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13 (閑話)ラフレシアが臭くなかったのはドゥサードのおかげ


 話はドゥサードが王都を飛び出した直後に遡る…。


 ビッグリバーという川がある。王都のすぐ西を南北に流れる川だ。その川は王都の西を守る天然の堀であり、王都に住む者達には飲み水を供している。また、様々な物品を王都にもたらあるいは他の地域へと運ぶ水運にもなる。南に行けば海へと達し、北に向かえば水源となる山々へと達する。


 薬師の職を辞した俺は王都を出ると西に少し向かいすぐに辿り着いた川っぺりの集落を尋ねた。そこは漁民や船乗り達が住む所で小さい船を持っている。目的はその船に乗る為だ、ビッグリバーを使い漁をしたり荷を運ぶ人々が住んでいる。その荷運びをする船に交渉をする、ついでに乗せてくれと…。この荷物を運んで収入を得る彼らについでに乗せてもらう事で俺は北に着く事が、彼らはついでに手間賃を得る事が出来る。そんな訳で俺は荷物を運ぶ船に乗せてもらい北に向かった、幸いにも天気は良く風が荒れる気配もない。


 俺がこの船に乗った理由は考え事をする為だ。ある意味、勢いで王都を飛び出してしまった俺だが転生した事に気付いたばかりの異世界初心者だ。現代日本に暮らしていた俺が電気もガスも水道もない世界でどうやって暮らすか…、歩きながら考える事も出来るのだがじっくり腰を据えて考えたかった。流れる景色を見ながらボンヤリと考える。


「ドゥサードって奴はメモ魔だったんだな…」


 俺は持ち出した荷物を探りながらひとり呟いた。出てきた帳面を開けば細かく色々と書き込みがある、辞書のように小さな文字で様々な事が書いてある。従来の調合法にひと手間加えたり、基本となる処方箋レシピに書かれた調合材料にさらに色々と加える事で効能を高めたり副作用を抑えようとしていたようである。その他にも前世の…、俺がドラッグストアに勤めていた時代に得た商品知識などを断片的に思い出しては薬品作りに活かしていたらしい。


 いや、それだけじゃない。薬品以外にも色々と活かしていたようだ。なんてったってドラッグストアは薬以外にも生活用品や食料品なんかも取り扱っている。その幅広い取り扱いがドゥサードの調合に活かされていたようだ。様々な品にその工夫が活かされている。


「例えば石鹸…いや、ボディソープと言うべきなのかな。硬い土レンガみたいな石鹸になる前のトロッとした液体、これに焼き塩とか根に強い香りがある雑草の絞り汁を入れる…。それと木炭を細かく砕いた物を少々…。すると日本で売っていた加齢臭対策効果があれみたいなボディソープになる…か」


 ドラッグストアでこの加齢臭対策効果のあるボディソープは一般的な物より倍以上の価格だっだが結構売れていた。なんせ匂いに敏感と言われる日本人だ。それは当然体臭にも敏感な訳で中高年の男性だけでなく意外や意外、十代の学生ならそれだけで学校内外でおかしなアダ名がつけられそうだし、からかいやいじめの端緒になる可能性がある。大人の…いわゆる社会人でも対策しなければスメハラ(スメルハラスメント)とか言われかねない。だから売れていたのだろう。


「まあ、その成分とか原理を応用して作ったボディソープでなら皮脂を毛穴の奥までしっかりと皮脂とかの汚れを落とせる。ラフレシア嬢は元々そういう体質だった、だから嫌なニオイを放ってしまいやすい。だけど、ニオイの原因となる皮脂を根こそぎ取り除いてしまえば体質がどうあれニオイは出ない。今みたいにラフレシア嬢が人前に出られるのはドゥサードのおかげだっていうのに…」


 はぁ…、ひとつため息をついた。そしてそのドゥサード特製のボディソープもそろそろ無くなる頃だ、次のを渡そうかという時に今回の婚約破棄騒動が起きた。もう俺は王都に戻るつもりはない、だからそう簡単に体臭対策が出来る石鹸なりボディソープは手に入らないだろう。


「まあ、もう俺とは関わりない人だからな。どうなろうと知った事じゃないね。それよりこれからどうするか…、ドゥサードは薬師だった訳だけど俺はその薬の知識とか調合とかを実際に学んだ訳じゃない。当然だが薬を作れないしなあ…」


 勢いで飛び出してきたが今後どうするか明確なプランもない、まずはそれを早急に考えなきゃな…流れていく景色を見ながら俺はまたひとつため息をついた。



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