41. ギルド ココラス支部長 2
「えふむ、ええっと、取り乱してしまい、申し訳ない」
咳払いをすると、エリックは鎧についた芝生をはたき落とした。
そしてそのままヴァンドラの方へ振り返る。
「とりあえず神獣様のことは置いておいて……。ギルド長、話したいことが沢山ある。いいだろうか」
「第1皇子と4人の護衛たちのことかな?」
エリックは声を顰めてヴァンドラに話しかけたのに、ヴァンドラが通常の声の大きさで応えたから、ガチャン!と鎧を鳴らしながら飛び上がって驚いた。
「なっ、ばっ、それは……!」
大慌てでルルフェルとヴァンドラの顔を見比べたエリックは、混乱している。
「実は皇子や皇子の護衛についても、このルルフェルが絡んでいるんだよね」
「故意にじゃないぞ」
名指しされたルルフェルは、一応断っておいた。
ルルフェルがその後のヴァンドラとエリックの話を聞くに、エリックは王の命令により、魔の森に入った皇子達の後をこっそり追って護衛する任務についていたらしい。
なんとも過保護な王だ、とルルフェルは呆れた。
最初の時点でその護衛の任務についたのは、ギルド支部長であるエリックと、10人の選ばれた冒険者たちで、一緒にパーティを組んで行動していたらしい。
だがエリックたちは途中で恐ろしく強いホーンタイガーに出会ってしまう。
あのルルフェルに倒された個体だ。
ホーンタイガーによりパーティは瓦解、冒険者5人が重傷を負い、ココラスへの帰還を余儀なくされた。
また更に運の悪いことに、戦闘の間に皇子達一行と離れすぎてしまい、皇子達の所在が分からなくなってしまっていた。
だがみすみすホーンタイガーを取り逃したまま、王命を途中で投げ出すわけにはいかない。
その為比較的傷が軽いエリックが名乗りをあげ、魔の森で皇子達を探す為に1人残った。
「で、エリックが捜索中に、皇子はルルフェルに保護されたってことだね」
「だろうな」
ヴァンドラが言い、ルルフェルが頷いた。
エリックにとっては、なんともタイミングの悪いことだ。
「逸れた護衛達は見つけられたのか?」
ルルフェルがエリックに問いかけたが、答えはある程度予想していた。
わらわら逃げていく後ろ姿を思う限り……
「いや」
案の定、エリックが首を振った。
「正確に言えば見つけられはした。4人中3人は、魔物に喰われて死んでいた。いつもだが、遺体は酷いもんだったよ……残ってる部分を探すのが大変だった」
少しの間、哀れむような表情を浮かべていたエリックだったが、先程ヴァンドラから聞いた話を思い出し、怒りをあらわにした。
「まさか裏切り者だったとはな!」
「あと1人は?」
ルルフェルが首を傾げると、エリックは肩をすくめた。
「なにも。だが様子を聞く限り生きてはいないんじゃないか」
エリックが残念そうに首を振った。
「全く……その残りの1人と皇子の遺体が見つからないから、2人は生きててココラスに向かったんだろうと思って捜索を切り上げてきたのに」
ちらりとルルフェルの方を見る。
「まさか神獣様に保護されてるなんて分かるはずがない」
ルルフェルが肩をすくめたまま、特に何も言わないでいると、エリックは軽くため息をついた。
「いや、でも皇子が生きていてくださったのが何より嬉しいよ……」
そしてルルフェルに向き直り、両手でルルフェルの手をがっしりと力強く掴んで頭を下げた。
「皇子助けてくれてありがとう」




