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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第2章 城壁都市ココラス

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17.ギルド 1

ギルドの建物は大通り沿いに建っていた。

非常に大きく立派な建物で、悠然と立ち並ぶパルテノン神殿と似たドーリア式の柱の間を潜ると、分厚い金属でできたこれまた大きな扉が、来訪者を迎え入れるために開け放たれている。


勝手にこぢんまりとした、木造の酒場と併設されているような建物を想像していたフェンリルは、目を丸くして建物を仰ぎ見た。


(すげー。海外の銀行みたいだ、お金持ってんなあ)

隣の紺くんは、自分が場違いな所にいるように感じているのか、目を白黒させながら滝のように汗を流している。


「よし、行こう!」

フェンリルは紺くんと自分自身を奮い立たせるために、あえて口に出して玄関の扉をくぐった。


ギルドの内部は白い大理石の床に、広々とした吹き抜け構造になっており、高級感が漂っていた。

だがよく見ると、明らかに狩りや冒険の帰りに寄りました、というような汚れてぼろぼろになった服を身にまとっている人がちらほら見受けられる。

紺くんもそれを発見し、少し平静を取り戻したようだった。


フェンリルは『換金所』と書かれた看板を見つけ、向かう。

幸い、換金所には自分たち以外の客はおらず、受付に座るお姉さんとすぐにカウンター越しに対面できた。


受付にいたのは、20代後半くらいだと思われる、長髪の女性だった。

ほわりとした茶色い髪が全て左肩に乗るようにしてまとめられており、垂れた目尻とぽってりした唇、その下のほくろが特徴的だ。


「すみません」

「うっわ」

つまらなそうに横を向いていた受付嬢が、フェンリルを視界に入れると、ポカンと顎を落とし、思わずといった感じで呟く。


「え」

フェンリルがびくりとしている間に、お姉さんは背筋をスッと伸ばし、にこりと微笑んだ。

先程までの気だるげな雰囲気は、一切なくなっている。


「大変失礼いたしました。ご用件を承ります」

「んんっ、ええと……換金を、お願いしたいんですが」

受付嬢の反応が僅かに引っかかりながらも、フェンリルは猫を数匹被ってぎこちなく笑った。


受付嬢……胸元に名札があった。タニアというらしい……がテキパキといくつか書類を出す。


「換金ですね!ギルドの会員証はお持ちでしょうか?」

「いえ、初めてです」

「かしこまりました。お作りしますか?」

「お願いします」


タニアが出した書類の中から1枚引き出す。


「ご自身で記入されますか?」

「ん……いえ」

少し逡巡したが、フェンリルは書いてもらうことにした。

文字は奇跡的に数百年前から殆ど変わってないようで、問題なくスラスラ読める。

だが、書けるかどうかは自信がなかった。


「では幾つかご質問させていただきますね」

「はい」

「まずお名前をお願いいたします」

ちら、とタニアの大きなタレ目がフェンリルを射抜く。


「お……名前……は……」

フェンリルは焦った。まだ最初の質問だというのに。


(俺はバカか!!?ここ来る前に偽名の1個や2個くらい考えておくべきだった!)


フェンリルはフェンリル以外の名前を使ったことがない。

フェンリルという種はこの世に1匹しか存在しないし、女神と共に行動していたときは、偽名を使う必要がなかったからだ。

だが今は違う。

ここでフェンリルを名乗れば嫌でも注目を浴びてしまい、ギルドはもちろん、街や国からも目をつけられる可能性が高い。


あちこちに泳ぐフェンリルの目が、隣に立っている少年を捉えた。

紺くんも、フェンリルの焦りに気づいたのか、せっかく良くなった顔色が先程よりも悪くなっている。


「フ……ル……ルフ……あ〜」

フェンリルは一生懸命それっぽい名前を出そうと小声でボソボソ呟いたが、フェンリルにネーミングセンスなんてものは無い。


「え?もう一度……」

タニアが耳を傾けたその時。


「ル……ルフェルさまです!」

紺くんが大きな声で主張した。


あまりの大きさに、関係のない人たちまで口を閉ざし、一瞬辺りにシンとした静寂が落ちる。

だがすぐにそれぞれの会話に戻り、先程のザワザワとした空間がかえってきた。

だが当事者であるフェンリルとタニアは紺くんの方を向いてまだ固まったままだ。


「……え?ルルフェル?」

先に我を取り戻したのはタニアの方だった。

合ってますか?とフェンリルの方を向く。


「……ッ、そうです、そうです。ルルフェル、ルルフェル」

こくこくとフェンリルが頷くと、「かしこまりました」とタニアがサラサラと書類に記入していく。


フェンリルがちらりと紺くんの方を見ると、恐らく自分でも何故あのような大声を出してしまったかわからないのだろう。

紺くんは真っ赤にした顔を両手で押さえながら、?マークを沢山自身の周りに飛ばしている。


(ネーミングセンスはともかく、助かったよ)という念を込めて、フェンリルは彼の頭をわしゃりと撫でた。


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