本物川新の拒絶
彼女―――日白 利莉のいうことは、最初からめちゃくちゃだった。
曰く、自分は別の次元からやってきた生命体だとか。
曰く、自分のような生命体は、気付かれていないだけで、地球に多数来ているとか。
他にも、利莉が元いた世界では、「お酒」が神のように扱われ、崇拝されていたとか。
そして、今目の前にいる利莉は、「ホワイトリリー」が肉体を得た、いわば付喪神のような存在・・・らしい。
正直、信じられない。
まだよっぽど、なにかのドッキリだといわれた方が納得がいく。
だが、そうでない以上、半ば無理やりにでも彼女のいうことを信じなければ、いろいろと説明がつかない。
「・・・で、そのお酒の神様とやらが、なんで俺の住んでるアパートなんかに居座ってんだ?生憎だが、俺は未青年だ。酒なんか飲めないぞ?」
「ミセイネン?よく分からないけど、そのミセイネンって種族はお酒飲めないの?じゃあ、戦のときはどうするの?」
「い、戦・・・?」
「うん。これから、この世界では私たちとそのマスターたちによる、戦が行われるの。その時、お酒飲まないと、力がでないみたいなの。でも、マスターはお酒飲めないっていうし・・・」
「おい・・・ちょっと待て」
「え?」
「戦って何だ。それから、文脈から察するに、どうやら俺が勝手にマスターとやらにさせられてるみたいだが、俺はそんなのしないぞ」
「えーーー!!」
「当たり前だろ。俺はなんの変哲もないただの大学生だし、特別な技術や能力だってない。っていうか、そんな能力をもってるやつなんて、世界のどこにもいやしないんだ。なんだって俺なんかのところに来たんだよ、まったく」
「能力とか技術とか、難しいことはあたしわかんないけど・・・あたしが見えてるってことは、マスターはやっぱりあたしのマスターだよ」
「・・・意味わかんねえ。とにかく、俺はそんなわけのわからんことには関わらないからな」
「それはよくないねぇ」
声が、聞こえた。
俺が座っていた狭いワンルームの床、自分の座っている位置からは、短い廊下が見え、玄関が見える。
その玄関に、人がいた。
勿論鍵はしていたし、していなかったとしても、視界の端に玄関は入っていたのだから、誰かいたならば、気が付かないはずがない。
なのに、なぜ。
「お前がマスターにならないと、俺はホワイトリリーに手が出せない。それは非常によくないんだよ」
「彼」は、ゆっくりこちらに近づいてくる。
黒みがかった紫の無造作な長い髪。
服と形容するのも躊躇われるぼろぼろの布きれ。
見られただけで切り裂かれそうな鋭い眼光。
そのすべてが、俺と利莉に敵意を向けていた。
「俺はラスティ・ネイル。地球名では『連城 爪牙』(れんじょう そうが)。初めまして、人間。そして、もうすぐさよならだ」
僕は他の人より圧倒的に文章量が少ないようです。恐らく、これからも。