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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第2章 城壁都市ココラス

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26. ショッピングのお時間です!

食事を終え、遅ればせながらホテルの部屋の中を探検してみる。

豪華な装飾付きのバスルームや個室のトイレはあったが、案の定水道などは無いようだ。

あるのは空のバスタブに、汲み取り式の便所。

風呂に入りたい時は、普通の人だったら、ホテルの人を呼んで、沸かした湯を運んできて貰わねばならないだろう。


(そう、普通の人ならね!)

ルルフェル達はルルフェルの魔法により、バスタブに湯を張り、気持ち良く入浴できた。

風呂から出て、そのまま寝る準備を整え、1人と1匹の姿でベッドにぼふりと倒れ込む。

よほど疲れていたのだろう、ぽつりぽつりと会話をしていたが、2人ともすぐに寝息をたてはじめた。


――――――

翌朝。


「おはようございます!」

「ん〜……おはよ」

紺くんの元気な挨拶に、ルルフェルは牙を見せながら大きくあくびをし、足で耳裏をカリカリ引っ掻きながら返事した。


やっぱり朝に弱い……ルルフェルはブルブルと身体を振るわせてスッキリしてから人の姿になる。

窓から興味深そうに街を眺めている紺くんを見て、子供は朝から元気だなと、再び大きなあくび(今度は手で覆った)をしたが、今日の予定を思い出すと、ルルフェルもぱっちりと目が冴えた。

今日は街に行ってショッピングをする日である!


ルルフェルは本来、ダラダラとあれでもない、これでもないとショッピングをするのは好きではない。

前世の女性の家族や友人といく興味の湧かない買い物の時間は苦痛ですらあった。


だが今回は違う。

手元にはお金と肉と一張羅以外、ほぼ何も無いに等しいので、生活に必要なものを一通り揃えなければならないのだ。


この買い物により、以降の生活レベルが決定すると言っても過言ではないだろう。

また販売品の種類や品質などで、この世界の状態を知る良い機会でもある。

ありがたいことに、この世界への興味とお金はたんまりある。ルルフェルはニンマリ上がる口元を抑えるのに必死であった。


ルルフェルと紺くんはホテルの食堂で朝食(パンと卵だった)を摂ると、早足で街へと繰り出した。


「最初に行くところは決めてあるんだよね」

ルルフェルは紺くんの手を掴むと、人混みをかき分けながらぐいぐいと大通りを進んで行き、一つの店に入った。


「ここ、ここ!子供服が置いてあるお店!」

この店は昨日こっそりヴァンドラに教えてもらった洋服店である。

ここならばサイズが合えば着て帰れる服があり、子供用のサイズも取り扱っていると聞いた時点で、ルルフェルは第一の目的地はここしかないと心に決めていた。


「あら〜いらっしゃいませ!」と顔を赤らめながら出てきたふくよかな女性店主の前に、紺くんをぐいっと押し出す。


「この子用の服を!10着ください!」

「僕のをじゅっ……!!!?」

雷に撃たれたようにびくついたあと、紺くんの顔が見たことないくらい青ざめて萎んでしまった。

漫画だったら目と口が黒い縦の線の集合体で描かれてそうな表情である。


「ぼ、僕の服ですか!?ルルフェルさまのではなく!?」

「そう、君の。あればあるだけいいでしょ!」


ルルフェルと女性店主で勝手に盛り上がり、放心している紺くんに服を着せては脱がし、購入する品を選んでいく。

最終的に約1時間かけて紺くんの服を全て選び終わった。

当初の予定を数枚オーバーし、結局全部で12着!下着などもあったので、もちろんそれも購入した。

カウンターの上にずらりと並んだ品々を見てルルフェルは満足気に息を吐いて額の汗を拭う。


「つい白熱してしまった……服選びでこんなに真剣になったの初めて」

「どれもとっても良い物をお選びですよ〜!」

選ぶ過程ですっかり女性店主と仲良くなってしまい、金額はおまけの1割引きだ!


店を移動するのが面倒だったので、ルルフェルの服もここで購入した。

選び終わったあと正気を取り戻した紺くんが「ルルフェルさまの服ももっと購入されるべきだと!思います!僕が選びたいです!」などわぁわぁ言っていたが、それを横目に「俺はこれでいいや」と適当にシンプルで着やすそうなものと、女性店主さんが勧めてくれたもので着心地のよさそうなものを数着選んで終わる。

紺くんはがっくり項垂れていたし、オススメしたものの、ルルフェルが選ばなかった豪華絢爛な服を両手にかかえている女性店主も残念そうな顔をしていたが気にしない。


紺くんには1番似合った、紺色とよく合う同系色のきちんとした(ここが重要ポイントだ!)服を着せて、残りはルルフェルのアイテムボックスに仕舞う。

これで紺くんはぱっと見、少し良さげな家出身の子に見えるようになった。


この姿を見て、この子がついさっきまでボロ切れのような服を身に纏っていたとは誰も思うまい。


(これなら他人に変な誤解を与えないでしょ!)

ルルフェルはウンウンと頷いた。

紺くんを着飾れば、ルルフェルは周りの視線を気にしなくて済むし、紺くんからの好感度も上昇させられるだろう。

win-winだ。


店を出ようとしたら、女性店主が追いかけてきて「そういえば沢山購入してくれたし、これも良かったら使って!今は季節じゃないんだけど、よく似合うと思うからもらってちょうだい」とくすんだ薄紫色のマフラーをくれた。


ルルフェルはそのままアイテムボックスに仕舞おうとしたが、隣の紺くんをちらっと見た際、子供は腹を冷やしやすいと聞いたことがあることを思い出し、紺のお腹のまわりに巻いてあげることにした。

今は春先でまだ少し冷える日もある。浮くことはないだろう。


それに確かに今紺くんが着ている服とよく合う色だし、なんならワンポイントみたいでうまくまとまっている。

またひらりと紺くんの後ろに尻尾のように伸びたマフラーは、人混みの中で掴んではぐれないようにするのに良さそうだ。

2人は「ありがとうございました!」と女性店主に見送られながら笑顔で退店した。


最初は遠慮していた紺くんは、なんだかんだ言いつつも、新しい服が気に入ったようで、頬を染めながら自分自身の格好を見下ろしている。

そんなに満足してくれたのなら、こっちも選んだ甲斐があるというものだ、とルルフェルは目を細めた。


そんな紺くんを見ていたら、ふと昨日用意したお小遣いの存在を思い出す。


「そうだ紺くん、これあげる。手出して」

「ッ!!!?!?!?」


じゃらりと音のする袋を、差し出された紺くんの両手のひらの上に置くと、紺くんはビクリと一度大きく身体を揺らし、固まってしまった。


「もちろん見返りはいらないけど、このお金は必要な物だけに、大切に使ってね」

ルルフェルが伝えると、紺くんは目に見えぬほどの高速で首を縦に振る。


「うんうん、いい子いい子」

ルルフェルは正月、孫にお年玉をあげる老人はこのような気持ちなのだろうかとしみじみしながら紺くんの頭に手を置いた。

まだ高速頷き中だったので、紺くんの頭頂部が摩擦で縮れあがってしまったが、本人は気づいて無さそうだったので、内心冷や汗をかきつつ手を離す。


「俺はこの後調味料とか、その他色々必要な物を買いに行こうと思うんだけど、紺くんはどうする?一緒にうろうろする?それとも自由行動がいい?」

ルルフェルが問うと、紺くんは数秒の逡巡ののち、個別に行動する方を選んだ。


10歳ではあるが、そう思えないほどしっかりしているし、他にも1人で歩いている少年少女をちらほら見かけるので、離れても大丈夫だろう。

今日は買い物以外予定は無いし、2人で一緒に選ばなければいけない物も特にない。その為、夕方ごろまでにホテルの部屋に帰っていて欲しいとだけ約束して別れた。


渡したお金が入ったカバンを大事そうに、両腕で抱きしめるように抱え、頬を僅かに紅潮させながら軽やかな足取りで離れていく紺くんをしばらくの間見守る。

一体どのような店に行くんだろうか?


(って詮索しすぎるのは嫌われるんだっけか)

ルルフェルはふと以前適当につけていたテレビでやっていた毒親特集を思い出した。

確か、子供はしっかり見ていてあげないとダメだが、あれこれ構いすぎるのも、支配だか束縛だかになってしまって、子供をダメにするらしい。


(子育てって大変……俺がやってまともな子に育てられるかな〜)


ぽりぽりと頭を掻きながら、白目を剥きたい気持ちを抑える。と、通りに突っ立ってるのを不審に思われたのか、周りからの視線が集まっているのを感じ、そそくさと次の店へ向かう。


最後にもう一度だけ紺くんの方を振り返ったが、その姿は既に人混みに紛れて消えていた。

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