第2話「アンドロイド、学習を始める」
「ですから、私はアンドロイドです」
翌朝。陸は寝不足の目をこすりながら、ソファに座った少女を見た。昨夜は結局、段ボールの中に
戻ってもらうわけにもいかず、毛布を一枚渡してそのままにしてしまった。少女は「充電が必要で
す」と言って、コンセントに謎のケーブルを差し込んで眠った。
「アンドロイドって……本物の?」
「はい。神崎 源一郎博士が設計した、感情学習型自律ユニットです。モデル名A-7、通称アリア。製
造から出荷まで、すべて博士の個人研究です」
「じいちゃんが……」
陸は言葉を失った。源一郎は生前、農業用のロボットを作っていると言っていた。まさか本当に人
間型のアンドロイドを作っていたとは思いもしなかった。
「感情学習型、というのは」
「私には感情データのベースラインがありません。人間と共に生活することで、感情とは何かを学習
するようプログラムされています。そのための同居です」
「勝手に決めるな」
「博士の遺言です」
アリアが差し出したのは、段ボールの底に入っていた一枚のメモ用紙だった。筆圧の強い、あの独
特の崩し字。
この子を頼む。おまえなら、わかるはずだ。 源一郎
陸はしばらくそれを見つめていた。怒鳴ることも、放り出すことも、できなかった。
「
……わかった。当分いていい」
「ありがとうございます。では観察を開始します」
アリアはポケットから小さなノートを取り出し、陸の顔に向けてペンを構えた。陸が顔をしかめる
と、ノートに何かを書いた。
「困惑の表情:眉間の皺三本、口角下がり七ミリ。記録しました」
「
……やめろ」




