89 ブラックリストに載ってる…
周囲に認識阻害と防音の結界をリンに張ってもらい、幼児化を解いたリンと打ち合わせだ。
「さぁてと、入国審査だな。基本的には冒険者ギルド証を見せるのと、犯罪履歴の確認で水晶玉に手をかざすだけだったはずだ。一応確認するが、特に問題は無いな?特にリン」
「無い…はず…だと思う…多分」
何で、そんなに自信が無いのかな?
「えーっとね…ちょっと前にやらかして、ブラックリスト登録されてるんだよね~…」
「何をしたんだ?犯罪か?」
「そうじゃなくて…犯罪組織をつぶした後、手柄とられちゃって…それに怒って暴れた…」
S級冒険者の手柄を横取りできる人って、王族とか高位貴族とかかな。
「リン、何処でどの位暴れたの?怒らないからパパとママに正直に言ってみようか」
「防護魔法付与がされてる建物…半壊…」
「それって、研究施設?それとも王宮?」
「キゾクノオヤシキデス」
あぁ…最上位クラスの貴族のお屋敷を壊したと…。でも、犯罪者登録されていないっていう事は、その事件自体がもみ消されたのかな。
「というわけで、幼児化っと」
「ギルド証からバレる危険性はないと思うので、水晶玉に魔力波形が登録されていたりすると厄介かなぁ。ソレノドンさん、どう思います?」
うーん、とソレノドンさんも考え込む。
「だ、だだだー(別に魔力波形って自由に変化できるけど?)」
「普通は出来ないんだが…?」
「だっ、だだっ(魔力の回転数変えれば余裕)」
「じゃあ、リンちゃん。大人しく3歳児らしい、低回転で魔力回してみて」
「だ~だっ!だ~だっ!(1秒に~1回転!)」
「早い‼10秒に1回転でも十分、目を付けられるから。15秒に1回転位で」
「だ~(15秒に1回~)」
「リンちゃん…目が回ってるよ?」
「だだだ~…(遅すぎて…)」
「検問の時は、目を瞑って寝ている振りしてようね…」
目を開けていると不審な子になっちゃうからね。リンちゃんはお眠な子で誤魔化そう。
ついに検問だ。
「すやぴ~」
寝たふりのリンちゃんの手を水晶玉に触れさせたけれども、特に何も起こらずに通り過ぎることができた。
ただ、検問所の熊獣人の人達が何となくソワソワしているし、心なしか臨戦態勢だ。
それとなく、耳を澄ませてみる。
「なぁ、前にいきなり耳とか身体を触ってきた危険度Sランク冒険者の臭いがしないか?」
「俺も感じた!毛が逆立ったんだよ。でも、それらしい奴いないよな?」
「あぁ、だが俺の本能が『ヤバい』って訴えるんだよな」
「それな、俺もだ。警戒しておこう。近くに潜んでいるかもしれない…」
リンちゃん…何をやっているのかな?可愛らしく頭を私のお腹にグリグリと擦り付けて、寝ているふりを頑張っているけれど、誤魔化そうとしているのかな。それにしても、獣人さんたちの嗅覚と本能って、すごい精度だな。
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