はーじーめーの、だいいっぽ!
短いです。
私の小さな第一歩でもあり、主人公の第一歩でもあります。
少女漫画風でしょうか。こんな頃もあったかなと思いながら書いてみました。
「なぁ、お前好きなやつでもいるのか?」
「はぁ?! な、なに?いきなり。」
学校からの帰り道、唐突に聞かれて慌てて答える。
「最近なんか髪型とか凝ってるし、着てる服の感じも変わったから。」
「そ、そうかな。…うん、好きな人はいるよ。でも、あんたには教えない。」
「え?なんで?」
「なんでって言われても…。幼馴染みだからって何でも教えるわけないじゃない。っていうか、私の好きな人なんて気になるの?」
「うん、気になる。こないだまで一緒にバカやってたのに、なんか大人しくなっちゃってつまんねぇし。原因がそれなら、気になる。」
なんだ、そんな理由か…とガックリくる。
「じゃぁ、自分はどうなの?いるの?その…好きな人。」
「俺?んー、かわいいなぁと思う子はいるけど、特別にこの子!ってのはないな、まだ。」
「ふーん…そうなんだ♪」
「…なんでそんな嬉しそうなわけ?」
「う、嬉しそう?気のせいじゃないかな? ひぁっ!」
じとりと睨まれたけれど、嬉しい気持ちは隠せないまま答えると、背中をつーっと撫でられる。
「何するのよ!」
「相変わらずそこは弱いのな。」
今度は向こうがニヤニヤしながら見下ろしてくる。
「そういうとこは変わってないみたいでよかった。」
「もう…。なにそれ。そんなとこまで変わるわけないでしょ。」
なんだか嬉しそうな顔をした幼馴染みに呆れながら、こんな提案をしてみる。
「じゃぁ、あんたに好きな人ができたら教えてよ。そしたら、私が好きな人も教えてあげる。」
「えー、なんだよ、それぇ。」
案の定、不満げな顔と声が返ってきた。
「だって、私だけ教えるなんて不公平じゃない。」
「まぁいいけど。絶対教えろよな。その時になってやっぱり恥ずかしいとかはなしな!」
「うっ…。だ、大丈夫。約束は守るから。」
恥ずかしい上に勇気を振り絞ることになるだろうけど、聞いてもらわないと言えない気がする。
一斉一代の大勝負になりそうだけれど、勝算は…あると思いたい。
「わかった。じゃぁ、今はそれで許しといてやる。んじゃ、また明日な。」
「うん。明日こそは遅刻寸前まで寝るのやめてよね。」
「仕方ないだろ、成長期は眠いんだよ。お前はもう終わったから忘れたかもしれないけど。」
「終わってないもん!まだちょっとずつは伸びてます!!」
「こないだの健診で何cm伸びてたんだよ。」
「…5mm。」
「ご、5mmってお前、それもう誤差!誤差じゃねーかwww いてっww」
一応、後ろを向いているが、肩が震えているので笑っていることは明白な目の前の背中をバシッと叩いて、さっさと向かいの家の前まで歩く。
「じゃーね!ウドの大木さん!!」
「だーれがウドの大木だよ。小人の国に帰るのか?」
まだニヤケた顔のまま振り返り失礼なことを言うやつは無視して、乱暴に玄関のドアを閉めた。
遅めの成長期に入り、膝が痛いだの、かかとが痛いだの言いながら、にょきにょきと伸びていく上背や、広くなっていく背中や肩幅なんかにトキメキを覚えたのはつい最近のこと。
ただの幼馴染みが男性になっていくのを見て、自分が女性であることにも気づかされてしまった。
ただ、さっきみたいなやりとりをした後は、なぜあんな奴をと思うこともしばしばである。
それでも、また顔を会わせるとやっぱり好きな気持ちが溢れてきて戸惑うのだ。
好きになったり嫌いになったり、ちょっとしたことで一喜一憂しては自分の感情に振り回されてしまう。
彼は"まだ"この大変さを知らないらしい。
願わくば、彼を初めての感情で振り回すのは私でありたい。
今日交わした約束は、その第一歩。
できれば彼に言わせたいけれど、私から始めるのもいいかもしれない。
早晩、隠しきれなくなるだろうこの思いを知ったら、彼はどう思うだろうか。
喜ぶ?驚く?困ったりもするかしら…。
また昨日と同じことを考えながらベッドに横になる。
(まだ起きていないことは誰にもわからない。)
昨日と同じ結論を出して、目を閉じる。
そして、昨日とは違う約束を思い出す。
早くその日が来ればいいという思いと、永遠に来なければいいという正反対の思いを同じだけ抱えながら眠りに落ちた。
このあとは特に考えていませんが、なにか思い付いたら続くかもしれません。
キャラクタに名前もつけなかったので、次は名前をつけて登場人物も増やしたいですね。