7 脳裏に浮かぶもの
ドッグフードを買いたいというヤジュー、その要望に対しいくらにするかを考えていた俺だがひとつ気になる事があった。
「なあ、あんた達は狩人だろ?それなら肉は手に入るんじゃないか?鳥でも獣でも…。それこそ魔物とかでも…」
「ああ、その事か…」
ヤジューが俺の問いに応じる。
「いっつも上手くいきゃあ良いんだが…。狩りってなァ、ハズレの方が多いんだ。そもそも獣と出会さないって事もあるし、取り逃す事もある。だから安定しねえし、長雨とか冬には獣もどっかに引きこもっちまうし…。だからこういう干し肉はあったら確保しときたいんだ」
「なるほどなあ」
「それにここじゃあ山ン中にダンジョンもあるんだ。元は鉱石を掘る為の坑道だったんだけどな、そこに住み着いた獣やらモンスターを狩るのがむしろ主な狩りなんだ。ここらは銀も出るからな、採掘に支障をきたす訳にはいかねえ」
「そうなると毛皮や肉をとるより優先しなきゃいけなくなる時もあるって事?」
「分かってるじゃねえか。まっ、そんなワケで食いモンを売ってくれるってンなら大歓迎って事さ。普段は他所から来る商人から買ったりもするが…。いずれにせよ高くなけりゃさらに嬉しいがな」
ヤジューが里の食料事情を語っている。なるほどなあ、どうやらこの里は慢性的な食料不足のようだ。さらに話を聞いていくと街中で買うより割高であった。
商人はわざわざこの山道を登ってきての売買だから割高になるのは分かる。…が、それでもかなり割高だ。その商人が持ってきた食料や雑貨を里の人々は手に入れた魔石や精錬した銀などと交換しているようだ。魔石は魔導具などの燃料になるし、銀はそれこそ銀貨の材料にもなる高価な金属。そんな物々交換をしているようだがあまりに商人側に有利な交換レートだった。
「ふむう…」
俺は腕組みして考える、ドッグフードの大袋ひとつの重さは8キログラム。それが棚には5袋あるから全部で40キロ分だ。一応、この場では干し肉と言っておくが在庫はこれだけだ。
「うーん、いくらにするが…」
確かこれは仕入れ値はひとつあたり3200円ほど…、それを店では3980円で売ってたな…。一方、ヤジューから聞いた感じだと商人が持ってくる干し肉は1キロあたり安くても1万円を超えている。もっとも俺のドッグフードは仕入れ値はいらなかったが残り5個しかない。頭の中で計算していると急にゲーム画面のようなテキストが現れた、背景を半透明にしたアイコンのようなものが突如視界に浮かんでくる。
【この商品は定番商品であり、再発注が可能です。発注しますか(Y/N)?】
な、なんだこりゃ?




