49. なるほど主人公
光る通路から、墓場の空間に戻ると、ククルトゥスとリダスが闘っていた。
ククルトゥスは剣を、リダスは斧を、それぞれ持ち、キンキンと金属音を響かせている。
その周りにあとの全員が各々立ったり座ったりして、時折ヤジを飛ばしながら、観戦している。
「見たい見たい」
ルルフェルはいそいそと近づこうとしたが、その時丁度ククルトゥスがリダスの斧を斬り飛ばし、ブルーファントムの面々からは「あ〜」という残念そうな声があげられたところだった。
「あんた強いな!参ったよ」
「お前も中々やるじゃないか」
リダスとククルトゥスが、ガシリと熱い漢の握手を交わし、離れる。
「何してたの?」
ルルフェルがみんなと同じように観戦していたセブンに話しかけると、セブンはにこりと笑った。
「ククルトゥス隊長は戦うのが好きで、こうやってよく人と手合わせするんです」
「あーね」
そういえば自分にも勝負を挑んできたっけ、と思い出す。
セブンが指を1本口の前に立て、声を顰めた。
「でも、大声では言えませんが、恐らくまだ隊長は満足できていないので、これから夜の特訓が始まりますね」
セブンは首を振ってため息を吐いた。
「特訓ですか?」
紺くんが聞くと、セブンが頷く。
「僕たちは、軍に所属してたころからの習慣で、朝と晩に必ず基礎練はするんです。ただ隊長は他の人よりやる量が多いと言うか……熱血なんですよね」
「へえ」
「特に戦闘のあとのテンションが高い時なんて、全力で発散しないと寝れないみたいで」
セブンの言った通り、リダスたちブルーファントムの面々は既に座って休んでいるのに対し、ククルトゥスは何故か上着を脱ぎ捨て、フンフン素振りを始めている。
その身体からは湯気が出ており、見ているだけで暑苦しい。
「おい、セブン!リザリオ!来い!一緒にやれ」
笑顔で呼ぶククルトゥスをひとまず無視し、セブンはルルフェルの方を振り返った。
「今日はもうここから動きませんよね?」
「そうだな、そのつもりだ」
ルルフェルがそう言うと、セブンは分かりました、と頷きククルトゥスの方に小走りに駆けて行った。
「ルルフェルたちもどうだ!?むしろ一戦やるか!?」
剣をブンブン振りながらククルトゥスが叫んできた。
「いや……」
「あの、でしたら僕と一戦お願いしてもよろしいでしょうか?」
「ええぇええ!?」
断ろうとしたルルフェルの隣にいた紺くんが、ククルトゥスに向かって真っ直ぐお願いしたので、ルルフェルは慌てて紺くんの方を見た。
「お?いいぞ!」
一方ククルトゥスは、予想外の挑戦者にワクワクしながら頷いている。
「大丈夫なの?痛いかもしれないよ」
ルルフェルは、紺くんの顔にマズルを近づけてそっと呟いた。
「それでも行きたいです!」
心配そうに自分を見るルルフェルを、紺くんは大きな目で真っ直ぐ見つめ直した。
そしてそっとルルフェルの鼻先におでこをつけると、
「僕はルルフェル様のために強くなりたいんです」
と言ってククルトゥスの元へ駆けて行った。
(…………え!?ちょっと待ってよ、なによそれ〜!!!!!)
あまりにもさりげないタッチでルルフェルは反応できずに数秒固まったまま、紺くんを見送ってしまった。
今人間の姿をしていたら、居た堪れなさで両手で顔隠していただろう。
まだまだ弱いくせに、ポテンシャルの高い人間特有のできる雰囲気というのだろうか?に少しでも当てられてしまったことに、ぶすくれる。
(あ〜流石主人公サマオーラですわ……子供の成長って早い!この……!魔物タラシ!俺に発動しかけるんじゃね〜!怖い怖い)
フン!と軽く息を吐き出し、のしりと床に尻をつけると、ルルフェルは紺くんとククルトゥスの勝敗の行方を見届けることにした。
(まあボコボコにされたらヒールはかけてあげないと……)
――――――
墓場の真ん中辺り。紺くんはククルトゥスの前に立っている。
「よろしくお願いします!」
そう言ってガバリと頭を下げた紺くんを、ククルトゥスたちは興味深そうに見つめた。
「強くなりたいんだな、少年……!」
そう言ってククルトゥスは紺くんの肩に手を置いた。
なんだか師匠ヅラをしており、いつもより顔が濃い気がする。気合いの入り方の問題だろうか?
「はい!」
紺くんが返事をするとククルトゥスは肩に置いた手にグッと力を入れた。
「素晴らしいじゃないか!一緒に強くなろう!」
そう言うと、ククルトゥスは腰につけていた剣を外すと、傍においた。
「その年齢だとまだ職業スキルは授かってないんだろう?ならば体術メインだな」
ククルトゥスはぬんっと自らの筋肉を盛り上げさせる。
「好きなところからかかってこい!」
「はい!」
紺くんがククルトゥスに向かって突進し、激しい打ち合いが始まった。
「彼、なかなかやりますね……!」
「…………」
観戦しにルルフェルの方へやってきたセブンとリザリオが話しかけてくる。
セブンの言葉に、リザリオがこくこくと頷く。
「そうねえ」
実際、ルルフェルが思うよりも紺くんは強いみたいだった。




