34. ヴァンドラとの打ち合わせ 2
「え?」
ルルフェルが首を傾げた。
「公表って?誰に?」
「みんなにだよ」
ヴァンドラが指をスッと1本立てた。
「まず今回市民がパニックになった理由。それはルルフェルを知らなかったからだ。自分たちの頭上を舞う謎の巨大な狼なんて恐怖の対象でしかない」
「それは……申し訳なかったと思っている」
しゅんとルルフェルが項垂れた。
いくら緊急事態だったとはいえ、街に混乱をもたらしてしまった。
「だから怖がられないようにする為には、君が怖くない、優しい狼なんですよ〜って知ってもらえればいいんだよ」
「えぇ?」
「確かに狼の魔獣ってだけじゃ安全性を疑う人もいると思うけど、君は神獣だ。神獣といえば、魔王から世界を守った英雄でしょ?だから君は神獣で、人の味方なんだって言えば、むしろ君を見たらみんな喜ぶようになるんじゃないかな?」
にこりとヴァンドラが笑みを浮かべた。
「ルルフェルさえ良ければ、ギルドがある場所で、君に関する記事を号外で発行しようと思うんだけど、どうかな?」
ルルフェルは考え込んだ。
「号外か……確かに、俺に人に敵対する意思はないって知ってもらえるのは助かるな。それに俺はもう神獣って隠すつもりもない。ふむ」
「どう?」
ルルフェルはヴァンドラの方を向いた。
「情報を広めてもらえるのは助かる。ただ、それは俺が狼の姿で走っても混乱を起こさないようにする為のものだ。だからその記事には、俺が人間になれること、そして身体の大きさを自由に変えられることは記載しないでほしい」
「わかった、書くのは狼の時の姿のことだけにしよう」
ヴァンドラとルルフェルはお互いに頷き合った。
「号外?」
紺くんが首を捻った。初めてきく言葉らしい。
「記事を無料で街中にばら撒くんだよ」
ルルフェルが補足すると、紺くんは「無料で!?」と目を丸くした。
そんな紺くんを見て、ルルフェルはヴァンドラに向き直る。
「条件1個追加だ。紺くんのことも書かないでほしい」
ヴァンドラは頷いた。
「りょーかい。君が人間と行動してるって知ったら、お偉方さんたちは自分もお近づきになりたいです〜ってこぞってやって来るだろうしね」
(……それは想像だにしたくない事態だ)
ルルフェルはつい半目になってしまった。
ヴァンドラはふっと笑うと指を2本立てた。
「もちろん号外の費用はこちらが持つ。ただこちらからも条件が2個ある。まず悪の組織を壊滅させたのは君だけど、ギルドも……まあ後処理ではあるんだけど、手伝ったってことは書かせてもらうよ」
「それはもちろん大丈夫だ」
ルルフェルは頷いた。
ギルドにとってもルルフェルにとっても、今回のことは悪人とは敵対する意思を持っていることを示すと共に、共通の敵がいれば手を組むことがあることを示している。
ルルフェルは1人の冒険者として、ギルドに登録している身である為、悪用さえされなければ進んでこれからもギルドに手を貸すつもりだったので、問題はない。
「もう1つの条件は?」
ルルフェルが問うと、ヴァンドラは「うーん、君も気にはなってるだろうから、呼んだ方が早いかな?」と言いながらルルフェルたちにひとこと断りを入れると、部屋のドアを開け、室内に3人の男を招き入れた。
「ええと、あんたは……」
そのうちの1人、ククルトゥスは目をぎらつかせながらニヤリと笑った。
「どうも、ルルフェルさま。お昼ぶりだな」




