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朱月のアリス  作者: 白塚
第2章 悪魔と堕天使編
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【第2章】4話「潜入捜査」



 翌日。椿、美幸、白川の3人は駄弁りながらいつも通りの教室へと向かう。そして、教室の扉を開けると、そこには予想外の人物が居座っていた。


「よお、クソガキども」

「ふふ、私もいるよ」


 そこにいたのは富田と内海。富田は教卓に寄りかかるようにして立ち、内海は机の上に足を組んで座っている。


「富田…さん、に内海さん…どうしてここに?」


 白川が問いかける。富田はニッと笑う。


「お前らによ、頼みてえ仕事があんだわ。お前らにしかできない、仕事がな」

「アタシ達にしか…できない…?」

「そうだ。単刀直入に言おう。…お前らに潜入任務を与えたい。学校にな」


 富田はぽかんとする学生ズを見据えながらスーツの襟を正した。


「最近な、妙な動きをする連中がいてね。教団じゃないぜ、今あそこは全く動きがないからな…まあその連中もかなり厄介そうな奴らでね…堕天使、って分かるか」


 堕天使。神に背き、天界から地獄に堕とされてしまった元天使。そのまま悪魔化することもあり、出現すると数多の呪い師が集められ討伐作戦が練られるほど恐ろしい存在である。富田は続ける。


「最近悪魔たちの動きが怪しくてな。どうも堕天使どもを統率し始めた奴がいるみたいでな。そのリーダーも恐らく堕天使だが…一筋縄ではいかないレベルの奴だとこちらは踏んでいる」

「堕天使の件は分かりました。でも、何で学校潜入…?」


 椿が不思議そうに問う。富田は頷き話を続ける。


「その堕天使チームの一員がどうやら人間の高校生に化けているという情報が入ってね。俺たちが行くと向こうに勘付かれて逃げられたり、子供に危害を加えられると困る。そこでお前らだ」


 なるほど、といった様子で3人は頷く。美幸が口を開く。


「潜入捜査…!何だかワクワクしちゃう!」

「美幸…」


 呆れる白川に富田が突然指を指す。


「お前。白川っつったな。お前は潜入ナシだ」

「え…」


 実は美幸と同じく潜入捜査に興味を持っていた白川は富田の言葉に呆然となる。内海が笑いながら言う。


「今回の潜入先は女子校なんです。なので、白川くんが女の子にならない限り潜入は無理ですね。あっ、もしどうしてもと言うなら私が術で…」

「ああいや!大丈夫です!自分が勘違いしてました!」


 内海の言葉を遮るように叫ぶ白川。そんな様子を見て笑う女子陣。するとガラガラと扉を開ける音。菊池だ。


「あれ、皆さんお揃いで」

「よう菊池。しばらくこの3人借りっから」

「突然だな…まあ富田にならいいけど」


「…あれ?俺は潜入しないんじゃ…」

「お前にはやってほしいことがある。人手はあったほうがいいからな」


 富田は立つと3人の顔を見渡す。


「んじゃあ、昼飯食ったら交番に集合だ。この営舎からそう遠くないから分かるとは思うが…東交番な。んじゃ、座学頑張れよ」

「私もここで。頑張ってくださいね♪」


 教室から出ていく2人を見送る4人。


「…でも、何で交番なんだ?他にも待ち合わせ場所ありそうなのに…」

「ああ、富田。アイツ警察官だよ」


 椿の問いに答える菊池。警察官。全然ぽくねぇなあ…と椿が内心思っていると、菊池が見透かすようにさらに続ける。


「ちなみに、あいつマル暴ね。元だけど」

「「「あ〜…」」」


 どおりで、と思う3人。…営舎から内海と出た富田はくしゃみを1つした。


「おや、風邪ですか?」

「まさか」

「フフフ…まあ、彼女らを頼みますね」

「分かってるよ、ちゃあんと守り抜くさ。…お前にシバかれるのだけは御免だからな」


 そんな掛け合いをしながら2人は歩いてゆく。



 *


 

「おし、全員時間通りやって来たな」


 富田は自らの腕時計を見て頷く。交番内には富田と学生一行、そして制服を着た警察官。富田は3人を交番内の仮眠室の方へ案内する。


「さて、お二人さんの潜入の為の制服だ。制服って高えンだからな、大事に着ろよ」

「はーい」

「ブレザーだ…!可愛い!」


 はしゃぐ2人を横目に白川は富田を見つめる。


「あの、俺は…」


 言いかけたとき、どこからともなく1羽のカラスが現れ、富田の肩にとまる。


「お前はこれからこのカラスになってもらう」

「はっ…!?」


 白川が事態を飲み込む間もなく、富田は白川の頭をむんずと掴む。その手は人の手ではなく、黒い、鳥のような()……富田はもう片方の手で肩のカラスの頭を手で包み込む。白川がその場に崩れ落ちた。その代わりに、肩のカラスが騒がしくなる。


「んお…!?何だ!うわあ!俺カラスになってるう!?」

「うるせーな、耳元で騒ぐな」

「すごい…入れ替わっちゃった…」


 白川の本体である体は目を閉じすやすやと寝息をついている。この体の中には恐らくあのカラスがいるのだろう。未だにじたばたしている白川を富田が肩から降ろす。


「お前はその姿で外側から怪しいやつを探せ」

「エーッ!お、男である俺に女子校を覗けと…!?」

「そう言ってんだろ。下心は出すなよ。…美幸と椿。潜入は来週の月曜からだ。これから詳しい説明をしていく。ちゃんと聞いとけよ」



 ……ある程度の説明を聞き終えた一行。白川カラスは富田が‘その体の使い方を教える’と言って連れて行ってしまった。


「ねえ椿。」

「なあに」

「心配じゃないの?堕天使って、結構強いって言うじゃん」

「心配じゃないわけじゃないけど…でもハチもいるし、富田さんも私たちの潜入は討伐目的じゃなくて炙り出すのが目的って言っていたから…まあ、あんま気張らずゆる〜いJKライフ楽しもーぜ」

「…だね!あんまり緊張してると敵さんにバレちゃうかもだし!“普通の”JKライフ…たのしみだー!」


 

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