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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第2章 城壁都市ココラス

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24. ヴァンドラ 5

「で、ルルフェルはなんで魔の森から出てきたの?それとも人間が気づいてなかっただけで結構外出してたりするの?」

ま、そりゃ気になるよな、とルルフェルは眉をハの字にしながら素直に答える。

「いや、今まではずっと森にいた。街にくるのはこれで初めてだ。なんでかっていうと……」


(前世を思い出して、行動しなきゃ俺も世界も終わることが分かったから、それを防ぐために森から出てきました!なんて荒唐無稽な事実言えないしな……)


「単純に気まぐれだ」

洞窟に数百年いるのも自由だけど暇なもんだぞ、と言うと、ヴァンドラはひとまずは納得してくれたようだった。

「なるほど。一応確認させてもらいたいんだけど、人に危害を加えるなどの理由ではないんだね?」

「こちらが被害を被らない限り、こちらから手を出すつもりはない。それは約束しよう」

ルルフェルが明言すると、ヴァンドラは少しホッとしたようだった。


「じゃ気まぐれなら、少しいたら森へ戻る?」

「いや、他の神獣たちがどうしてるかも気になるし、とりあえずいそうなところを尋ねてまわってみようかと思っている」

“他の神獣たち”でぴくりとヴァンドラの眉の端が、ごく僅かに反応した。


「何か知ってるのか?」

訝しんだルルフェルが首を傾げると、ヴァンドラは「いや……」と少し考え込んだ。

そして言葉を選ぶように慎重に話し始める。


「実際に会う、見たことがある神獣は君が初めてだよ。でも、港町パディスにいる神獣の噂ならよく聞くんだ」

「おお、メレディスのいるところか!」

ルルフェルは、ここの海の魚は美味いという理由だけで住む場所を決めていた魚類の神獣を思い出す。


その神獣はウツボの姿をしている、ニョロニョロニュルニュルした男だ。

確か神獣の中だと、1番仲が良かったはずである。

「まずはそいつを訪ねようと思ってたんだ。元気にしているのか?」

ルルフェルの何気ない問いに、ヴァンドラが数秒固まった。


「元気ではあるんじゃないかな」

「なんだ、含みのある言い方だな」

ルルフェルが口をとんがらせると、ヴァンドラはフードの上からポリポリと頭を掻いた。


「うーん、人伝に聞いた話だからね、元気かどうかわからないんだ。」

ルルフェルは小説でメレディスがテイムされていた時の内容を思い返してみる。

確か小説の内容はこうだ。


港町パディスでは、神獣メレディスは数年前に、町民を苦しませた大海賊団を一晩で壊滅させた伝説の存在として畏怖されていた。

海の守り神として崇められてはいたが、メレディスの食料である魚を獲る漁師たちにとって、いつ何がメレディスの逆鱗に触れるかわからない。

その為、次第に海賊の次は自分たちなのではないかという根拠のない、だが否定もできないじんわりとした恐怖が街全体に広がっていく。


そのようなどんよりとした雰囲気の中、主人公の紺くんが颯爽とやってきて、フェンリルを使いメレディスを呼び出すと、不意打ちで雷撃を喰らわせてあっさりテイムしてしまう。

そしてメレディスに街を襲うつもりはないと宣言させ、街に安心と安堵をもたらした……。


今思えば、パディスの人目線だと、紺くんは街の安全を約束してくれた英雄だ。

しかし神獣メレディスの目線で見れば、友達が訪ねてきたと思ったらその友達は操り人形となっており、急に電撃を撃たれ、テイムされるという踏んだり蹴ったりな内容である。

ルルフェルは少し渋い顔をしたが、すぐに気を取りなおす。


「メレディスのどんな話を聞いたんだ?」

(小説の内容から踏まえると、大海賊を討った話だろうか?)


「……あくまで噂だから、怒らないでね」

ヴァンドラは前置きをすると口を開いた。


「僕が聞いたのは、神獣メレディスは大海賊団の使い魔となり、他の船を襲ってるっていう話だ。」


「なんだって!?」

ルルフェルは飛び上がって驚いた。

海賊を倒しこそすれ、手下になっているだって!?


「ありえない!」

ムッとして眉間に皺を寄せる。

「だから言ったでしょ、噂でしかないって」

落ち着いて、とヴァンドラがルルフェルを宥めた。


「もし行くつもりなら、噂の真偽を確かめてほしい」

ヴァンドラはニコリと笑みを浮かべた。

「ギルドから依頼としてお願いするよ、報酬もちゃんと出す」

「依頼してもらわなくても、確かめるつもりだ」

ルルフェルが口をへの字に曲げると、「報告が欲しいんだよ」とヴァンドラが肩をすくめた。


「俺もルルフェルと今日こんな話をするなんて思わなかったし、そんなに詳しくは聞いてないんだ。詳細はまた後日でもいいかな?」

もう夜だし、と外を指す。

窓の外はいつの間にかもうすっかり暗くなっており、外の景色よりも、反射して映る3人の顔の方がよく見えた。


「分かった。あ、今日泊まる場所まだ決めてないんだよな……」

ルルフェルが頭を掻くと、ヴァンドラが歯を見せて笑った。


「それはギルドにお任せあれ!」

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