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夢の世界で

作者: 星香

皆さん、お久しぶりです。

この作品は、大学のサークルでラジオドラマを制作した作品です。

少し手直しした作品です。

夢の世界で


「あのさ、いい加減にしてくれないか?」

突然、突拍子もなく言われた言葉だった。

私は少し驚いて、次に言葉に出た単語はこうだった。

「はあ?」

明らかに、怒りが籠った声になってしまった。

私の何がいけなかったのか、分からなかったからだ。そんな私に、黎はムッとしたのか、言葉を強めてきた。

「何でそんなに怒ってんの?」

「怒ってなんかないわよ!」

負けじと言い返すと、黎はため息交じりに苦言をついた。

「前々から言ってるけどさ、なんで、こう、素直になれないわけ?」

「・・・・っ!うっるさいわね!知らないわよ!だいたい、今日は・・・・」

そう、今日は黎の誕生日でサプライズ気分でいただけ。それが、素直に言えなかったのだ。

「はあ?」

「何でもないっ!あー、もう、帰るから!」

「はあ?もう、何なんだよ・・・って!楓!危ない!」

素直に言えないことに憤っていて、車道を横切ろうとしたその時だった。

黎に、大声が聞こえたかと思った次の瞬間。黎に突き飛ばされた。

「―え?」

キキーィ!と音とともに、黎の体は宙を舞ったのだ。

そして、約一か月になっただろうか・・・・。

大好きだった人と喧嘩別れをした、あの日。

その人は事故で亡くなってしまった。私の所為でー

黎の家族は私を責めなかったけれど、私を許さないで欲しいと言って今は、ぼうと歩いている。

そして、私は泣きながら歩いていると、ある店に目が入った。

その店は【夢の砂】。

そのお店に入ったことにより体験した物語。

私は、看板に何気なく見ていると看板には『今、会いたい人はいますか?』と書かれていた。

(あれ・・・?なんだろ、『今、会いたい人はいますか?』)

それは、今、思えば甘い誘い文句だったと思う。

だって、今、このタイミングで「会いたい人はいますか?」って言われてしまうと、どうしようもいくらいに会いたくなってしまうから・・・。私は、吸い込まれるように店の中へ入ってしまった。

お店の扉を開けると、鐘の音がした。

「いらっしゃいませ、【夢の砂】へ」

そこから優しそうな声で、出迎えてくれたのはこのお店の主人と思わしき人だった。

「何か、お探し物ですか?」

「え?あ、あの・・・。外の看板に『今、会いたい人はいますか?』って書いてありましたが、本当ですか?」

私は、店主にそう尋ねると店主は微笑んでこう言った。

「はい。ここは、「今、一番会いたい人」「もう会えなくなった人に、会いたい」という方の前に現れる、店なのです」

もう会えない人に会いたい・・・。

まるで、私のようだ。それが、本当のことなのか試しに買ってみようと思った。

「そうなんですか・・・。あの、これは?」

私は、棚に並んでいる綺麗な砂が入っている瓶を指してみて尋ねると店主は、隣に来て言う。

「これは「夢の砂」といいます、色によってそれぞれ効果は異なりますが、まあ・・・知らなくとも大丈夫ですよ」

店主はそう言うと、今度は別の瓶を手に取り私に差し出した。

「こ、これは?」

「ふふ、私はこれでも長いことここの店主を務めているのです。これくらいはわかります。貴女へのオススメはこれです」

瓶の中に入っていたのはオレンジと青、それから薄い赤だった。

「・・・・ありがとうございます」

「では、使用方法を入れて置きますのでお家に帰ってから見てくださいね」

使用法書と小瓶をラッピングをして貰った。

そして、家に帰ると買ったばかりの瓶を取り出してみた。

「会いたい人、ね・・・。そう簡単に会えるものなの?」

私は、瓶と一緒に貰った使用方法が書かれている紙を取りだし読んだ。

「えっと・・・。使用方法は、一日一回の睡眠での使用、か。

その人のこと、楽しかった思い出を浮かべます。眠りについたらその人に会えます。

注意、思い出して辛くなっても目を開けてはなりません。か・・・」

本当にこれで会えるものなのだろうか・・・。半信半疑に思いながらも、さっそく、今夜試すことにした。

「・・・・あ、あれ?ここ、どこ?なんか、真っ暗なんですけど」

そこは、真っ暗で何もない。目を閉じたときと何ら変わらない。

やっぱり、期待するべきじゃなかったのかもしれない。と思ったその時―

「―楓?」

「・・・え?れ、黎なの?本当に?」

もう会えないと思った、あの人の声がして信じられなかった。

「どうしたの?まるでお化けか幽霊でも見ているみたいな顔だね?」

「え・・・?あ、あの・・・?」

「おいおい、言葉になっていないよ?」

「う、うるさいな」

「あははは、もしかして、テレてるの?」

「なっ・・・!う、うるさい!」

目が覚めてしまった。まともに話すらできずに終わった。

あれからも、何度か使っても素直には話せないし、すぐに目が覚めてしまう。

もう、後がない。これで最後、だから今夜こそちゃんと伝えよう。

あの日から、胸に締め付けられている言葉を。

「ふぅ・・・・よし・・・」

そして、私は目を閉じると彼がいるところへ向かった。

そこには、すでに彼が居た。だけど、ここは・・・。

(あ、あれ・・・。ここ、は・・・)

「あ!楓!」

「・・・ここって・・・。あの日、ケンカした場所だよね?」

「うん。そうだよ、あの日ここでケンカしちゃったんだよね。

そんで、その帰り道で事故に遭った」

そう、あの日。黎とケンカをした。些細なことでのケンカだった。どちらかが折れて謝っていれば、よかった。そうすれば、私を庇って黎は死ぬことなんてなかった・・・。

どうして、あの時私を庇ったの・・・?

「・・・どうして?」

「え?」

「どうして、私を庇って死んだの?あの時、赤信号だった歩道に出た私をほっとけばよかったじゃない!!なんで・・・?アンタが死ぬのよ・・・、なんで?」

「楓・・・」

ああ、いつもと変わらない。素直どころか、ただの八つ当たりだ・・・。

ちゃんと、言わなきゃいけないのに・・・っ!

どうして、私は素直になれないの?どうして?

「なんでって、それは楓のことが大好きだからだよ」

「え・・・?」

「あの日、傷つけるようなこと言ってごめん。その日は俺の誕生日で、一生懸命だったのにね」

「れ、黎?」

「でも、謝る気はないからな」

「はあ!?」

「庇ったこと。どんなに、責めても。これだけは譲らないから」

「・・・っ、黎のバカ!私まだ、自分から言ってなかったのに・・・・っ!でも、助けてくれてありがとう・・・。あと、ゴメン」

「・・・楓」

「私も・・・大好きだよ・・・。バカ、バカ黎」

「おいおい、バカって言い過ぎだろ!」

「うっさい!バカ!」

黎は文句を言いながら、私を抱きしめた。

やっと、言えた。このまま、黎といたい。

というか、もう夢から覚めなくてもいい。 私は、心からそう思った。

だけど、それは叶わなかった。

「・・・もう、お別れだよ。楓」

「え!?」

「最後に君に会えて良かった」

「い、いやだよ・・・。まだ、一緒にいたい・・・」

「ううん。もう、夢から覚めないと。君を待っていてくれている人たちがいるだろ?」

「でも・・・!いやだよ・・・、もう、離れたくない」

「楓、珍しい・・・。甘えてくるなんて・・・」

「なっ!?人が、珍しく本音を言ったのに、そんなこと言う!?」

「あ、ゴ、ゴメン。でも、もう夢から覚めないとね?それに、もう一人じゃないだろ?」

「え?」

「俺は、君の心にいるよ。だから、もう泣かないで?俺は、遠くから見守っているから」

「あ・・・、うん。バイバイ、黎」

目覚ましの音とともに目が覚めた。

「ん・・・、あ・・・砂が無い・・・」

(そっか・・・、もう使い切ったちゃったんだ)

私は空になった瓶をただ見ていた。涙が流れていたことも気づかないくらいに。

後日、【夢の砂】があった場所は、何もない路地裏だった。

今も部屋には、砂がなくなった瓶を机に置いてある。また、いつか、夢で逢えると淡い期待をしながら。




終わり

前書きにもありますように、大学のサークルでラジオドラマを製作した時の作品です。あまり素直になれない女の子が大好きな男の子と喧嘩別れして自分を責めたり後悔を感じていた時に不思議なお店で夢の砂を購入するというお話になっています。この作品は、大学のサークルで作品したもので、不器用な形になっています。そこは、目をつぶって下さい。ただ、恋愛はあまり書かないので恋愛らしくはないかもと思います....。


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