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神獣フェンリルはテイムされたくありませんっ!〜けど俺をテイムするはずの主人公に義務教育が足りてなさすぎるのでまずは教育しようと思います〜  作者: 咲田陽
第2章 城壁都市ココラス

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15.ココラス

その後、村から出発し、フェンリルが紺くんを乗せて森の外に到着したのは、まだ日の高い日中だった。


しかし、狼の姿のまま近づいて、面倒くさいことに巻き込まれるのは嫌だったフェンリルが、森の外からは徒歩で行きたいと主張。

その為、森から最寄りの街の近くまで到着するのに大分時間がかかってしまい、そのあとも街の中に入るのに行列に並ばなければいけなかったこともあり、フェンリル達が街の中に足を踏み入れることができたのは、夕方だった。


「うーん、ごめん、到着まで結構時間かかっちゃったね」

フェンリルが言うと、紺くんはほわほわした雰囲気で、ゆるく首をふった。

「いいえ、村からだと思うと、とても早いですよ!フェンリル様が森の中を乗せて下さったおかげです。前、僕の村から街まで行くのに1週間かかるってトトルが言ってました」


「え……」

それを聞き、フェンリルが顔を顰める。

村から森の端まで、徒歩だと丸2日もあれば辿り着く距離だ。

どう考えても、トトルの言ってることは嘘だった。


「チッあんにゃろ……騙しやがって」

紺くんに聞こえないようにぼそっと低い声でつぶやく。

大方、紺くんに恩をきせたり、村から出ていく気力を削ぐために言ったのだろう。

フェンリルは、再びトトルに会うことがあれば、トトルも村長と同じ目に合わせようと決意した。


(だが、合点がいったぜ)

あんなに酷い目に遭わされておきながら紺くんが村に居続けたのは、きっと自分の力では森を抜けることすらできないと思い込んでいたからなのだろう。


フェンリルは自分たちの後ろに聳え立つ外壁を仰ぎ見た。

「まあ何にせよ、無事に街に到着できて良かったね」

「はい!」

紺くんは全く隠そうともせずに、ワクワクと好奇心の赴くまま、辺りをキョロキョロ見渡している。

お上りさん丸出しだ。


こういうとき、素直に行動できる子供って羨ましいなあとフェンリルは思う。

フェンリルだって、辺りを思い切り見てまわりたいのを、プルプル震えながら耐えている。

なんせ、前世の自分からしたら初めての異世界の街。

またこの世界で永く生きているフェンリルにとっても、数百年ぶりの人間の街なのだ。

もの珍しくない訳がない。


フェンリルが耳を澄ませ、街に入るまでの間に手に入れた情報によれば、ここは城壁都市ココラスという街だ。


名前の通り、街の周りをぐるりと高い城壁が囲んでおり、街並みの西洋風な建築物も相まって、雰囲気は前世でいう、カルカッソンヌを彷彿とさせた。

ただし城壁は1重で、更に分厚く数倍高い。

きっとこの世界に魔物が存在していることが、前世の城壁との差をうんでいるのだろう。


街の中は、きちんと整備された大通りが一本、真っ直ぐ街の中心まで伸びており、数多くの店や、フランスのマルシェにありそうな出店で賑わっていた。

夕方だからだろうか、店のものを売り切ってしまいたい出店の店員たちが、大きな声で「今なら安いよ!」「あと少しで完売だよ〜!」などと主張している。


他の街を知らないので、他所とは比べられないが、フェンリルは結構賑わっている印象を受けた。

人々の服装や持ち物を見るに、治安も、とりあえず出入り口付近は良さそうである。

少なくとも、2人が先程出てきた村より断然こちらの方が良いだろう。

改めてこの街に入れたことにホッとする。


街の中には、少し身体検査をされただけで、通行料をきちんと支払えば、名前すら聞かれずに入れてもらえた。

少し身構えていたフェンリルにとっては、ちょっと拍子抜けである。


ちなみに通行料は銅貨3枚分。

15歳以下は1枚で、計4枚。

これが高いのか安いのか、フェンリルには分からない。

だが見ていた限り、こっそり文句を言う人もおらず、全員大人しく支払って通っていたので、妥当な値段設定なのだろう。


フェンリルたちの通行料は、フェンリルが近くに転がっていたトトルと村長の懐からちょろまかした財布の中から支払われた。

本当は取っちゃいたかったが、前世の自分が「それはただの火事場泥棒なのでは?」とか言い出したので、ちゃんと物々交換になるように2人の側に魔獣の死骸を何体か置いてきた。とってもえらい。


それでもこのことは紺くんには言っていないので、支払う際に「フェンリル様、お金をお持ちだったんですね!ありがとうございます!」と頭を下げられてしまい、ちょっとドキドキしたのは秘密である。


フェンリルは「よし」と気持ちを切り替えると、紺くんの方を向いた。

「まず今日中にしなきゃいけないことは……魔獣の換金、それと宿の確保かな」

フェンリルが指を2本立てた。

「分かりました」

フェンリルの言葉に紺くんがこくりと頷く。


「あとは君の服ね」

フェンリルが3本目の指を立てた。

「うっ……あ、ありがとうございます」

「いーえ」


口元に笑みを浮かべ、嫁を見る姑のような目線で、じとりとフェンリルが睨め付けると、紺くんは恥ずかしそうに頬を染めながら、目線を下に向け、ほんの僅かに唇をとんがらせた。


街の人たちが、物珍しげにぼろぼろの紺くんの服装をチラチラと盗み見ていることに気がついていたみたいだ。

意地悪な表情をやわらげたフェンリルは、わしゃりと彼の頭を撫でて歩き出した。

「早くやること終わらせちゃおう」

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