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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第3章 港町パディス

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46. 温かいご飯はとっても大事

「いやあ、神獣様かあ……一生分の運を使っちまった気分だな」

ブルーファントムのリーダー、リダスは染み染みと呟いた。


あのあと、公平な話し合いの末、ドロップ品は半々で分けることになった。

ブルーファントムは、自分たちは何もできていなかったし、命の恩人だから、とルルフェルたちに全部譲ってくれようとしたのだが、ルルフェルがなんとなく後ろめたく感じ、半々で手を打った。


(半分でも結構なお金になりそうだしね!)

ルルフェルはそう考えながら、ブルーファントムのメンバーたちと協力して、そこらじゅうに散らばって落ちているドロップ品を拾う。

地味に面倒くさい作業だが、お金を拾っていると思えば、スイスイ身体が動くのだから、不思議である。


「でも本当に助かったよ」

ルルフェルがドロップ品を、一度集める為にアイテムボックスへ入れていると、リダスが口を開いた。


「今メイリンの森って魔物が極端に減っているだろう?この稼ぎがなけりゃ飢え死にしてるとこだった」

「大赤字間違いなしだったわよ〜」

リダスの言葉に、パーティーメンバーの聖女が同意する。


「ああ、そういえばなんでこんなに魔物が少ないんだ?」

ルルフェルが聞くと、リダスは眉をハの字にした。


「そうか神獣様は魔の森にいたんだもんな、そりゃ知らないか」

リダスはドロップ品の内の1つ、青い宝石を手で弄りながら説明し始めた。


「全ての異常はパディスの海から始まったんだ」


リダスの説明によると、以前の港町パディスという場所は漁業の盛んな活気に満ち溢れたところだったという。

遠方の海に多少の魔物や海賊の出現はあれど、概ね平和だった。

更に、ゴールドランクの冒険者パーティー、ポセフィス率いるシーガーディアンがパディスを拠点にしており、問題にすぐ対処できていたのも、大きい。


しかし数ヶ月前、海に出る魔物の強さが一気に上がった。

海賊も手強くなった。

段々自由だった海が、魔物と海賊に支配され、漁に出ることが難しくなった。

街の人々もシーガーディアンも、必死に抵抗していたが、状況は悪化していく一方だった。


トドメは、シーガーディアン行方不明の知らせによって刺された。

パディスの守護神とも言われていたゴールドランク冒険者、ポセフィスたちの敗北――

街の人々、そして冒険者たちの心を折るには十分すぎる情報だった。


海から、人が消えた。


「てな訳で、パディス周辺にいた冒険者たちはこぞってメイリンの森に詰めかけたんだよ」

リダスは頷いた。


「でもここも狩られ尽くされてるみたいだから、しばらくしたら冒険者は激減するだろうな」

「へえ、そんなことが……」

ルルフェルは呟いた。


リダスの話にはメレディス……パディスに住んでいる神獣仲間の話はなかった。

ルルフェルに気を使って黙っているのかもしれないが、もしメレディスが大暴れしているのなら、同じ神獣のフェンリルに、もっと警戒しているような気がする。


(メレディスの件については現地に行ってみないと分からないか)

ルルフェルはふうと鼻から息を吐いた。


ぐううぅうううううう


「あっ」

リダスの腹が盛大に鳴った。

墓地内にいる全員の視線を集めてしまい、大の男(むさ苦しいタイプ)がペロリと舌を出して「てへ」と笑う。

だがすぐに、「は〜アンデッド系の魔物が食べられたら良かったのに」と床に残されたリッチの布切れを見ながら、肩を落とした。


「食えたら食えたで、共食いかそうじゃないかで意見が分かれそうだけどな」

ルルフェルが肩をすくめたが、肉がないのを残念に思ったのは同感だった。


「そろそろ飯時だし、何か食べるか?」

今は恐らく夕方5時辺り。

少し早いかもしれないが、夕飯にしてもいいだろう。


ルルフェルはアイテムボックスからブッチャートの店で包んでもらった肉料理を引っ張り出した。

途端に墓地内に芳香な香りが充満する。


「ああぁああああ……」

ブルーファントムの面々は思わずルルフェルの手の中の料理に釘付けになった。


「全員分あるぞ、良かったら取りに来てくれ」

そう言いながら、ルルフェルは空中にカウンターのようにして浮かべたバリアの上に、料理を並べていく。


実は昨日、ブッチャートにお願いして、大量のテイクアウトを注文していたので、料理の在庫はまだまだある。

ブッチャートというより、レストランの従業員たちが嬉しい……か追加の仕事が大量に舞い込んだ恐怖のかはわからないが、悲鳴をあげていたので、手間賃としていくらか追加で払って手に入れた品々だ。


せっかくの美味しそうなメニューを全種類食べれなかったのを残念に思ったのと、便利なアイテムボックスがあるのだし、道中を少しでも楽しくしたかったことによる爆買いである。

またルルフェルが一気に卸した肉が大量に余っていたのもあり、お互いwin-winにできた。


アイテムボックス内では時間の経過がないので、出てきた料理は出来立て熱々である!


「このご恩は……!このご恩は絶対に……ッ!」

「ここ数日ずっと干し肉齧ってたから嬉しい〜!ありがとう〜!!」

「いくらですか?払わなきゃ……」

各々感謝の言葉を述べながらブルーファントムの面々が肉料理を手にしていく。

ブルーファントムメンバーが、カウンターから料理をもらっていく社員にみえてきてルルフェルは少しだけ食堂のおばちゃんの気分になった。悪くない。


最後に紺くんに「これは君のね」と柔らかめの肉料理を渡してから、自分の分を出す。


いただきまーす、と口を開けて食べようとしたところで、ルルフェルは自分を除く全員がルルフェルのことをじっと見ていることに気がついた。


「……ん?」

「いや、申し訳ない、神獣様が食べ始めたら食べようと思ってな」

ぐうぐう腹を鳴らしているリダスの言葉に、他のブルーファントムのメンバーたちも、ウンウンと頷く。

ルルフェルは肩をすくめた。


「こういうときはお互い様だし、気にしないで。俺が人喰い狼じゃないってわかってくれたらそれでいいよ」

ほんの冗談のつもりだったのだが、ブルーファントムのメンバーは「神獣様はなんて慈悲深いお方なんだ……ッ!」と泣いてひれ伏し始める。


「や〜めろ〜やめなきゃ食べ物没収だからな」

ルルフェルが唸ると、全員がサッと姿勢を正し、声を揃えた。


「「「「「いただきます!」」」」」


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