97 実況中継
「じゃあ、一緒に行きましょうね!1人ではジュースこぼしちゃうでしょ」
一応、保護者だし。とりあえず、クレスペッレを受け取った後に、飲み物屋に向かう。
飲み物屋に行き、貰ったチケットを渡す。すると、スペシャルジュースを渡すから、少し時間をもらうと店員に言われて、待つことになった。
「だだだ、だだっ、だだ!(追剥の気配アリ、変なことされそうになったら凍らせる魔法掛けとくから引っかかって。というわけで、誘拐されてくる!)」
「了解~」
路地から少年が走って出てきたと思ったら、私が肩に掛けていた鞄を奪って行く!
「ちょっと!ドロボー‼」
私が慌てているフリをして、少年を追いかける。
『はーい、人身売買組織ぶっ壊しRTAはっじまるよー!えー、今抱えられて馬車の中へゴールイン!揺られておりまーす』
無事に?誘拐されたみたい。さぁて、私も本気を出して少年を追いかけて捕まえる。
『リン、この少年をリンちゃんハウスで保護してくれる?また精神操作系で支配とかされている可能性もあるし』
『鞄のキーホルダーの一番上の飾りを押して。そうすれば転移させられるから』
『了解!』
『はーい、みっなさーん!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!音声付き実況始まるよ~!』
…とりあえず、私は追剥に遭って犯人には逃げられて、子供も誘拐されたという母親役を演じなければ…。
『えー、テステス。マイクテストマイクテスト!お、良い感じ?という訳で、実況は危険度Sランク冒険者こと、S級冒険者のリン(3才)でーっす!』
『「今回は移動屋台ではなくて、馬車なのか?」』
『お、何やら話してるね~。アッテンショーンしちゃいましょう!』
『「今回は特上だな」』
『私はマグロじゃないですよー』
『「母親が冒険者風の恰好だった。早く出国した方が良さそうだ。追剥役も捕縛されたかも知れん。冒険者達のネットワークは侮れない。移動屋台はあと2日間動けないから、今回は馬車で移動だな」』
『ここにはS級冒険者がいるんだけどね(^^)』
『「このまま、出国するぞ。この子は眠らせておこう」』
『え、私?寝ないよ?てか、並みの薬物で眠れると思うのかな~?ざまぁみろ!』
『寝たふりしとけ!』
『もっちのろーん。あ、ちなみにコメント機能あるから、じゃんじゃん質問してね!』
タイパンさんも気になっているようだが、リンはハイテンションだなぁ。
寝たふりをしているリンを自分の子供と偽って、馬車はオーラ国を出国していったようだ。
『はいはーい、行くのは~な、な、なんと!デルフィナス国!母国だね~。ほい、というわけで質問たーいむ!質問大歓迎!』
『デルフィナス国の何処に向かっているのか分かるか?』
『少々お待ちを!…魔の森方面だね!私の故郷!やったね!』
『魔の森はリンのテリトリーだろ。変な拠点とか出来ていたら分かるんじゃないか?』
『魔の森全域がテリトリーな訳ないじゃん!せいぜい4割くらい。だから、残り6割のことについては知らん!』
4割もテリトリーなんだ…。それはそれで、流石というか何というか。
『じゃ、リンのテリトリー以外での悪さだな。クロを捜索隊として出しておくか』
『おぅ。遊んで良いんだよな?シメるか?』
『シメるな…。生かしておいてくれ』
『リンへの土産か?』
『そういう意味ではないが…。まぁ、頼む』
『はーい!質問タイム終了!というわけで、実況再開でーっす』
リンのハイテンションタイムが始まった。
『「何で魔の森で取引なんだろうなぁ。取引場所に行くのも一苦労だ」』
『「まぁな。その為に魔除け道具なんかを大量に渡されているし、人気が無いからバレる確率も減るってことだろ」』
『うちのネームドモンスター舐めないでもらいます~?魔除けなんて効かないよーだ!人気が無い?魔物気はありまくってるよ~?頭平気ですか~?』
リンちゃんハウスにいるネームドモンスターは、ダンジョン主の許可がない限り人間は襲わないことになっているけれど、逆を言えば許可があれば襲うってことだ。
『クロしか今は探索に出ていないんだよ…ね?』
『あ?もう出てるぞ』
『え?クロ?誰が出ているの?』
『ワイバーン』
・・・・は???
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