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1 転生令息、婚約破棄を受ける


「ナーセル子爵家の御令息ドゥサード様、わたくしは貴方あなたとの婚約を破棄させていただきますわ!!」


「え?」


 甲高い女の声に我に返ってみればあたりの景色は一変していた。レンガで組まれた手入れの行き届いている花壇に遠くにはまさに『ザ・ゴシック様式!』といった感じの建物が見える。


「あれ…、ここは…?」


 思わず間抜けな声を洩らしていた、なぜなら俺は今の今まで眠気や疲労と戦いながら正社員として勤務するドラッグストアの店内で午後10時の閉店から三時間以上も過ぎたのにいまだ締め作業をしていた。ただでさえ人が少ないのにパートさんやアルバイトさんが辞めても本社からはなかなか人員の補充はしてもらえず、かつ運悪く同僚も体調不良でダウンしてしまった。


 そんなこんなでワンオペの極みともいうべき状況で朝早くから日付が変わった今も仕事が終わらずにいる。作業を手伝ってもらうべくバイトさんたちに残業してもらいたいところだが人件費をケチりたい会社の方針により定時で退社してもらった。代わりに薄っぺらい手当を付けて働かせ放題の俺のような社員に負担がくる。


「たしか明日の特売の紙オムツとトイレットペーパーを並べ終わって…、あとはパソコンの電源落として帰るだけで…あっ!」


 そうだ…!俺…、急にこめかみのあたり刺すような痛みが来て…。それから体に力が入らなくなって…、そのまま床に崩れるように…。間違いない、倒れ込んだ時の冷たい床の感触…、この右頬に残っている…。


「ちょっと!聞いていますのッ!?ドゥサード様!」


「おっと!」


 記憶を掘り起こしている俺の耳に女の金切り声が響く。見れば典型的なタカビーお嬢様といった感じの金髪縦巻きロールの持ち主がムキになって叫んでいる、そしてその隣りにはニヤニヤとしたいやらしい笑みを浮かべた細身の男がいる。ドゥサード…、どうやら俺の事らしい…。おかしいな、俺の名前は曲直瀬まなせ道参みちまさ…じゃないのか?


「まったく!返事もせずに何をボーッと突っ立ってるんですの!?このマエラール辺境伯家、ラフレシアの言葉が聞こえてないとでもおっしゃるの!?」


「ははは!ラフレシア殿、兄は薬しか見えていない朴念仁ぼくねんじん。貴女のようなレディを前に気の利いた言葉のひとつも言えません。ああ…、僕なら口を開けば貴女を讃える言葉が次から次へと溢れ出てきてしまいそうなのに…」


 キザったらしいセリフを臆面もなく言ってのける優男やさおとこ…。思い出した、コイツは俺の弟であるヤブイシーだ。当然ながらヤブイシーもまた子爵家の令息である、もっとも母は違う。亡くなった母の後妻に入ったニナパープ継母上ははうえと父の間に生まれた子…、つまりは半弟である。母が違う俺とヤブイシーの違いはその髪に一番よく現れている。コイツの髪色は金色、ちなみに俺は黒髪である。


「ああ〜ん、素敵ぃ〜ん!ヤブイシー様ぁ〜ん…」


 そんなヤブイシーにウットリした顔ですり寄るラフレシア令嬢。その姿は学園内だが派手なドレスを着ているというのはまだ良いとして問題なのはその振る舞いだ。貴族令嬢たる者、慎みと思慮の深さを持つべきだと思うがラフレシア嬢はまるで発情期の動物のように尻を振りながらヤブイシーにすがりついている。勝ち誇ったようにいやらしくニヤついたヤブイシーとそれにすがりつく酒場にいる酌婦しゃくふのようなラフレシア令嬢、そしてその横にいるのは俺の腹違いの弟ヤブイシー…。


「こりゃもしかすると異世界小説の人気ジャンル、婚約破棄追放令嬢モノならぬ令息モノか?」


 そんな事を呟きながら今いる場所をよくよく思い出してみるとここは王都にある貴族の子弟が通う学園である。将来に備えある者は学問を修め文治の道に進もうと、またある者は武勇を磨き武官の道を志し日々を過ごしている。それと同時に自分が成人した時に、あるいは家を継いだ際に他の貴族家の当主となるであろう人士と顔見知りになっておく。そんな訳で各地の大小様々な貴族の子弟たちが通っているのだ。ちなみに俺もまたここの卒業生である。学院では薬学を学び卒業と同時に王城へと出仕し実家の子爵位とは別に新たに騎士爵を得た。そして新米の薬師として経験と実績を重ねていこうというところである。


 そんな中、久しぶりに婚約者であるラフレシア・マエラール辺境伯家令嬢を迎えに来てみればいきなり婚約破棄が告げられたのであった。






 いかがでしたでしょうか?


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 次回投稿済み…


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