああ。今日帰ることにしたんですよ。」
「まぁ、無理に引き留めることはしないけど、返金は出来ないわよ?」
「ええ。構いませんよ。 じゃあ、この辺で、また王都に来た時にでもお邪魔しますね。」
「またのお越しを!」
「王都」を立ち、「始まりの街」へ向かって歩き出した。 この時間なら、まず間違いなく夜までには到着できるはずだ。
出くわしたモンスターを倒しながら進む。 昼食は昨日の夜に買っておいた保存食を食う。
問題なく夕方には街に帰ってきた。
「ただいま、お母さん。」
「ラナ! 大丈夫なの!?」
ライラから、若干失礼な発言を聞こえたのが気になったが、
「ライラさん。 ただいま戻りました。 「無事」に娘さんをお返しします。」
若干、「無事」という言葉を強めに言った。
「あ、タニサさん。でしたっけ? 約束を守ってくださってありがとうございました。では。」
玄関ドアが強めに閉められた。 ドアの中から、ラナの怒声が聞こえてきた気がしたが、俺はその場を去ることにした。 この場にとどまっていても、良くないことが起きる気がしてならなかった。
「ふぅ・・。なんか疲れたな・・。」
すぐに町を出て、俺は拠点に帰る。
拠点に戻り、デビットに現状を聞き、問題ないようなので俺は「休む」何かあった時は連絡しろ。
と伝え、自室に戻った。
本来なら、眠る必要はないはずの俺だが、その日は朝まで睡眠を貪ることになった。
さて、昨日までの事は脇に置いといて、以前から考えていたことをやろう。
砂漠地帯の奥深くに続く通路を用意する。 罠は無い。
最奥に、あまり広くないが高さのある部屋が数か所あるフロアを造り出す。
そこにランダムリポップのモンスター召喚魔方陣の描かれた石板を設置する。
結構高価だったが、これでいい。
レア度の高いモンスターはそのまま配下にしておく。 低いモンスターは野良にして倒す。
俺専用の、レベリングシステムを作った。 名は修練場としよう。
俺が使ってないときは、幹部たち配下が利用しても良い。
俺に必要がなくなったら、誰かに譲ってもいいな。
王国全土を領域内に治めた今。 しばらくの間はDP集めをすることにしている。
大陸全土を領域化できるDPが貯まるまで、他の事には手を付けない。
そして、予備もある程度になるようにして、DPが貯まったら、一気に領域化を施す予定だ。
最初のころに比べると、貯蓄をするのも楽になってきたな。
今は、何もしなくても万を超えるDPが、毎日手に入る。
「デビット。お前も修練場を使って得た分のDPは自由に使え、配下を増やすなり、何か欲しいものを手に入れてもいい。」
デビットにも、副官は必要だろうと考え、そうした。
そろそろ大陸を手に入れるか。
俺は明日、領域化を大陸全土に施すことにした。




