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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第3章 港町パディス

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51. 子供の成長は早い 1

ルルフェルは、パキッと自分の前に、A4サイズくらいのバリアを作った。


「最近は足場としてばかり使ってて、あまりバリアとして使うことはないんだけど……ってお前らが穴から出てきた時にリダスの斧防いだか。使ってたわ」

「…………」

コンコン、とリザリオが興味深そうにバリアを叩く。


このバリアはルルフェルの魔力を練って作られている。

沢山の魔力を込めればそれだけ堅くなるし、感覚の問題としか言いようがないのだが、ぐんにゃりした魔力を込めれば、トランポリンのような使い方や、攻撃を吸収するタイプの防御をすることも可能だ。

それなりに使い勝手のいい、便利な力で、ルルフェルは気に入っている。


「俺は防御特化型なんだよね」

ルルフェルがバリアの真ん中に爪を立てて割ると、バリアはパキリと音を立てて消えた。

狼の見た目から、スピード特化の超攻撃型に思われがちだが、実は女神から力を貰った時からフェンリルは防御型である。


(うろ覚えだけど、確か最初は女神様を守りたかったから、この力を望んだんだよねえ)

ルルフェルは目を閉じて嘆息した。


(まあ防御特化型とはいえ、普通の攻撃力も普通より全然高いから、あんまりそうは感じないけど)

ルルフェルは暗い気持ちを吹き飛ばすべく、ブルブルと身体を揺すった。

そしてバリアが消えたことに少し残念そうにしていたリザリオの方を向く。


「リザリオのスキルは?」

「……傀儡師」

リザリオは言いながら両手を広げた。

するとどこからともなく、手作り感のある笑顔が描かれた木の人形が何体か空中に浮かび上がる。


「おお!中々レアなんじゃないか?」

ルルフェルが興味深そうに人形を眺めていると、ククルトゥスが頷いた。


「世間からは勝手な思い込みであまりいいイメージのないスキルだけど、めちゃくちゃ便利なんだよ」

そんなククルトゥスを見てリザリオがじとりと半目になる。


「…………隊長は、人使いが、荒い」

「敵に見立てて訓練するのに丁度いいんだ。そう言うなよ。そうだ、紺少年!俺以外にもリザリオとセブンにも鍛えてもらうといい。2人とも強いぞ!まあ俺よりは弱いけどな!」

セブンがムッとした顔をする。


「事実だけど一言余計なんですよ、貴方は!」

しかしすぐに表情を変えると、笑顔で紺くんの方へ振り返った。


「でもいいですよ、手合わせならいつでも受けますので遠慮なく言ってね」

「…………手伝う」

セブンとリザリオの言葉に、紺くんは目を煌めかせた。


「ありがとうございます!」

ガバリと再びお辞儀をした紺くんを見ながらセブンが聞いた。


「そういえば、紺くんの身内に多いスキルや、スキル系統は何ですか?スキルって大体血で決まりやすいですからね、ある程度だったらスキルを授かる前でも方向性は定められると思います」

紺くんは悲しそうに目を伏せた。

そのままゆっくり首を振る。


「ごめんなさい。僕孤児なんです」

(育てのお婆さんは血縁者じゃないこと伝えてたのか)

ルルフェルはふと思ったが、既に亡くなって久しいはずのお婆さんの存在を自分が知っているのは前世のおかげなので、黙っていた。


「そっか、ごめんね」

セブンが申し訳なさそうに謝ると、紺くんは再び首を、今度は勢いよく振った。


「僕は大丈夫なので!でもそうですね、できれば戦闘系スキルがいいな〜とは思います」


途端にワッと大人たちが盛り上がった。


「剣士系オススメですよ!」

「万が一職人系でも仕事には絶対ありつけるからな、そう凹まずにな」

「まだわからないでしょう!今からそんなこと言わないの!」

「スキルをもらうまであと何年だ?楽しみだな〜」


紺くんたちはきゃっきゃスキルについての話題で好き勝手盛り上がっている。


(テイマーなんだよなあ)

そんな中、ルルフェルは1匹、遠い目になった。


――――――

「オラオラオラオラ!」

「まだまだできます!」

しばらく休憩したのち、ククルトゥスと紺くんの修行が再開された。

2人がルルフェルたちの観戦する中、先程よりも激しく打ち合っている。


……だが様子がおかしい。


「……あれ?紺くん……強くなってない?」

「……なって……ますね……?」

「…………ん」


紺くんが先程よりも明らかに強くなっている。

突然レベルアップしたというわけではない。


「ちゃんと、学習してる……!」

先程一撃を入れられた脇腹をククルトゥスが狙っても、しっかり防いでいる。

さらに別の場所にそのあと攻撃を喰らっても、2度目はないのだ。

なんならククルトゥスに時折防御の態勢を取らせている。


(あれれー?おかしいぞ〜?ククルトゥスって一応元皇子サマ付きの強い人だよね……?)

ルルフェルの眉間に皺が寄った。

もちろん手加減はそれなりにされているのだが、にしてもだ。


「いや、学習能力高すぎませんか?」

「それなぁ……」

セブンがちょっと引いている。

だがルルフェルもセブンの気持ちはよくわかった。


(主人公チートすぎるだろ、強くなるのが早すぎるってばよ……!)

恐らくこれまでの紺くんの弱さは、師となる存在、自分より強者の存在の不在によるものだったのだろう。

今やククルトゥスという手本をしっかり吸収し、メキメキと実力を上げている。


先程はワイワイやじを飛ばしながら見ていた観戦者たちが、今は皆、息をのみながらじっと真剣な眼差しで訓練の様子を見守っている。


バリバリ殴り合ってる2人を、ルルフェルも少し引いた目でしばらく静観していたのだが。


「ちょっとストップ」

「ッ!」

「え!?」


ククルトゥスがつい熱くなってしまったのだろう。

思い切り力のこもった1撃を紺くんの顔に入れようとしたので、パッと2人の間に割って入った。


ククルトゥスは上半身裸なので、紺くんの方の服の首根っこを咥え、ククルトゥスの攻撃から逃す。

ルルフェルはそのまま紺くんを自分の背中に乗せると、ククルトゥスの方を見た。


「それはやりすぎ」

「う……すまん」

ククルトゥスは自分の頭をボリボリ掻いた。


「すごいですね、ルルフェルさんが動いたの見えませんでしたよ」

慌てて追いかけてきたセブンが驚きながらルルフェルの方を見た。

だがルルフェルは紺くんの方を見ていた。


「紺くん、次頭に攻撃が来た場合、こう、腕を回して避けるといい。あとね……」

ペラペラと鼻先で紺くんの手足を動かしながら熱心に指導する。

恐らく観戦していた時から色々口を出したかっただろうというのが丸わかりである。


紺くんもルルフェルに指導してもらえるのが嬉しいのだろう。


「はい!はい!」

先程よりも目にメラメラとした闘志が宿り、やる気十分だ。


「なんでえ、ちゃんと教えられんのかい」

それを見たククルトゥスは腰に手を当て、ニヤリと笑った。


「まだまだ強くなるな、紺少年は」


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