スライム型ダンジョンマスター
システムメッセージ
<タニサがダンジョンマスターになりました。ここに居るモンスターを配下にしますか?>
(yes)
ふぅ・・。これで、ここに居るモンスターに襲われない・・。内心めちゃビビってた。
ゲームオーバーになるとかならないとかじゃなく、普通に襲われるのが怖かったのだ。
<オオカミ・ウサギ・モグラ型モンスターをは以下にしました。記憶の処理を実行。完了しました。>
「マスター。まずは、ダンジョン作成おめでとうございます。」
狼が恭しくこうべを垂れる。兎、土竜もそれに続く。
狼の声は結構渋い声だ。
「命令してください。」 兎だ。少女のような声だ。
「・・・」 土竜は・・黙ってこうべを垂れたままだ。
「とりあえず、三体で協力してダンジョンの入口を隠してきて。まだ、誰にも見つけられたくないから。」
了解の意を示し、三体が動き出した。
部屋の奥の方にある光の珠に俺は近付き、様子を伺う。特に何も変化がない。
その光の珠に触れてみた。
一気にダンジョンに関する知識がヘルプシステムに登録された。
内容を確認しようと、手を伸ばそうとする・・・。
「あ、俺、もうスライムだ・・手がねぇ。」
いきなり詰んだ。
「マスター。どうされました?」
折れた木の枝や草、蔦などで入口の隠蔽が終わったと報告を受けると同時に助け舟だ。
「あ、いや、ヘルプシステムを見ようとして、手がない事を思い出したんだよ・・・。」
「タニサ様。別に直接触れなくても、ウチらモンスターは、意識しただけで操作できますよ?忘れちゃったんですか?」
と、兎。
「いやぁ、俺はスライムに成り立てで、色々わからないことだらけなんだよ。教えてくれてありがとう。」
スライムに成り立てというか、実際には、ゲームを始めてまだ一時間も経ってないのだ。 チュートリアルすらやってないので、すべてがわからないのだ。
「なるほど、ではウチがわかる範囲で、メイン画面の操作から教えますね。」
兎から操作法を聞きながら実践。意外と簡単。意識するだけでメニュー操作を教えて貰った。
ヘルプを軽く流し読みして、少しダンジョンについて調べると、いくつかの事がわかった。
・ダンジョンは、DPを使用し、様々な恩恵を得ることが出来る。
・ダンジョンに籍のあるモンスターは、DP回収の対象にならない。(ダンジョン内で自然繁殖したモンスターは回収対象になる)
・DPは、そのダンジョンに籍を置いていないモンスター、及びその他の生き物の、生命力をDPとして入手することができる。
命を落とすか日付変更の0時の段階で、入手可能。 それぞれ対象によって入手DPは異なる。
・ダンジョン内では、放置状態にあるアイテム(死体含む)等は、約6時間程度でダンジョンマスターの宝物庫に回収される。回収されたアイテム等をDPに変換することが出来る。
・ダンジョンマスターと配下のモンスターは、ダンジョン内であれば念話で通じ、指示を出すことができる。また、マスターは配下のステータスを無制限で確認することができる。
・各ダンジョンでは、それぞれのマスターが独自のシステムを構築することも可能。
・ダンジョンコアが破壊されない限り、ダンジョンマスターは24時間後、ネームドモンスターは、48時間後に復活が可能。
・ダンジョンコアが破壊されると、ダンジョンとしての恩恵がなくなる。
これだけわかれば、まず、動くべきかな。
「よし、みんな。これからの方針だけど。まずはダンジョン成長のためにDPを貯めなきゃいけない。そのためには、安全確保が一番大事なんだ。 それで、みんなにはやってもらいたい事がある。」
「兎は俺に、色々知ってることを教えて欲しい。 狼と土竜は、絶対に勝てるモンスターや動物たちを、瀕死状態でダンジョンに連れてきてくれ。」
情報とDPは、今後のために絶対必要なものだ。
兎からの教育を受け、数体の瀕死モンスターを俺がトドメを刺す。瀕死の動物は三体の配下の餌にする。
「動物たちは、みんなのご飯だ。仲良く分け合って食べてね。」
俺はトドメを刺したモンスターを、スライムの特性で吸収して行く。
<吸収したモンスターへの擬態が可能になりました>
<一定数吸収したモンスターのスキルを学習しました>
「よし!予想以上の結果だ!」
兎・土竜・鼠・蝙蝠・犬・ゴブリン、これだけ擬態が出来るようになれば、何かと便利だ。狼はまだ格下ではないので、狩りは出来なかったようだ。
スキルは、(体当たり・頭突き・槍術・噛み付き・引っ掻き・ソナー・短剣術)をそれぞれ入手。全部LV1ってことは、今後も成長の可能性があるってことだな。今後に期待しよう。うん。
少なくはあるが、DPを入手したので、いくつか考えていた事を実行に移すことにした。
配下たちには、小休憩させてから、今度は三体で再度仮に行かせた。
「さて今のうちにやっちゃうか。」
初めに、入口から入ってすぐの場所に落とし穴をいくつも構築。配下には作動しない条件を追加する。落とし穴は最下級のものなので、ただの落とし穴だ。
落ちた先に、何かあるわけではないが、ダンジョンの中に防衛機構がないのは、心配だから、ちょっと多めに作ってしまった。ヘタレって言うのかな?いや!ヘタレではないはずだ。俺はここを守りたいんだ! ちょっとだけ、自分に言い訳した・・。いや、でも安全対策はあったほうがいいでしょ!
それから、コア部屋と同じ条件の部屋をひとつ構築。すぐ奥に配置する。コアは奥の方の部屋に移動しておいた。
「ん~、今日はこれ以上無理だな。ダンジョンポイントが足りない。」
「あと、ダンジョンの自動修復機能を一旦停止させよう。」
自動修復が機能中は、その修復度合いによってDPを自動で消費してしまうのだ。
配下たちが帰ってきた。
「ただ今戻りました。」
「あ、おかえり~。一つ目の部屋はみんなで使ってね。俺はコア部屋を使うから。それと、みんなの部屋にその瀕死体たちを捕まえたままでいてくれ。少しでもDPが欲しいからね。でも、歯向かってきたら適当に痛めつけてもいいから、逃げられないようにだけしておいて、ついでにコア部屋には絶対入れちゃダメだよ。」
「了解。」
「明日、また、頑張ってくれたら、もう少しだけ警戒が楽になるようにしようと思ってるから、今日は悪いけど、さっき言った感じで頼むよ。なんかあったら念話で知らせてくれ。」
と、奥の部屋。コア部屋に向かう。
とりあえず、ログアウトはせずに離席状態にして、晩飯だ。色々あったせいで、昼飯を逃してしまった。まぁ、1食分の食費が浮いたので、そんなに悪いことではないな。
明日以降のことも考えて、少し多めに冷凍の弁当を買いだめするために、近所のスーパーに行く。
「これだけあれば、数日は持つな。」
ただでさえ負け組なのに、ダメ人間まっしぐらである・・・
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