47. スティングホースは食べると美味い
食事後。
「ご飯食べると元気が出るよね」
「ああ、今なら……ッ」
シャシャ!とリダスが空中に向かってシャドウボクシングをした。
「なんでも倒せそうだぜ!」
ガララ……
ドンピシャなタイミングで、墓地の壁の外から石同士がぶつかる音が聞こえてきた。
恐らく外に通路があるのだろう。
「なんだ!?魔物か!?」
ルルフェル達とブルーファントムは戦闘に備え、身構える。
ルルフェルが1歩前に進もうとしたら、リダスがそれを止めた。
「神獣様には命と飯の恩がある。ここは任せてほしい」
ルルフェルは頷いた。
「出るならどんな魔物なんですか?」
紺くんがヒソヒソと1歩下がったルルフェルに聞く。
「ええと、洞窟の中にある墓地だからね。出るなら人の骨が歩き始めたスケルトンとか、吸血してくるコウモリ型の魔獣か、グロウディアかな。グロウディアは青白く発光している鹿の魔獣だ。肉体がほぼ腐って崩れ落ちてるんだけど、骨は綺麗に光ってるから、遠目からだと神秘的に見える」
「来るぞ!」
リダスの言葉と共に、墓地の壁が勢いよく崩れ落ちた。
「ん?」
「はぁあああ!いくぞ!」
「えっなんだ!?」
砂埃で視界不明瞭な中、様々な声が一気に飛び交った。
「っぶね!」
ルルフェルがブルーファントムの前にバリアを作り出す。
「でやぁっ!」
その直後、リダスの斧がバリアに勢いよく当たり、弾き返された。
「な!?急になにすんだよ!」
斧を当てられかけたククルトゥスは驚いて叫んだ。
「ククルトゥスさん!?」
紺くんが叫び
「人!?知り合いか!?」
驚いたリダスは、紺くんとククルトゥスを見比べた。
アォーン!ルルフェルは一度短く遠吠えをすると、ルルフェルを見て固まっている皆を見下ろす。
「とりあえず一度落ち着こう」
ルルフェルはバリアを消し去ると、腰を下ろした。
「全員味方だよ」
――――――
壁の向こう側の通路からやってきたのは、ククルトゥスとセブンとリザリオの3人組だった。
「わぁ!スティングホースだ!」
その姿を改めて見て、紺くんが驚きの声を上げた。
ククルトゥスたちは、それぞれが立派な体躯の黒い馬に跨っていた。
馬特有のしなやかで美しい筋肉に、サラサラとしたたてがみ。よく手入れがされているようだ。
そして何より特徴的なのは、頭部と、両肩と、左右の腰上辺りに生えている鋭い角だろう。
スティングホースは、文字通り自らの角を使って攻撃する。
角は全部で5本あり、頭部の角は全身を露出させているが、他4本は9割が肉の下に仕舞われている。
ぱっと見ユニコーンに見えなくもないので、定期的にユニコーンと間違えた人がスティングホースに刺される事故が起きている……これはあとでルルフェルが魔物図鑑で見た情報だ。
スティングホースは一般的な馬より忠誠心が高く、身体も大きく、スピードが出る。
その為、昔から貴族や兵士などに人気の高い種類の馬だ。
「ミヒヒ」
「どうも」
ククルトゥスのスティングホースがルルフェルに挨拶をしてきたので、鼻先をちょんと馬の頬につけて返す。
紺くんからキラキラした突き刺さるような目線を感じるが、ルルフェルはあえて無視した。
ククルトゥスたちが馬から降りると、ククルトゥスの腹が盛大に鳴った。
「お前もか」
ルルフェルはチベットスナギツネの顔になると、3人にもブッチャートの料理を振る舞った。
大量に仕入れたつもりだったが、残量を考えると、読みが甘かったかもしれない。
ククルトゥスたちが食事している間に、ブルーファントムにルルフェル達との関係性を、所々隠しながら説明したら、納得してもらえたようだった。
「ははあ、だからスティングホースに乗ってるのか」と美しい3頭の馬を見ている。
「いや、馬に乗ってくるのは知らなかったな」ルルフェルがククルトゥスたちをちらりと見たら、「徒歩じゃ追いつけないだろ。疲れるし」とごもっともなことを言われた。
そのスティングホースたちは……倒れてぐったりしている。
真ん中に紺くんがいるので、お得意のマッサージで陥落させられたのだろう。
(いっつも手が早いんだから!)
ルルフェルは、フン!と短く鼻息を吐き出した。




