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その中年。ここに建国せり。  作者: オットー
第二章
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王都行き前日

キリがいいので、ここから第二章ってことにしまーす^^


 俺は、「クレスト王国」の王都を手中には収めてはいない。 手を付けようと思った矢先に、あの転生メールが届いたのだ。


 で、もう、この世界での事象は、ゲームではなく、現実の問題として捉えることにしたのだ。



 なので、あれから一週間経った今でも、クレストの王都には未だに手を出していないのだ。


 安全に安全を重ねて、各軍団の戦力が整うまで、俺も各種経験値を稼ぎ、レベルと擬態数・スキルレベルを稼いでいた。 尚、今の俺はDPは何もしなくても確実に貯まっていっている。


 狼たち、最初の頃から居る配下たちには、、中ボス部屋に、適正反応があった場合には即時、次の毒沼部屋に招集するようにしているが、それ以外は自由にさせている。


 俺に反逆することも出来ない以上は、さほどレア度の高くもないモンスター達なので、問題はない。


 何せ、「始まりの街」周辺に生息するモンスターばかりなのだから。




 「ああ、そうだ。 狼たちには、新しいことをさせてみよう。」


 ふと、思いつきで彼らを呼び出し、次の事を告げる。


「お前たちは俺が右も左もわからない様な駆け出しの頃から俺に使えてくれている。 そこで、そのお前たちに、俺も報いなければならんと思って、面白いことを思いついた。」



 狼・兎・土竜・スライム・蝙蝠・ゴブリンには、連名で、ひとつダンジョンを作ることを許可した。


 森の東側の「泉」と盗賊が拠点としていた拠点。その中心地を与える。


 6体で、民主主義的な形式をとり共同して運営させる。取り決めとしてはこうだ。


・週一回、収入の2割のDPを俺に上納する。


・残りの8割を、全員で均等割し、そのDPは各々が自由に使うことができる。割り切れない端数は翌週に持ち越す。


・6体会議で決定した内容については、俺に確認を取る必要なく、そのダンジョンの運営に反映できる。


・6体会議で同数の賛否に別れた場合は、その回の会議では未決定事項とし、一時その案件を凍結する。再度同案件を議題にするには、3週間開けなければならない。


・今後の経過は、最低2ヶ月毎に、俺に状況報告を連名で行うものとする。


・その他、俺から指示があった場合には、それを優先する。


「さぁ。お前たちの功績を誇りに思っている。今後も良く仕えてくれよ。」




「ミノタウロス。お前にはこれから中ボス部屋内部で倒した分のDPを、すべてお前に授ける。今後のお前の働きを期待する。」



 こうして、俺の直属の配下たちは、それぞれが役目を果たすために、邁進中だ。



 それからまた2週間が経過した。



「デビット。そろそろ王都を手に入れるぞ。」


「はい。頃合でございます。」


 デビットも、そろそろだと考えていたのであろう。



「何かあったら念話でも良い。連絡を寄越せ。 そして、ここの管理を任せる。空いた時間はレベル上げでもなんでも、自由に使え。」


 と、俺は人型になり、始まりの街へ向かう。


 ギルドに行き受付の女性に、ギルマスへの伝言を依頼した。


「明日。王都に向かう。」 とだけ。





 ギルマスにしか、連絡を入れていないのだが、その日の夜。 俺の滞在している宿、その一室へと向かう一人の若い女の姿があった。


 ノックする音が聞こえ。返事をすると、部屋のドアが開いた。


「タニサ。あなた、王都に行くって聞いたけど、ほんとに行くの?」


「ああ。ラナじゃないか。久しぶりだな。こんなところにまで来て、どうした? 王都へは行くが?」


「いつ行くの?」


「明日、宿をチェックアウトしたら発つつもりだが・・。」


「わかったわ。私もついていくから。 これは決定事項よ。逃げたら承知しないわよ! じゃあ明日ね。」 と


 ラナは、それだけ言い放つと、宿を出て行った。


「・・・・・・・。」


 俺は、イキナリ過ぎたこの展開についていけず、呆然としていた。


 ラナはドアを開けてから、部屋には入らず、入口でその問答をしていたので、数人の客や従業員が、その俺たちの事を見ていた。


「ああ、あんた。 そっかタニサっていうのか。 俺はイファ。しがない行商人なんだが、面白い事になってるな。」


「いやぁ。実は俺にも何がなんだか・・・」


「周りのみんなはわかってると思うぜ? あんた、あのラナに気に入られちまったんだな。」


「あの。って?」


「いやいや。 ラナって娘は、この街じゃ有名なんだよ。

 顔は結構いい。そしてどんな男にもなびかず、冒険者としても腕も経つし知識も経験もあるのに、この街を離れようとはしなかった。っていう結構な堅物の女冒険者だ。ってな。」


「そうなのか。」


「そのラナに、有無を言わせず着いて行くなんて言わせた男は初めてだよ。 しかもそれを言わせたのはイケメンとは言いにくい、中年のあんたに、だ。 どんな魔法を使ったんだ?」


「いやいや、俺は何もしていないし、そんな魔法なんて知らんよ。」


「はっはっは。 そうかい? 俺もあやかりたいもんだね。」


 と、見ず知らずだった、そのイファと言う行商人の男と話をした。



「一体何だったんだ?」



 気を取り直して、人間として振る舞いを続けるため、食堂で食事をする。



「あ、タニサ。 あんた、ラナの事どうするんだ?」


 不躾な質問だ。


「イファって言ったっけ? 別にどうもしないが、何かあんたに関係でもあるのか?」


 俺は少し不機嫌そうな表情を作りそう答えた。


「ああ、すまない。 俺には直接関係はないんだがね・・」


 彼、イファは、ラナの母親の育てているハーブをここで買い付けて、王都で販売しているという所謂委託販売の商人だという話だ。


「なるほどな。それであんた。・・いや、イファはラナの事を気にしていたのか。」


「まぁ、そういうわけだ。」


「俺自身は王都にどのくらい滞在するとか、何をやるとか、特には決めてはいないが。 ラナからの話は、俺自身いきなりの事だったから、よくわからんよ。」


「そうか。 じゃあ、頼みがある。」


「は?何を言ってるんだ?俺にはあんたの頼みを聞く筋合いはないんだが。」


「そこをなんとか頼むよ。 ラナは今まで3日以上この街から離れていた事はないんだ。 それで、ラナがしばらく戻らない、しかも中年男に付いていったと、風の噂にでも耳に入れてみろ。 あの母親は、女手一つでラナを育ててきたんだ。 心配でハーブ作りどころではないだろう。 だから、あんたから、ラナなの母親に事の顛末を話して欲しいんだ。 もちろん俺も一緒に行って、最初は俺から話を切り出す。」


 少し俺は考え。


「貸し、一つだぞ。」


「ありがてぇ!」


 どういう風にするか、話を纏めておいた。


 ラナの母親の作ったハーブで淹れるハーブティーが旨いのは確かだ。それが飲めなくなるかも知れない。そうなると、この世界での楽しみが一つだけとは言え、無くなってしまうことになる。

 それに、商人に「貸し」を作っておくのは、今後、なにかの役に立つかも知れない。


 そう考えて、了承したのである。


あまりキャラを増やすと、今後大変そうですが、少人数で収められるように頑張ってみますw

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