ゆるやかストリート∽ふたりのデート∽
ゆるやかストリートの2作目です。
よろしかったら1作目もよろしくお願いいたします。
※コレはあくまでも1話完結です。
綾瀬 陽菜27歳。
私の大好きな彼は12歳年上です。
今日は澤本 泰宏通称ひーくんと休日デートの日!!
今日の私は完璧!!
長い髪も頑張って巻いてみたり!
お化粧だってがんばって!!
服はこの時の為に買っておいた服で最大限のお洒落をした!!
…………と。
何故私がデートでこんなにも気合いを入れているのかというと。。
実は私とひーくんの休みが合わなくて、、、2人とも基本的に休みが不定期だから遊びに行くということが難しいのだ。
でも今日は仕事を調整して、しまくって、やっとひーくんと休みが合いデートが出来ることになった!
1週間前から楽しみすぎて中々眠れなくって、、
まぁ……そんな私に対してひーくんはぐーすか寝ていたみたいだけど、、、
でも良いのだ!!
ひーくんと出掛けれるなら!!
私はそれだけで!!
「……ひな……今日なんかすごいね……」
いつの間にかに後ろに立っていたひーくんが私を見下ろして苦笑い。
ひーくんの身長は高いので、話す時はいつもこんな感じ。
というか!!
「どうせならかわいいって言ってよー!」
私が頬を膨らませながら言うとひーくんは、はいはいと言う風に頭を撫でてくれた。
「今日はどこ行くの?」
行きたいところは替わりばんこで今回は私の番。
前はひーくんの行きたいところだったので神社と温泉だった。
最初の頃はゲームセンターとか行くのかなって思った。
でもひーくんは。
『ゲーセンは1人で行きたいから』
と笑顔で私に言った。
しかも、‘ひなはゲーム出来ないでしょ?’との言葉つきで。
まぁその通りだから仕様がないし、1人になりたい時もあるのだろうと思う。
「今日は映画行って、ウィンドウショッピングして、ご飯食べてースイーツ食べてー……」
「………それ1日の日程だよね?」
ひーくんは私の日程に半ば呆れつつ玄関に向かう。
「うん!!今日はめいっぱい楽しもうね」
私は笑顔でひーくんの手を取った。
ーーーーーー映画館。
『熊料理』
そのチケットを持って始まる前にパンフレットやグッズを買う。
「………まだ観てないのにもう買っちゃうの?」
「だって観終わってからだったら混んじゃうでしょ!」
「ひなは用意周到だなぁ」
そう言いつつ熊料理の主人公をモチーフにした熊のキャラクターのキーホルダーをつまむ。
「……お揃いにする?」
私は彼の顔を覗きこむと、急に何を言い出すんだと言うばかりにすぐそのキーホルダーをかごに戻した。
「なっ!何言い出すの!?そんなつもりじゃないし!!……俺飲み物買ってくる!」
照れてるのだろうか、ひーくんはそそくさと売店の方に歩いていった。
ひーくんは年上のくせに変なところが純粋でかわいい。
私は嬉しくなって、そのキーホルダーを持ち上げた。
ーーーーーーー「面白かったねー!」
ぞろぞろと出ていくお客さんを横目に見つつ、ひーくんに話し掛ける。
「まさかあの料理にあの調味料を使うとは………」
ひーくんは両手に軽くなった飲み物のカップを持ちながら頷く。
………彼にとっては違う意味で面白かったらしい。
まぁ…楽しかったのならそれでもいいのかな?
「ひーくん!!お腹すいた!何か食べに行こう!」
カップを捨てたのを確認して両手がフリーになったひーくんの腕をとり、エスカレーターに向かう。
「わっ!ひな!!引っ張らなくて良いから!!」
そんな言葉も聞こえないフリをして、そのまま足早に次の目的地に向かった。
ーーーーーレストラン…………?
賑やかに人が集う場所。
造りはウッド調でオシャレな雰囲気だ。
『鉄板館』
そう。
ここはチェーン店。
だからと言って味に大雑把さがなくて。
私の大好きなお好み焼屋さんだ!!
「ウッド調ってここが屋台のイメージで造られてるお店だからでしょ?誤解を生むようなこと言わない!」
ひーくんのツッコミチョップが私に直撃したところで、店員さんが来てテーブルの上にある鉄板でお好み焼きを焼き始める。
良い匂いが辺りに充満してきた。
「後はひっくり返して5分程置いて頂ければ美味しく頂けますので」
そう言って直ぐ様店員さんは持ち場へと戻る。
「ねぇ!ねぇ!ひーくん!!私……!!」
「はいはい。ひっくり返したいんでしょ?どうぞ?」
流石ひーくんは分かっている様子で。
私に小手を渡してくれる。
「ようっし!久し振りに私の料理食べさせてあげるからね!!」
「ひなの料理じゃないけどね」
余計な一言を言うひーくんを余所に私はヤル気満々でお好み焼きをひっくり返した。
ーーーーーーーー「ほら?ひな元気出して?味は美味しかったから気にすることないよ」
ひーくんは私に気を使いながら手を引っ張って前を歩いてくれる。
……こんな筈じゃなかった………。
私が意気込みひっくり返したお好み焼きは無惨に失敗してぐしゃぐしゃになってしまった。。
誰かに振る舞う為に1人でお好み焼き家に通いつめてひっくり返す練習を、重ねてきたのに………。
私の料理の取り柄はこれぐらいだと思ってたのに…………。
「……ひなの好きなアイス後で買ってあげるから?」
アイスって……。
ひーくん私を子供と勘違いしてませんか?
でも。。
それでも。。。
「アイス食べたい……」
「じゃあお腹空かせるためにひなの好きなお店を巡ろうか?」
にっこりと笑うその顔にきゅんと来ない筈がなくて、私は思わず彼の腕に抱き付く。
……本当はひーくんそのものに抱き付きたいんだけど……外でそういう事は苦手だって知ってるから。。
これだけで我慢しよう。。
「………ひーな!暑いからあまりくっつかないで」
そう言われて腕は離すも手だけは離さなかった。
この場合離したくなかったって言うのが正解なのか分からないけど。
私は嬉しい気持ちのまま、次の行きたい所へと出発した。
ーーーーーーーーーーー
「ひーくん!!これ!かわいい!!」
「うーん?俺は此方のがかわいいと思うよ?」
ひーくんが持ったのはハリネズミがサラリーマンのキャラクターになっていて、その柄が沢山ついたシュシュ。
お世辞にもあまりかわいいとは言いづらい代物だ。
「ひなに似てるね?」
クスクスとひーくんは楽しそうに笑う。
むーー。
絶対面白がってる。。
しかも私がサラリーマンって。。。
「似てないもん!!」
そんなやり取りをしつつ。
楽しんでいるとーーーーー。
ーーーー時間はあっという間に過ぎていて、空は真っ暗になっていた。
私達はそろそろ家に帰ろうと家路についていた。
「………アイス食べ忘れちゃったね」
それはなんとなく。
今日という楽しい1日が終わるのが寂しくて出た言葉だった。
するとひーくんが私の手を少し強く握る。
「…………コンビニいこうか?」
私の言葉の言葉のせいなのか、突然私の手を引っ張って家の近くのコンビニへ入った。
そして私をアイスのショーケースの前に連れていく。
「帰って何食べようか?ひなはカップアイスが好きなんだっけ?」
隣で優しい笑顔でひーくんは色々なアイスを物色しつつ私に勧めてくれた。
何でだろう。
何で彼はこんなにも私を甘やかしてくれるんだろう。
私はそんな彼にちゃんと返せているのだろうか。。
…………………。
……………………今は。
今は素直に彼に甘えたい気持ちが大きいから。
「………うん!!私紫いものカップがいい!!」
笑顔で彼と一緒にアイスを選ぶことにしよう。
そうして私達は結局アイスを買いすぎてその日のご飯はアイスになってしまったのは言うまでもない。。。
ーーーーーーーーーー
「ひーくん今日アイス何がいいー?」
「んー?えーっと。。一口で食べれる粒アイス」
今日も買いすぎたアイスをせっせと2人で消費していく。
自分の食べたいうずまきアイスとひーくんの希望のアイスを持って、彼の隣に座る。
相変わらず彼はテレビに夢中なのか、テレビから目を離さない。
私は1粒アイスを付属の小さなフォークに刺して、ひーくんの口元に持っていった。
「………んー?」
とそんな声と共に私の手から、アイスをひとくちで食べる。
かわいいなぁ。
そう思いつつ私はあるものの存在を思い出した。
私は立ち上がってうずまきソフトを食べながらひーくんの鞄にあるものを付けて、又定位置の彼の隣に座る。
「……ひな?アイス食べながら寝ないようにね?」
…………。
この人は何処まで私を子供扱いしているのだろう。
そんなことしないし!
抗議の意味も込めてひーくんの肩へ強めに頭を乗せた。
「………ひーくんのばーか。」
「はいはい」
彼は私をあやすように頭を撫でる。
少し悔しいけど。。
やっぱり私はこの手が大好きで。
許してしまう。
そんな幸せに浸りながら彼の隣でアイスを食べ続けたのだった。
ーーーーーーーーーーー。
ーーーーおまけ。
「あれ?澤本さん鞄にかわいいの付けてますね?」
それは仕事場での事。
後輩のある一言に自分の鞄を見てみる。
するとそこには、ついこの間ひなと観に行った熊料理のキーホルダーだった。
恥ずかしさのあまり慌ててそれを取る。
「あっ…取っちゃうんですか?」
「そりゃそうだろ……もうこういうの付ける歳じゃないから」
「もしかして彼女さんの仕業ですか?かわいい事するんですね」
ニヤニヤしながら後輩は仕事へ戻った。
かわいい……か……。
というか。
いつの間に付けたんだろ?
手に持ってるキーホルダーを見つめる。
「ほーんと。俺の彼女さんには困ったものだね?」
それでも。
なんだか温かい気持ちがふわりと込み上げてくる。
俺はこっそりとそれを。
手帳に付けたのだった。
お付き合いありがとうございました。