11話 露見
放課後、直人は自分から真栗に連絡を入れた。
「会いたい。……今すぐ」
場所は、体育館裏の木陰。
二人きりになった瞬間、直人は吐き出すように言った。
「風紀の江口が、あんたを疑ってる。盗難現場の出入りを洗ってるらしい。
しかも……俺もマークされてるかもしれない」
真栗の表情が、一瞬だけ凍った。
「……それ、いつから?」
「今朝からっぽい。俺に『協力してくれ』って言ってきた」
しばらく沈黙。
やがて真栗は、小さく息を吐いて笑った。
「そっか……いよいよ面倒になってきたね」
「……逃げる?」
「逃げても追ってくる。だったら先に、片をつけよう。——予定通り、来週金曜に盗る。
でもその前に、あいつらの視線を逸らさなきゃ」
「逸らすって……どうやって?」
真栗の瞳が、夜のように黒く深く光る。
「盗みに入った痕跡を、あえて別の生徒に残させるの。ターゲットは……体育会系。
日誌や予定を見て、犯行時間と重ねる。で、手口だけ私たちの模倣」
「……他人に罪をかぶせるのか」
「違うよ、疑いだけ。私たちが生き延びるための、煙幕。
それとも……もう逃げる? 白川くん、今ならまだ——」
「……やる。やるよ、もうここまで来た」
それが自分の口から出たことに、直人自身が一番驚いた。
罪に対する怖さよりも、真栗の視線から目を逸らすことの方が怖かった。
彼女は一歩近づき、囁く。
「君の正義が死んでいく音、ちゃんと聞こえてるよ」
「でもね、私は——それが一番美しいと思う」
月明かりの下で、彼女はまるで女神のように微笑んだ。
その微笑みが、恐ろしいほど美しかった。
金曜、放課後。
直人と真栗は、廊下の一番奥にある視聴覚準備室の前にいた。
ここは次のダミー盗みの予定地。
2人は江口たち風紀委員の目を逸らすため、「別の誰かが犯人らしく見える現場」を演出しようとしていた。
「あとは鍵だけ開ければ、中にある機材を少し動かして、足跡を残す。
で、何も盗まずに立ち去る。——完璧だね」
真栗が小さく笑い、ポケットから合鍵を取り出す。
チャリ。
カチャ——。
「……あれ?」
鍵が回らない。
「どうした?」
「回らない……この鍵、変えられてる」
直人の背筋が凍る。
「それって……」
「間違いない。“誰か”が、この鍵が使われてることに気づいて、正規の鍵と入れ替えたの。
つまり——私たちの犯行がバレ始めてる」




