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その中年。ここに建国せり。  作者: オットー
第二章
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喫茶店


 王都での初日。 それなりにいい宿を見つけ、結構いい食事処を紹介してもらった。


 今はその夕食後である。宿に帰り、部屋に戻ってきた。



「ラナ。今日はこれからどうする?風呂でも入ってくるか?」


「そうね。折角風呂がある宿に泊まってるんだから、入ってこようかしら。タニサはどうするの?」


「俺か? 俺はラナが帰って来てからにするよ。 一応荷物番をしておくよ。夜に誰も居ない部屋があれば、良からぬ考えを持つヤツが現れても、おかしくはないからな。」


「分かったわ。じゃあお先に。行ってくるわね。」


「ああ。」



 俺はラナが立ち去った部屋で自分の荷物のチェックをしていた。


  特に問題は無いようだ。


 装備に関しては、武器は「始まりの街」で購入した鉄の剣(剣などの武器スキルは、今までのレベリングで既にMAXのLV10になっている)、防具はごく普通のありふれた革鎧だ。


 ごく普通の初心者装備だ。


 後は、保存食の干し肉や硬めのパン、クッキー、それに水とドライフルーツがある。これはインベントリじゃなく、リュックサックタイプの荷物袋に入れてある。




 王都に着いたときに、ギルドでモンスターの死体を買い取りに出したから、インベントリには空きがある。 なので、空いた枠に財布とギルドカード、所謂貴重品を保存している。


 ラナが、風呂場から帰ってきた。 貴重品と部屋のカギは、肌身離さずに持っているように伝えておいた。 手荷物や装備品のチェックが終わったら、先に寝ていても良いのだが、待っていると言って断られた。


 俺は、風呂に行くと言って、スキルを多用し、誰にも気付かれることなく、且つ、迅速に王都の壁の内側の、とある場所に来ていた。


 『デビット。このルートで、ここまでを直ぐにでも領域化してくれ。 そして朝には残りの箇所を一斉に領域化する。 準備しておいてくれ。 タイミングはその時に連絡する。』



 また、同じように隠密状態で迅速に移動する。 別に風呂には入らなくても、スライムの体は綺麗に保てるのだが、同室のラナにバレないように、軽く風呂に入って部屋に戻った。




「あ、お帰り。」


「ただいま。荷物は全部チェック終わったのか?」


「ええ、終わってるわ・・・・・」


 ラナは風呂から戻った時の服装ではなく・・・薄布を纏っていた。


「・・・」


 何か期待している素振りは見えているが、俺はKYに徹した。


「よし。じゃあ、明日は朝からギルドに行くから、そろそろ寝よう。」


 ラナから期待されていたような言葉は、俺の口からは出さなかった。


 ラナの頬は膨らんだ。


 それも流して、ベットで横になって、眠る。 とは言っても眠る必要がないので、寝ている風だが。


 ラナはこれ以上行動に移ることはなく。不貞腐れながら、もう一つのベットに入った。


「何よ・・・バカ・・」


 バカで結構。 母親には、無事に返す約束をしたのだから・・・。






 翌朝、部屋や荷物が荒らされてる事は無かった。 朝食チケットを持って食堂に向かう。


 バイキングって言ってたけど、品数は多くはない。 味はまぁまぁ。 




 部屋に戻って装備を纏った。



 カウンターにて部屋のカギを戻す。 軽く雑談しておいて・・・。


「じゃあ、行ってくる。」


「はいよ。 気を付けて行っておいで!」


 オバちゃんと挨拶を交わす。




 ギルドにて


「あんまり良い依頼はなさそうだなぁ。」


「そうねぇ。最近平和そうだから、採取ものの依頼が殆どのようね。」



「仕方ない。 これにしておこう。」


「常時以来の、モンスターの間引きね。 そうね、これでいいわ。」



 王都周辺のモンスターを数種類適当に・・・常時依頼の規定数だけ狩って帰る。


「報告を精算機でやって終了。 王都に来ていても、やってることは変わらないのね。」


「そんなもんだ。」


 ギルドの公式ショップで、何かいいものが無いか見てみても、公式品はどこのギルドでも同じだ。

 各ギルドで違いがあるのは、現物を置いてある一角。 質流れ品の商品が置いてある、このコーナーだけだ。 品揃えはその時々で変化する。


 誰かがギルドからお金を借りるために、アイテム等を担保として預かる。 返金期日までに返せなかった場合は、代わりにそのアイテム等はギルドの名義へとなる。 それを公式ショップの一角で取り扱っている。 



 だが、今回は目ぼしいものが無かった。普段から良いもの無いのか、たまたま今日は無かったのか不明だが、無いものは無いのだ。


「仕方ないな。 街中の店も見て回ってみるかな。 ラナはどうする?」


「私も特にやりたい事がある訳じゃないから、付き添いますよ」


「そうか。」




 俺たちは目ぼしいものが無いかを探しに。 という名目の、王都観光に繰り出した。


 王都の中心には王城があり、その周囲は貴族街と呼ばれる金持ちたちのお屋敷があるのだという。


 王城を囲む壁、貴族街を囲む壁、そして王都全体を囲む壁がある。


 俺には、中心付近に用はない。 街中に用がある。


 結局観光するだけになってしまった。


 買ったものと言えば、ラナの母親であるライラにシンプルなネックレスをお土産で購入しただけだ。


「イファの喫茶店に行ってみるか?小腹が空いただろう?」


「そうね。 でもそういう事はわかっていても何も言わないで連れて行ってくれるのがイイ男よ。」


「そうかい。 俺は別にいい男だなんて思われなくていいから問題ない。」


「・・・もう」


「とりあえず、混みあわない内にいくぞ。」


 吐き捨てるように言って、さっさと喫茶店に向かう。


 イファは居なかったが、ハーブティーは美味かった。


「王都に居ても、母さんのハーブティーが味わえるなんて不思議な気分だわ。」


 ラナの言葉は、娘であるが故の発言なのだろう。


 ハーブティーの持ち帰り用ティーパックを販売していたのでそれをいくつか注文した。



 サンドイッチを食べていると、声を掛けてくる男性がいた。 イファだ。



 このタイミング良いな。


 俺はデビットに念話を送る。


『デビット。王都内の残りの地域の領域化せよ』


 イファとは軽く話した程度だが、それでいい。


 王都全体を領域化を果たしたこのタイミングで、俺の目撃者多数店員や客だ。会話していた人物もイファとラナ、俺が疑われることはまず無いはずだ。


「邪魔したな。美味かったよ。」


 持ち帰り用ティーパックを受け取るとき、俺は店員に銀貨を1枚渡した。


「えっ!?」


「美味かったのと、君の接客態度が気に入っただけだ。 次来た時も、君が応対してくれたら嬉しいな。 また来るよ。 受け取っておいてくれ。」


「あ、ありがとうございます! またお越しください!」


「ああ。」 と片手をあげ店を出る。


 なぜかラナに睨まれている。 銀貨を渡したのが気に食わなかったのだろう。そういう事にしておく。


「さて次は、どうしようか。」


「知らない!」


「そっか。じゃあ俺は用事があるから、先に帰っててもいいぞ。」


「嫌よ! 付いてくわ。」


 次は・・・。もう・・・。私にだって・・・。


 何やらブツブツ呟きが聞こえるが気にしない。


「用事ってここ?」


「ああそうだ。」


 予定していたテイクアウトのできる店で、今日の夕食を購入した。


 何やら、腑に落ちていない表情のラナ。これも気にしない。


「じゃ、帰るか。」


 今日も風呂へ入ろうかな・・・


 そんなことを考えながら、宿へと向かって行った。


今回は、書くのに手間取りました。

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