15話 好きなところ
火曜日、深夜。
人気のない川沿いの道。風が冷たく、夏の終わりを告げるようだった。
真栗は、駅のベンチに座っていた。
その隣に、制服のままの直人が立っている。
「……明日、盗みをやめるなら、今夜がリミット」
真栗は空を見上げながら言った。
「金曜の総会で会計室が空になる。でも、それを待てば待つほど、“誰か”に捕まる可能性が高くなる」
「……あの密告文。今思えば、完全に俺とお前のことを見てた内容だった」
「うん。たぶん、かなり近くにいる。“友達”のふりして、ずっとこっちを見てた誰か」
風が吹く。
真栗の髪が揺れ、月光がその頬に影を落とす。
「でもさ、白川くん」
真栗は、急に笑った。
いつもの、柔らかくて綺麗な笑顔。
「裏切られてもいいから、逃げたいって思う夜が、私にもあるんだよ」
「……どういう意味だ?」
「私が裏切ってたらどうする? 密告者が私だったら。
警察に全部流して、今この瞬間、制服警官が角から出てきたら……それでも私と逃げる?」
直人は、答えられなかった。
いや、答えたくなかった。
(信じたい。でも、確証なんてない。けど……)
「……逃げよう。お前が密告者じゃないことを、俺が証明する」
その言葉に、真栗の表情が一瞬止まった。
「バカだね。
でも……そういうとこが、私、最初から好きだった」




