19話 共犯者Aと、共犯者Bと。
その夜、2人は小屋の床に寝転がった。
眠れなかった。
警察や教師に追われることよりも、“この時間が終わってしまう”ことの方が怖かった。
「白川くん、私ね……一度だけ、盗みをやめようと思ったことがあった」
「……いつ?」
「中学2年のとき。万引きで捕まりかけたの。
でも、親はね、“そんな子じゃない”って信じきってた。警察も学校も、全部うやむやになって、私は守られた」
「よかったじゃないか」
「違うよ。——私は、“ちゃんと罰されなかった”せいで、やめられなくなったの」
その声には、かすかな震えがあった。
「“またバレても許される”って、どこかで思ってた。でも今は違う。
白川くんと逃げるなら、ほんとに全部失うんだって、ちゃんとわかってる」
直人は、小さく言った。
「だったら、俺たち……きっと今、初めて“正しく罰を受けてる”のかもな」
それはどこか、救いのような言葉だった。
真栗が、顔を横に向ける。
「——ねえ、名前、変えようか。偽名じゃなくて、2人だけの名前」
「……どんなの?」
「“共犯者A”と、“共犯者B”」
「ふざけてんのか」
「ふざけてないよ。
この夜を越えたら、私たちにはもう、“どこにも名前がない”んだよ。
だったらせめて、罪で繋がった“名前のない私たち”を……自分たちで決めたいじゃん」
その提案が、泣けるほど愛おしかった。




