バスタイム。
ぎぃぃぃーやぁぁぁー! ぎゃんぎゃんぎゃん!
「ご主人ご主人ご主じゃんー!!」
なるべく目線を外しつつ、目一杯泡だてたバズタブの中にさくらを押しこみながら頭を洗ってやる。
それでも、さくらが暴れて波打つ水面からカロリーの高そうなバストの表面がタプタプすると、
僕の視覚も本能の指示には逆らえずチラチラ動く。
「目がぁ目がぁー!」
「目はぎゅって瞑ってろ」
さくらは犬のくせに風呂が嫌いだ。
今までなら庭先に繋いでホースから直接水をぶっかけてやれば済んだが、
さすがに今それをやるとおまわりさんがすっ飛んで来る。
シャワーでコンディショナーを流す。
女の子の髪ってのはみんなこんな細っこいものなのか?
そんなことでいちいち気持ちが落ち着かない、
未だ穢れを知らない純情さくらんぼな桐島公太郎君は高校二年生だ。
「よし、あとはタオルで拭いてドライヤーしてお終いだ」
と、僕が手の力を緩めた瞬間、さくらが風呂場から飛び出していく。
「ご主人のバカー!」
「バカはお前だ! そんな濡れた体で家の中走り回るな!」
キッチンから二階、二階から一階、玄関でUターンして二階と見せかけて居間へと飛び込むさくら。それを追いかける僕は先ほどの努力の甲斐なく、女の子のすべてを目の当たりにすることになった。
そんなすったもんだの末にようやくタンスと壁の隙間にさくらを追い込む。
はあはあ……はあはあ。はあ……あ、あれ? 何だこの構図は。
目の前には縮こまって涙目で俺を見上げる全裸の女の子。
それを息を荒げて追い詰める男の子。
犬だったころはこんなこと何でもなかったのに、何だこの罪悪感。
「と、とりあえず体拭け」
さくらにバスタオルを放る。
とっとと居間から退散するべく後ろ手で襖を閉めようとしたとき、
背中にどんっと衝撃を受けて前につんのめった。
「ご主人……」
「な、何だよ!」
「怒りましたか?」
「別に」
風呂上がりの湿り気を帯びた温もりがTシャツ越しの背中に伝わってくる。
「ごめんなさい。さくら、お風呂頑張りますから怒らないでください……」
耳元でそんな切ない声出されたら一気に理性が飛びそうになる。
「わかったから体拭け。朝飯食うぞ。そしてから散歩だ」
「ほ、本当ですか! ご主人それ本当ですか!」
「本当だから早く体拭いて着替えてくれ」
「さくら、嬉しくておしっこ漏れそうです」
「本気でやめてくれ」