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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第2章 城壁都市ココラス

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28. 子供から目を離すな 2

「ちょっと落ち着いて、何があったか、最初から話せる?」

過呼吸になりかけている少女の背中を優しく摩り、落ち着かせる。

「あ、あの、ね……」


少女……キーリというらしい、が辿々しく教えてくれた内容をさっくり要約すると、こうなる。


彼女は孤児で、この路地裏の先にある家に帰宅する途中に暴漢に襲われてしまった。

精一杯叫んだら、1人の男の子が助けにきてくれる。


最初少年は善戦し、暴漢に重傷を負わせることに成功。キーリもその間に物陰に身を潜めることができた。

だが暴漢の方も応援を呼んでしまい、多勢に無勢、その男の子は殴られて彼らに連れ去られてしまった。


キーリは追いかけたくても脚に怪我を負っており、追いかけられない。叫び声も、まだ男たちがいる思うと怖くてあげられず、ずっと座り込んでいた……ということらしい。


ルルフェルは眉間に皺を深く寄せた。

この街の治安は思ったより悪いようだ……それに話を聞く限り少年は怪我を負っているし、連れ去られてから時間が経ってしまっている。

色々急いで行動すべきだろう。


「その少年の特徴は?」

「えっと……私より年上っぽくて、紺色の髪の毛だった。あ、あと腰にマフラー巻いてた」

「……知ってた」

全ての特徴が紺くんと当てはまってしまった。


「あ〜別々行動するんじゃなかった、俺の馬鹿」

ルルフェルは爪を立てながら頭を掻きむしると、ふっ短く息を吐き出し、目線を上げてキーリの方を見た。


「その少年がどこに連れて行かれたかわかる?」


キーリはしっかりと頷いた。


「悪いやつらは、その男の子を売ってやるって言ってた。売られる子が集められるところはいつも同じ……ポートマン広場」


――――――



キーリにこれからの計画を説明し終えたルルフェルは、キーリを片腕でひょいと抱え上げると、早足で大通りに戻った。

そして鼻を頼りに、1人の男の元へ、迷わず足を進める。

そのボサボサのワカメのような黒髪を持つ男は、ぱっと見ただ街をぶらついてるだけに見えるが、ルルフェルはその男がある目的を持っていることを知っていた。


「おいあんた」

ルルフェルが男に話しかけると、男は少しビクついたものの、表面上ではにっこり笑みを浮かべながら、ゆっくりとルルフェルの方を見た。


「……俺が、何か?」

「ホテル出た時からずっと俺のこと尾けてるだろう、何が目的だ?」

「……ッ」

時間が惜しく、ズバリと切り込む。

この男の匂いはルルフェルがホテルに出た時から付き纏っていたが、敵意はなさそうだったし、紺くんと別れたときにこちらについてきたので、そのまま放置していたのだ。


男は最初口をつぐんだが、ルルフェルが威圧のオーラを男に向かって放つと、男は焦った様子で両手を上げた。


「おいおい、街中でそんなオーラ出すな……敵意はない、俺は第1皇子の部下だ。何かあったらあんたを守るように言われてる」

ルルフェルは少し肩をすくめた。

男に嘘をついている気配はない。


「そうか。味方ならこの子をしっかり抱いていてくれ。そして上にいるときは脚に力入れとけ」

「えっちょ何、上?ッ……」

キーリをぐいっとワカメ男に押し付けると、ルルフェルは巨大な狼の姿に戻る。


街の道のど真ん中に突如として出現した巨大な狼に、周りにいた人々はパニックになった。

叫び声をあげながら我先にと逃げ惑い、建物の中に避難していく。

だがルルフェルはそんな騒動は一切気にせずに、キーリを抱えたワカメ男をひょいと咥えると、自分の背中に乗せた。


「おわぁっ、って、おい、どういうつもり……」

「2人とも黙ってないと舌噛むぞ」

うまく状況が飲み込めていない男を無視して、ルルフェルは目の前の建物目掛けて一直線に走り出す。


「えっぶつかっ……!」

焦る男の脚にギュッと力がこめられる。だが男が覚悟した衝撃がくることはなかった。

ルルフェルはそのまま正面の壁に爪をたてよじ登り、建物の上に乗ったのだ。


「キーリ、方角を教えて」

「ッ、あっち」

キーリが指した方角に向かって、風のように走る。

頭上をよぎる巨大な影と、そのあとに続く突風が街の人々を驚かせた。

だがやはりルルフェルには他人に構っている心の余裕はない。

建物や通りの上を軽々と飛び越え、減速することなく目的地へ向かう。


「ちょっ……どこに向かってるんだ!?」

訳がわからないまま、キーリのことは落とさないようにしっかり固定している男が喚いた。


「紺くんが攫われた。だから取り返しにいく」

「……ッ、一緒にいた男の子か」

「ああ。恐らくこのままだと売り飛ばされる。俺は止めるために手段を選ぶつもりも手加減するつもりもない」

ルルフェルが前を向いたまま低い声で唸る。

すると男は眉を僅かに上げると、「そういうことか」と呟き、目を怪しく光らせながらニヤリと笑って胸を張った。


「分かった、ならこの第1皇子様直属の部下であるククルトゥスも力になろう!共闘も悪くねえ」

「いや、あんたはその女の子と事後処理を頼む」

「ええっ」


男……ククルトゥスが明らかに落胆した顔になる。

唇を突き出したまま「まあ報告とかはするけどよ……」とぶつくさ言うその背中はしょぼしょぼと縮んでしまった。

そんなククルトゥスの方を、キーリは心配そうにちらりと見たが、何も言わなかった。

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