13話 密告
週が明けた月曜の朝。
いつもよりざわついた空気の中、直人は生徒指導室に呼び出された。
「……白川、ちょっと話がある」
生活指導の佐和田先生。
柔らかい口調の裏に、どこか底の見えない笑みを貼りつけた中年教師。
「最近、盗難が続いてるだろう。お前、真面目だし、風紀の連中とも繋がりがある。
だから聞いておきたくてな。——なにか、気づいたことはあるか?」
その言い方はまるで、
「お前が犯人だと知ってるが、口を割らせたいだけだ」
というふうに、直人には聞こえた。
「……いえ、特には……」
「そうか。いや、まあな。……ただちょっとだけ妙なことがあってな」
佐和田が机の引き出しから、白い封筒を取り出す。
中には、印刷されたA4の用紙。
“盗難に関する内部告発”と題された無記名の文章。
──〈犯人は、生徒会に関係している人物〉
──〈盗難は偶発ではなく、事前に計画されている〉
──〈男子生徒と女子生徒の“共犯”の可能性〉
「これ、君の名前は明示されてない。でもね、何人かに心当たりがあって。
これは警察にはまだ出してない。だが——出す準備はできてる」
(誰だ。誰が……)
顔には出さなかったが、内心で冷や汗が止まらなかった。
「……信じたいんだよ、白川。
君がもし巻き込まれてるなら、今ここで話してくれれば、処分は最小限で済む。
ただの共犯未遂って形で、何とでもできる」
“今ならまだ戻れる”と、優しい声で囁くような言い方。
でも、それはまるで“共犯者”に選ばれたときと同じだった。
真栗も、こうして手を伸ばしてきた。
違うのは、その手が柔らかさの仮面をつけた処刑台に続いているということだ。
「……何も知りません」
直人は立ち上がった。
「それが本当だといいな」
背中越しに佐和田がそう言ったとき、まるで首筋をナイフでなぞられたような感覚に襲われた。




