表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第2章 城壁都市ココラス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/34

29. 子供から目を離すな 3

「もう少しで着くわ!」

「あの広場か」

しばらく走っていると、ルルフェルたちの目の前に、建物に囲まれた広い広場が見えてきた。

開けており開放的ではあるものの、周りの建物はギルドの側にあったような綺麗なものではなく、色褪せ廃れており、どこが影がかった雰囲気だ。広場を歩く人々の服装も小汚く、まともな生活を送っていなさそうである。


ルルフェルは音もなく建物から建物へと飛び移り、広場を囲う中で1番高い建物の上に立つと、辺りを見渡した。


「キーリ、君に手をあげた男たちはいる?」

「……ッ、わからない……」

一生懸命目を凝らしてくれてはいるが、目当ての人はここには既にいないみたいだ。

この先は紺くんの匂いを探すしかないか、そう思いルルフェルが建物から降りようとすると、「あ!」とキーリが1人の男を指差した。

その男はぐったりした少女を肩に抱えて歩いている。


「あれエリーだ、どうしよう、エリーも捕まっちゃったんだ」

「知り合いか?」

ククルトゥスが問うと、キーリはガクガク震えながら頷いた。


「最近人攫いが増えてきてるの……みんな売り飛ばされちゃう」

エリーを抱えた男を目で追ううちに、ルルフェルは彼がとある建物に向かっていることに気がついた。

ぱっと見古いだけで、なんの変哲もないシンプルな建物だが、中にいる人の気配が多い気がする。


(もしかしたら人攫いたちのアジトかもしれないな)

ククルトゥスの方を見やると、彼も同じことを考えていたのだろう。

ルルフェルと目が合うと、ゆっくり頷いた。


ルルフェルはキーリとククルトゥスを建物の上に下ろすと、自分の身体の大きさを犬と同じくらいまで縮めた。

そして湿っている鼻先を、キーリの手にちょんと触れさせる。


「ちょっとアジトに潜入してくる。エリーとやらも、すぐは無理かもしれないが、必ず助けてくるから、安心してな」

「……わかった。お兄さん、よろしくお願いします」

キーリがぺこりと頭を下げた。良い子だ。

ルルフェルがククルトゥスの方に視線をやると、ククルトゥスは「へいへい」と両手を軽くあげた。


「俺はここにいてキーリちゃんを守ってるよ」

「ありがとう」


「にしても潜入ってどうやって……って行っちまった」

ククルトゥスの言葉を最後まで聞くことなく、ルルフェルはぴょんと建物の上から裏の路地へ飛び降りた。

もちろんその都度バリアの板を出しながら落下したので、問題なく着地する。

降りた先の路地裏は舗装されておらす、土が剥き出しだ。


「丁度いい」

ルルフェルはよく犬がしているように、豪快に身体を土の上に擦り付けた。

そのまま土の上でゴロゴロ転がり、キラキラと艶めいていた毛並みを薄汚く汚していく。

その様子を上から見ていたククルトゥスとキーリは「あああ……!」とショックを受けた様子だったが、ルルフェル本人はけろりとしたまま立ち上がると、ブルリと身体を揺すってからアジトに向かって歩き出した。


エリーを抱えた男のあとを気づかれないように追い、男がアジトのドアを開けたタイミングで一緒に中へ潜り込む。

それに気づいた建物内にいた男が、「おいダグお前、犬なんて連れてくんなよ」と声をかけてきたが、ルルフェルには構わず、エリーを抱えている男の方……ダグというのだろう、に近づいていった。

むしろ「え?犬なんて知らねえよ」と返事したダグの方にご立腹のようだ。


ルルフェルは喧嘩をし始めたダグたちには目もくれず、建物の上を目指して男たちの間をすり抜けて進んでいく。

幸いドアが開いていたり、閉まっていても人がいないため人の姿に戻って開けられたり、愛くるしく振る舞ってみせて「なんだ?開けてほしいのか?しょうがないな〜」と開けてもらったりした。


驚くほど順調だ。

まあ最後のだけ、「何馬鹿言ってんだ、間抜け」と別の男が止めたので、その部屋にいた男たちは人の姿に戻って殴り気絶させたのだが。


そっと部屋を移動していき、ルルフェルはとうとう1番上の4階で、重厚に作られている、見張りつきの扉を見つけた。

わざと軽く、ワンワンと吠え、見張りの気を引く。


「犬……!?誰かのペットか?しっしっ」

見張り番がルルフェルを追い払うように手を動かしたので、わざと捕まらない速さで男の足元まで駆け寄り、じゃれつく。


「わっ、なんだおい、やめろ!」

男の足の間をビュンと潜ったり、後ろから押したり。

足元をうろちょろされた男は、ルルフェルの狙い通り、足をもつれさせ、どっしりと尻餅をついた。


「いってぇ……こいつ!」


「何事だ?」

見張り番が手をあげると同時に、重厚なドアが中から開けられたので、ルルフェルはすかさず中に飛び込んだ。

中は特に何もない殺風景な部屋だった。部屋には黒服の男が数人……いかにも悪の組織って感じの厳つい雰囲気を醸し出している。

そのうちの1人は大きめな椅子にもたれかかって座っている。

ルルフェルが犬のふりをして近づくと、50代くらいだと思われるその男は僅かに眉をあげた。


「なんだぁ?犬っころ……こんなとこに迷い込んじまって……下の見張りの奴らは何してたんだろうなあ?」

手を伸ばし、ルルフェルの背中を撫でながら、男は落ち着いた口調で、まるで独り言を言っているかのように呟く。

言い方は穏やかだが、その言葉は静かな怒りを内包していた。

立っている男たちはバッと姿勢を正し、顔を青ざめさせている。

幾度かの目配せを交わしたあと、そのうちの1人が1歩前に出て、口を開いた。


「申し訳ありません、ボス。今カツを入れてきます」

「おぉ、しっかりな」

ヒラヒラと手を振りながらボスが好々爺の笑みを浮かべる。


「この犬っころと待ってるわ、な?」

ポン、とルルフェルの頭の上にボスの分厚い手のひらが乗せられる。

ルルフェルはじっとその顔を見つめると口を開いた。


「お前がボスでいいんだな?」

「「「犬が喋った!!!?」」」


ボスは目を大きく見開いたまま固まり、周りの黒服たちは後ずさって驚いた。


「なっ……な!?」

ボスたちが動けないでいる前で、犬だと思っていた生き物がどんどんでかくなっていく。

やがてその大きさは高めの天井まで届く大きさになり、黒服たちはルルフェルの影に包まれた。


「うちの子、どこやった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ