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朱月のアリス  作者: 白塚
第2章 悪魔と堕天使編
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【第2章】8話「七つの大罪」



 大刀洗によって切断されたシャルルの首がごろりと転がる。勝負あった、椿がそう思った時。


「おのれぇ…よくも…」

「く、首だけで喋ってる…」


 首だけとなっても尚怒りの形相で恨み言を呟くシャルルに若干引く形で椿は呟く。首の前に大刀洗が近づく。


「何だ、首だけとなっても死なんのか。…ならば、切り刻めばさすがに死ぬかな?」


 大刀洗の不穏な言動にシャルルの顔が強張る。しかし、大刀洗は何かを感じ取ったのか首から即座に距離を置く。横たわるシャルルの体の横に炎が巻き上がった。そして、その炎の中から1人の長い髪を結わえた男が現れる。憲兵らが一段と警戒を引き上げる。男が口を開く。


「シャルル。こっぴどくやられてしまったようだな」

「う、申し訳ない…」

「今お前にここで死んでもらっては困る。帰るぞ」


 途端に男ごとシャルルの首と体が炎に包まれる。


「逃がすかあ!」


 大刀洗が自らの太刀を2人に向かって放り投げる。しかし刀は獲物を捉えることはできず、地面に突き刺さる形となり砕け散った。2人を包みこんだ炎は消えてしまった。


「がーー!くっそ!逃げられたぁ!」


 大刀洗が悔しそうに地団駄を踏んでいる。その時。


「たっ、た大刀洗少尉殿っ…!」


 名を呼ばれ大刀洗が振り返る。そこにいたのは見た目は少し頼りなさげなごくごく普通の憲兵。階級は軍曹。


「か、勝手に飛び出していくのはやめてくださいよお…!命令になかったじゃありませんか!」

「アー?何言ってんだよ、女の子ひとりで戦わせるのが今の軍隊のあり方ですってかあ?」

「そ、そ、そういうことでは…その…」

「大刀洗さん。その人は?」


 椿が尋ねると2人がこちらに向き直る。


「紹介しよう。彼は俺の新しいバディ、小郡 俊(おごおり しゅん)だ。白ウサギ事件以降俺のバディがいなかったんだが、ようやく決まったんだよ。いい奴だぜ、少々怖がりだが」

「小郡です。よろしくお願いします…」


 ぺこりと頭を下げる小郡。その時、警戒態勢を解き結界を崩した憲兵達の中からこちらに近づいてくる人物が。


「大刀洗少尉。実にいい動きぶりだった」

「は!ありがとうございます!」


 直立不動の体勢となり小郡とともに敬礼する大刀洗。椿らがぽかんとしていると、その人物は笑いながら自己紹介をする。


「学生さんたち。はじめまして。私はこいつの所属する憲兵隊の隊長、宮下だ。白ウサギの件は大刀洗が世話になったと聞く。私の口からもお礼を言っておきたい。ありがとう」

「み、宮下さん、そんな、アタシらはほとんど何もしてないっすよ。色々助けてくれたのはししょ…菊池さん達です」


 うんうんと頷きながら椿達を見やる宮下。


「そうは言っても世話にはなっている。ウチの隊でよければ、いつでも助力になろう」

「宮下中佐殿の通りだ。いつでも駆けつけるぜ」

「大刀洗少尉はもう少し突っ走る前に報連相を徹底してほしいのだがな」

「は!申し訳ありません!」


 小郡がほら言わんこっちゃない、といった表情をしている。


「それでは学生諸君はもう戻りなさい。あとは憲兵に任せなさい」

「「「はい、お世話になりました!」」」


 2人と1羽はこうして久々の寮へと帰路につくのだった。



 *



「はあ〜!やっと人間の体に戻れたあ!」


 カラスの体から無事魂を移し終え、自らの体を抱きしめるようにして白川が叫ぶ。


「白川、今回なかなかいい動きしてくれたじゃねえか。次も頼むわ」

「ヤダッヤダヤダヤダーっ!」

「あはは、白川、ちい●わみたい〜!」


 場所は以前集まったところと同じく、交番の仮眠室。学生3人と富田、そして菊池と内海もいる。


「さて、堕天使の話ですが…その髪を結んでいる男、とやらが首魁と見て間違いなさそうですね」

「そいつは何が目的なんだろうな?近頃悪魔どもの勢力が増してるのもそいつのせいか?」

「可能性は十分にあります」


 菊池の言う通り、実際現れる怪異たちが悪魔である割合が以前と比べぐんと上がっているのである。雑魚ばっかりが群れているときもあれば、強い悪魔が突然現れることもある。


「まあ、あのシャルルとかいう奴が漏らした『ベルフェゴール様』という単語…彼らの目的は大悪魔の顕現と見て間違いはなさそうだな。受肉用の人間を集めていたからな」


 ベルフェゴール。七つの大罪の一つである怠惰を司る大悪魔。魔王、と呼ばれることもある。


「こんの街中に魔王なんか顕現させられたらたまったもんじゃないぜ。何としてでも阻止しねえとな」


 富田の言葉に頷く一行。そこにふと思いついたというように美幸が問う。


「あの…私たちが潜入してた高校は…」

「ン?ああ、もう任務は終わったからな。潜入捜査は終わりだ」

「「えーっ!」」

「仕方ないだろ、お前らは呪い師育成の為の陸軍(学校)に籍置いてんだからな」

「女子校…楽しかったのに…」

「まあまあ、放課後に遊びに行ったりするのはOKですよ。連絡先も交換しているでしょうし」


 まあ仕方がないかと納得する2人。


「ま、とにかく。これから悪魔と堕天使の動きは注視していくとしよう。ベルフェゴールを顕現させないためにもな。以上解散!」




 *



「はー疲れた。堕天使って初めて戦ったけど、やっぱ強いなあー」


 大きく伸びをしながら廊下を進む椿は呟く。対シャルル戦では、それなりに動けはしたものの最後の方はほとんど大刀洗に任せきりになってしまっていた。


(もっと…自分でも動けるようにならないと…!)


 そしてお目当ての部屋にやってきた。ドアをノックする。どうぞ、という内海の声を聞き扉を開ける。良かった、在室のようだ。


「おや、椿。どうしたのですか?」

「ん。ちょっとね…」


 ……


「七つの大罪が分からない?」

「う、うん…まったくわかんないってわけじゃないよ!?でも、ちゃんとは知らないなぁ、って…」

「なるほど。あの場でピンと来てなさげな顔をしてたのは椿だけでしたからね」

「うっ!恥ずかし!」

「まあでも聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥とも言います。聞けて偉いですよ。では、ざっくり話していきましょうかね」



 *



 さて。まずは…じゃあ、先ほど出てきた『ベルフェゴール』の話をしましょうか。ベルフェゴールは“怠惰”を司る悪魔です。女性の心に悪い心を芽生えさせちゃうとかで。まあ彼自身女性不信ですがね…


 続いては『リヴァイアサン』。こちらは“嫉妬”を司る悪魔ですね。海の悪魔なんて言われたり。…まあ、特筆事項はない、ですかね…多分…


 お次は『ベルゼブブ』。“暴食”を司ります。蠅の王、なんて呼ばれたりもしてますね。私もハエは嫌いです。


 次、『アスモデウス』は“色欲”の悪魔です。彼女も中々厄介な力を持っていますね。生死を自由自在に操れるとか。まあ縛りはありますがね。天使だった頃はなかなか偉い天使だったようですよ。


 はい次は、『マモン』。“強欲”の悪魔です。ヤツも富田と同じくカラスを操るのですが、一度日本にお忍びでやってきたとき、富田と鉢合わせしてしまったせいでカラスの大喧嘩が起こりましたね。あれは色々と大変でした…


 ええと、次は『サタン』。“憤怒”を司ります。基本的には彼が地獄を治めています。彼は神に対して反旗を翻してこっぴどく負けて堕天使、ひいては悪魔になりました。彼はまあまあ強いですね。


 ラスト。『ルシファー』。“傲慢”の悪魔であり始まりの悪魔です。ルシファーは元々天使長で且つ美青年。品行方正、眉目秀麗。とっても優秀で強くて美しい天使でしたが、こちらも神に背いて反乱起こしたら天から投げ落とされましたとさ。



 *



「…という具合ですね。どうです、ある程度分かりましたかね」

「予想以上のざっくり度だったけど…バッチリ。忙しいのにありがとう!」

「いえいえ。私とあなたとの間柄でしょう。困った時はいつでも頼りなさいな」


 そう言って内海は椿を抱きしめる。


「じゃあ、寮に戻るね。おやすみ」

「気をつけて。おやすみなさい」




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