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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第2章 城壁都市ココラス

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20. ヴァンドラ 1

「ギルド長!」

ブッチャートが驚嘆の声をあげた。

(あの人がギルド長?)

ルルフェルはドア付近に立つ、声の発生源をまじまじと見つめてしまう。


ギルド長という役職の人間は、なんとなく筋骨隆々でそれなりに経験豊富な男をイメージしていたが、ここのギルド長は身長170後半くらいの、フードを被ったスラリとした男だった。


フードの中は艶やかな長い黒髪に、細い目。うち片方を黒い眼帯で隠している。

服装はなんだか昔のパイロットのような、飛行服というのだろうか?を思わせる出立ちだ。

年齢は……30代半ばくらいだろうか?

若く見えるが、醸し出している雰囲気が若人のそれではない。


笑みを浮かべてはいるが、隙がないのだ。

また眼帯からはみ出ているやけどの跡の凄みが、彼に更に貫禄を与えていた。


(この人、強いな)

そうルルフェルが肌で感じ、瞬きした瞬間。

ふわっと、ギルド長の雰囲気が和らいだ。


「よ、来ちゃった」

ギルド長は一度ブッチャートにニカッと笑うと、ルルフェル達の方へ向き直り、説明を始めた。


「プラチナになったら、確かに一度王城へ行く必要がある。だが唯一のプラチナランクのやつが、うっかり王城に住み着いちゃったから、そんなデタラメな噂が流れたんだ」

ギルド長は、やれやれだよね、とわざとらしいため息をついた。

「全く、1人しかいないのにね、プラチナって。君もプラチナになったら尻叩いたげてよ」


そしてそのままルルフェルの前まで足を進めると、手を差し出す。


「僕はギルド長、ヴァンドラゴだ。ヴァンドラって呼んでくれ。よろしく」

「ああ、ルルフェルと申します。よろしくお願いします」

握手しようとルルフェルも手を出すと、そのままグッと掴まれて引っ張られた。


「おわっ」

バランスを崩し、ヴァンドラの前によろめく。

スローモーションのように、ヴァンドラの目が、彼の揺れ動く前髪に隠される一瞬前に、三日月の形に歪んだのをルルフェルの目が捉える。

そしてヴァンドラの顔の横にルルフェルの顔が近づいたとき、本当に小さな、しかしはっきり聞き取れる声で耳元に言われた。


「やっぱキミ人間じゃないな」


「!!!」

バッと体勢を持ち直し、素早くヴァンドラから離れる。

ルルフェルは紺くんの近くまで下がると、ピリリと威嚇のオーラを僅かに出した。

喉奥から低い唸り声が出そうになるのを耐え、相手の出方をじっと観察する。


「ルルフェルさま大丈夫ですか?」

ヴァンドラの囁きが聞こえていなかった紺くんは「?」マークを飛ばしながら心配そうにこちらを見上げている。

ルルフェルは焦っていた。

(クソッどうしてバレた!?やっぱってなんだ!?)


ルルフェルはじとりとヴァンドラを見つめた。

どうするべきだ!?とルルフェルが頭を回転させようとしたら、「あっは!」とヴァンドラが耐えきれないように吹き出した。

そのまま「っくくく……」と口元を押さえて笑うと、手をパタパタと前に数度振った。


「すまない、驚かせるつもりはなかったんだ。ただ、ええと、ルルフェルの出方を伺いたくてね」

ヴァンドラは笑い終わると、真面目な表情に戻り、ピシリと頭を下げた。

「無礼な態度、申し訳なかった。許していただきたい」

そして頭をあげると、今度は両手を胸まで上げ降参のポーズと取る。

「害意はない」


ルルフェルは眉根を寄せ、軽くフンと一回鼻息を吐いて、不服を示したが、すぐに身体の力を抜いた。

なんとなく紺くんを自分の後ろに隠す。

すると、ルルフェルの後ろを覗き込むようにヴァンドラは身体を横に曲げ、紺くんを見ようとした。

「その子が、待たせてるって言ってた人かい?」


「は?……あ」

途端、ルルフェルの脳裏に、昨日この街に送り届けた男の顔がよぎった。

確か別れ際に、自分は人を待たせているからと言わなかったか。

そしてついでに自分の服が、その男からの物だということも思い出す。


「俺はバカか……」

はあ〜とため息をついてルルフェルは頭を抱えた。

(考え無しで行動しすぎた)


昨日会った男がギルドに寄り、フェンリルとあったあれこれを報告したのだろう。

そしてその話の中には、今ルルフェルが着ている服や、フェンリルが人間になれることに関しての情報もあったはずだ。

要は、この服を着て歩いてることは、知ってる人が見たら、自分はフェンリルですよ〜!ということを示しているようなものだったのである。


「ん?んん?ギルド長の知り合いなのか?」

状況がうまく掴めなかったブッチャートは、ヴァンドラとルルフェルを交互に見比べた。

「いや、僕が一方的に知ってた感じかな。少し話したいことがあってね。申し訳ないけど、このお二人さんを借りてっても良いかい?」

「もちろんでさぁ!」


ヴァンドラはルルフェルたちの方を向くと、スッと手をドアの方へ伸ばし、歩き始める。

「じゃお2人さん。ちょっとお話……というか是非お礼させて頂きたいので、ギルド長室までご一緒頂けるかな?」


「お礼?」

紺くんは、ブッチャートと同じく、よく状況が掴めずとも、なんとなく初手でヴァンドラがルルフェルからの好感度を下げたことは理解しているらしい。


「行きますか?ルルフェルさま」

と眉間に皺を寄せながら、ルルフェルの顔色を伺った。

「ん、行こう」

ルルフェルがぺこりとブッチャートにお辞儀してヴァンドラのあとを追うと、紺くんもぺこりと90度のお辞儀をブッチャートにし、ついてくる。


「またな、多分すごい額になるから楽しみにしててくれよな!」

ブッチャートが言うと、「あ」とドアを開けていたヴァンドラが振り返った。


「ブッチャート、換金率は5割り増しで計算しといて」

「5割り増しですか!?」

ブッチャートが驚いた表情でヴァドラを見る。

この魔物の量である、とんでもない金額になることは明白だ。

ルルフェルと紺くんも、一体何事かと驚きの目でヴァンドラの方を見た。

「ん?ん〜、ま、お礼の一部ってことさ。責任は僕が取るから。とりあえずよろしく」

なんてことないさ、とヴァンドラは肩をすくめると、ルルフェル達と部屋をあとにした。


ルルフェルの脳内に、(お前もしかして良いやつか!?)という垂れ幕の前に、良い奴と書かれたタスキをしてピースするヴァンドラと、その背後からチャリチャリチャリィン!と大量のコインが落ちてくるイメージが流れ始めたが、慌てて首を振り、かき消した。

(いかんいかん……)


ルルフェルは意外と物に釣られやすいタイプである。



どなたか分かりませんが、評価ありがとうございます!

とても嬉しかったです。

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