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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第2章 城壁都市ココラス

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42. さよならヴァンドラまた会う日まで

任務の報告や、先に帰還している、負傷した冒険者達の様子を見に行かなければならないと言い残し、足早に去っていくエリックと、そのあとを追いかけて行ったブッチャートを見送ったあと、ルルフェル達はココラスを発つことにした。


「僕はエリックが不在の間ここを任されてただけだし、僕もパディスに向かおうかな」

ヴァンドラはそう言って、ふと自分のドラゴンの方を見た。


「ちょっと!」

ドラゴンはぐったり地面に寝そべっており、その顔は心なしか幸せそうだ。


「どうしたっていうのさ」

「きっと紺くんのマッサージだ」

ルルフェルは真剣な顔つきでヴァンドラに伝えた。


「あの子のマッサージは……やばい」

ヴァンドラが信じられない、という顔でルルフェルを一瞥した。


「そんなに?」

「そんなに、だ」

(なんてったって将来星5テイマーの潜在能力があるからな)

ルルフェルが腕を組みながら真剣な顔で頷くと、ヴァンドラが「ああ、」と呟いた。


「ルルフェルもあの時とろけてたもんね」

ルルフェルの眉間に深い深い皺がメキョリと寄った。

ヴァンドラは支部長室のソファでの撫でられについて言っているのだろう。


「形は保っていただろう!でもそれは記憶から消しておいてくれ」

(ぃいや〜ッ!どんな無様な姿晒してたの俺!!?)

脳内でルルフェルが転げ回った。


2人が話していると、どうやら自分のことを話されていると気がついた紺くんが、ドラゴンの腹辺りからひょっこり顔を覗かせる。


「あ、すみません。なんか色々凝ってそうだったので、マッサージしてました」

ヴァンドラとルルフェルの視線に気がついた紺くんは、ヴァンドラさんのドラゴンさんに、勝手にすみません〜!と慌てた様子でルルフェルの元へ駆け寄ってきた。

一方、マッサージを中断されたドラゴンの方は、不満げに首を持ち上げ、低く鳴いた。


「おまえさん、そんなに気持ち良かったの」

ヴァンドラはドラゴンに近づくと、グッグッと押し込むように数度撫でた。


「ドラゴンって皮膚硬いから結構な力で撫でないと気に入ってもらえないんだけどな……」

そして興味深そうに紺くんの方を向く。


「君、ドラゴンには初めて触ったんだよね?そもそもドラゴンって普通触られるのを嫌がるのに……ひょっとしてすごい才能でもあるんじゃない?将来、例えばテイマ「ヴァンドラ!そういえばあの“お願い”、いつ頃用意できそう?」」


突然大声を出して自分を遮ったルルフェルに驚き、ヴァンドラは数度ぱちくりと瞬きをして固まった。

だが「ああ、皇子のお礼のあれね」と肩の力を抜くと、少し思案する。


「そうだね、今日僕が発ってパディスに向かうとして……ええと、準備自体は2週間後には確実にできてると思うよ」

それで大丈夫?と首を傾げたヴァンドラにルルフェルは頷いた。


「了解した。いや、思ったより早かった。ありがとう」


(あぶな〜い!テイマーとしての意識が芽生えちゃったらどうするのさ!)

落ち着いた声で返事をしつつも、ルルフェルの心臓は焦りでバクバクである。


「僕が先に行って、向こうのギルド長に君のこと伝えとくよ。きちんと対応できるのは2週間後になるけど、とりあえずパディスに着いたらギルドに向かって」

「分かった。ならパディスに着くのを2週間後に調整する」

「そうしてもらえるとありがたい」


ヴァンドラは、グル、と気持ち良さそうに身体を伸ばし、長い首をふるりと揺すりながら立ち上がったドラゴンの背中に、ひょいと跨った。


「じゃ、またどこかで」

ドラゴンが翼を上に向かって大きく広げる。

ルルフェルが紺くんの前にサッと立ち塞がった。


ブワリ!


ドラゴンが羽を力強く振り下ろした。

突風が巻き起こり、たった一度の羽ばたきで、その身体は一気に上空へと向かう。


バサ、バサ、バサ!

数度ゆっくり羽ばたきをしながら十分な高度まで上昇すると、ドラゴンは優雅にくるりとココラスの上を1回旋回し、真っ直ぐに飛んでいった。


「流石ドラゴン、やっぱり飛べるって早いね」

ココラスの高い城壁に阻まれ、その姿が見えなくなるまでヴァンドラたちを見送っていたルルフェルが口を開く。


「すごい風でしたね……!」

その後ろから、ルルフェルの髪に絡まった紺くんがひょこりと顔を覗かせた。

ルルフェルが前に立ってくれていなかったら、風圧で吹っ飛ばされていただろう。


「ありがとうございます」

「どういたしまして」

ぽん、と軽快な音を立てて、ルルフェルは狼の姿に戻った。


「じゃ俺たちも行こうか。せっかくだからここから狼のまま行こう、歩くと時間かかるし」

「ちょーーーっと待ったーーー!!!」

背後から声が聞こえ、ルルフェルは半目になった。


「早く乗りな」

声を完全に無視したルルフェルが、オロオロ困っている紺くんを促す。


「待てって言ってるだろが!」

室内から飛び出してきたククルトゥスが慌ててルルフェルの前に立った。


「なんだよ、別に一緒に行動しなきゃダメとかじゃないんだろ?」

ルルフェルはちらりとククルトゥスのあとから屋上に出てきたセブンとリザルトを見やった。


「3人乗せると紺くんが潰れちゃゃうよ」

一応、身体の大きさを変えれば余裕で乗せられるだろうが、あまり気分は進まない。


「どうせパディスに行くまで約2週間時間を潰してないといけない。のんびりめで行ってるからさ」

ルルフェルは鼻で紺くんを自分の背中に押し上げると、ギルドの屋上から飛び降りた。

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