18話 ふたり
暗闇を裂くように、2人は街を走った。
真栗が先を行き、直人がそれを追う。
慣れた足取りだった。
真栗は、これが“初めての逃走”ではないかのように迷いがなかった。
「ここ、入るよ!」
工事中の橋の下。
立ち入り禁止のフェンスを越えた先には、古びた小屋があった。
中に入ると、薄暗い蛍光灯の下、真栗が息を整えながら言った。
「ここ、一年前にも一度使ったことある」
「……逃げたことがあるのか?」
「うん。……正確には、“家出”ってやつだけどね」
直人は黙っていた。
しばらくの沈黙のあと、真栗がぽつりと言った。
「密告者。……たぶん、佐倉凛花だと思う」
直人の顔が凍る。
「佐倉……って、あの……?」
「同じ生徒会書記。私のこと、一番近くで見てた子。
まっすぐで、正義感が強くて……だから、最初は心の支えだった。でも——私が盗み始めた時も、黙ってた」
「じゃあ、なんで今?」
「……私と君が“共犯”になったからじゃない?」
静寂が落ちた。
「彼女ね、昔、君のこと好きだったんだよ。きっと今でも」
直人は何も言わなかった。
でも、脳裏に佐倉の視線が焼きつく。
優しかった。
距離を取ってきたのも、礼儀だと思っていた。
けどあの優しさは——もしかしてずっと、“見守る”という名の監視だったのかもしれない。




