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14話 疑念2
その日の放課後。
真栗に報告すると、彼女は静かに目を伏せた。
「……やっぱり誰か、密告したんだ」
「心当たりあるのか?」
「……いない。そう思ってた。でも、たぶん……ずっと見てた誰かがいる。
私たちが気づかないところで、何かを知ってる“誰か”が」
「その“誰か”は、俺たちの名前をまだ出してない。だけど、時間の問題かもしれない」
真栗は拳を握り、歯を食いしばった。
「白川くん……もう、逃げた方がいいかもしれない」
「……盗む前に?」
「うん。予算資料なんて、今となってはリスクが大きすぎる。
でも……逃げるって決めたら、たぶんそれが、私たちの“最後の夜”になる」
直人は目を伏せる。
その選択肢は、常に心の奥にあった。
でも今、それが現実として迫ってくる。
(逃げるか、奪うか。——そして、終わらせるか)
そして、何より気になったのは。
「ねえ、白川くん」
真栗がぽつりと呟いた。
「……あなた、疑ってない? 密告したのが、私かもしれないって」
直人の心臓が、ひとつ強く脈打った。
(——まさか。けど……考えた。少しでも。俺は)
「……してない」
即答できなかった。
その“間”が、彼女の笑みをほんの少しだけ陰らせた。




